岸由二の本

生きのびるための流域思考

生きのびるための流域思考 岸由二

「流域」とは「雨の降る大地における固有の凹凸」である。 雨の水を川に変える「流域」という地形は、水循環の基本単位であり、その空間に展開する生物世界を含めて考えれば流域生態系であり、人の暮らしまで含めて考えれば、流域生活圏でもある」p.21~24 「流域思考とは、流域という地形、生態系、流域地図に基づいて工夫すれば、豪雨に対応する治水がわかりやすくなる。さらには、生物多様性保全(自然保護)の見通し、防災・自然保護を超えた暮らしや産業と自然の調整の見通しも良くなる」p.15 著者は「豪雨の時代への適応を進めていくには暮らしの地図の領域に流域という地形、生態系、を単位する「流域地形」を導入していくのがいい。そんな地図を、大小の規模にかかわらず活用し、防災、環境保全の工夫を進めてゆく、流域思考が、生命研再適応のカギになる」として「流域地図」の必要性を唱えるp.190 何故「流域地図」が必要であるかは次の理由による 現在も自治体による「ハザードマップ」が発行され活用されているが、「ハザードマップ」は行政区分の単位によって分かれている。 「豪雨に対応して発生する氾濫は、行政区で起こるのではなく豪雨を洪水に変換するという流域という大地の構造、生態系が引き起こす現象だからです。行政地図をいくら詳細に見つめても、豪雨氾濫のメカニズムはわかりません。行政地図で区切られたハザードマップを頼りに都市の温暖化豪雨への適応策について、市民がどれだけ意見を交換し、ビジョンや計画を工夫しても、ビジョンや計画をくふうしても、わたしたちの暮らしの場、ひいては生命圏に発生する豪雨、水土砂災害の危機の理解に到達することはできないでしょう」p.200~201 つまり「ハザードマップ」はミクロな視点であり、「流域地図」は俯瞰の視点でとらえるということだ。俯瞰性こそが地図の持つ利点であり、これはweb上の地図に対する紙地図の優位性でもある。最も将来的には地形を立体化した「流域地図」が公開されることもあるだろう。 そして著者が関わる鶴見川の例に「流域地図」がどのような意味を持つか説明する。 「横浜市鶴見区、港北区、川崎市幸区、東京都町田市小山田町という町々はそれらをつなぐ水循環の大地、鶴見川流域の地図がなければ、ほとんど関連のない地域かもしれません。 しかし、鶴見川の水系、流域の配置が暮らしの地図に組み込まれている都市市民が育つなら、そんな市民にとって、東京都町田市小山田町に降った豪雨が鶴見川の大増水を促し、横浜市青葉区、緑区を流下し、港北区綱島、川崎市幸区、鶴見区潮田街で大氾濫するかもしれないという危機は、大地の地図の必然と理解されてゆくことでしょう。」p.201 この具体的な地域名を入れた説明が非常に判りやすい。 地図会社が行政へ売り込むビジネスチャンスだとも思う。