文芸

女王ロアーナ,神秘の炎(下)

女王ロアーナ,神秘の炎(下) ウンベルト・エーコ

主人公ヤンボの記憶を辿りなおす旅は、田舎の家の奥に塗り込められた隠し部屋を見つけたことでさらなる展開を見せる。脅迫的なほどこだわっていた霧の謎、失われた初恋、パルチザンとしての経験。 当時の大衆文化、例えば雑誌や映画、絵本にお菓子のパッケージ、そして子供の心を刺激する薄衣をまとった女たち、そうした記憶を喚起するものたちの図版が、様々なエピソード同様誌面に散りばめられて読解を助けもするし、さらなる謎にも誘い込む。 記憶を取り戻す旅はいつからか記憶を丹念に辿り直す旅に変わっていく。ただ、辿り直すことをどこまで精緻に行っても、それが本当に失われた自分を取り戻してくれるのかは明確でない。 というか、そもそも独白しているのは誰なのか。それ以前に、独白は真実の記憶なのか? 真実ならば誰にとって? 生死すらわからない不分明な独白の中小説は終わる。 比較的明確に謎解きや仕掛けが提示されていたこれまでの小説に比べ、本作は霧の中にいるような曖昧さの中に置かれたままだが、不定形な謎解きの楽しみがあるのかもしれない。

女王ロアーナ,神秘の炎(上)

女王ロアーナ,神秘の炎(上) ウンベルト・エーコ

恐らくはちょっとした脳梗塞で倒れた主人公。目覚めたときにはかつて抜群だった記憶の一部が失われていたが、なくなっていたのは自分が誰なのか、妻は?子供は?という身の回りのそれで、文学や生業としている古書研究の記憶はとりとめもなく浮かび上がってくる。 そんな事態の中からどうやって記憶を取り戻すのか。記憶を取り戻すことはそのまま自らのアイデンティティの復活となるだろう。もはや思い出せない理由から長年疎遠にしていた故郷の村で記憶を一から辿りなおす主人公ヤンボの独白に次ぐ独白。 年齢的にもエピソード的にも著者エーコを思わせる主人公が改めて辿りなおす自分史と、ファシスト政権から戦後へといたるイタリアの文化史。 これ原語でもっと知識のある人が読むと圧倒的なんだろうな。

ウズタマ

ウズタマ 額賀澪

自分の母親を殺した罪で服役している男、微かに残るその男とのあたたかな日々、父親から渡された預金通帳を見て、その男からのものと直感でわかったとして、自分だったら会いたいと思うだろうか。 ウズタマがちょこんと表紙に収まっている。温まる小説。

努力しないで作家になる方法

努力しないで作家になる方法 鯨統一郎

内容は、タイトルとは違って作家デビューまでの苦労を体験させてくれるような作品だった。 読み始めると、主人公の伊留香総一郎に深く感情移入してしまう。 めちゃ良い本だ!

すべての神様の十月

すべての神様の十月 小路幸也

2018/12/14 読了 八百万の神々と人間との関わりを描いた連作短編集。「九十九神」には、ほろっときました。 我々自身、誰かの「福の神」でありたいですね。

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かすてぃら

かすてぃら さだまさし

なんでだれもstandで読んでないの、、、 めちゃめちゃ良かった。 床に伏す父を前に、自省録みたいにして語られる記憶の断片。 長崎での故き懐かしい子供時代から、東京での下宿生活と長崎の実家への思い、コンサートの合間を縫って父を見舞う今までが、ひとつひとつ描き直されていく。 こんなにもたくさんのひとの中で愛し愛されたならどんなに幸せだろうか。

東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて

東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて 成田名璃子

本を読んで、泣くのはあんまりない。 会社のボイラーが故障して、業者さんを待つ間、時間があったから、彼女に借りたこの本を読んでいた。事務所に誰もいなかったから。 しくしく泣いてたら業者さんが来て、汗った 笑 シリーズものだから、次が楽しみ。

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ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 オリヴィエ・ゲーズ

アウシュビッツの医者でガス室送りの選別をし、囚人達を生体実験でいわば拷問して殺したナチスの医者ヨーゼフ・メンゲレ。敗戦と共に親ナチスだったペロンのアルゼンチンに逃亡した彼がブラジルの海岸で心臓発作で亡くなるまで、をあくまで小説として描いた作品。同じ南米に逃げた戦犯でもイスラエルに拉致され処刑されたアイヒマンと違って最後まで逃げおおせた逃亡生活が追う者達の立場も押さえながらリアルに描かれていてさながらノンフィクションのようでもある。道を踏み外した医者の生家が今では消滅してしまったものの世界的な農機具メーカーであり比較的潤沢な資金援助が得られたこと、また追う側の中心であったイスラエルも中東戦争などより優先度が高い事案が生じたことなどもありあと一歩まで迫られながらも逃げおおせた逃亡生活は追手に怯えながらの惨めなものであったと描かれているのだけども果たしてそのようないわば同情的な筆致が必要だったのか、ベートーベンを口ずさみながら人の生き死にを決めていたという純然たる悪に対してはもっと過酷な運命があっても良かったのでは、などなど考えさせられる作品でした。読み物としてはかなり面白かった。

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない こだま

“さんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく否定するな。 人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから” 筆者のように夫婦生活が持てない人、 夫婦生活は送れても妊娠が叶わない人、 思い描く性生活の送れないLGBTの人、 そもそも結婚したり付き合ったりしていない人、 結婚していても子どもを望んでいない人、 結婚も望んでいない人、 病気や障害の人... 世の中には多種多様な人がいて、自分の枠組みで他人を判断することに変わりはないし、簡単には変えられないのだけど、相手に言葉をかけるときには、その枠組みを少し柔らかくして接する必要があるのだと思う。そして、相手の枠組みを理解しようとすることだと思う。

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スペードの3

スペードの3 朝井リョウ

朝井さん、どうしてこんなに女性の心の機微が読み取れるのか... 女の友情の薄っぺらさよ、女の考えることの悪どさよ....かくゆう私も腹黒いのだが

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