9784065168578

真珠湾攻撃、太平洋戦争開戦の2年前の1939年、満州国とソビエト連邦の国境地帯で発生した「ノモンハン事件」。 見渡す限りの草原地帯で、関東軍とソビエト軍が... 続き

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ノモンハン事件については日本史の教科書にちらっと出てくるからなんとなく知っていたけど「ねじまき鳥クロニクル」にも取り上げられたという帯を見てそうだっけ?という興味が出たので手にとってみた。NHKのディレクターが番組の傍らまとめたものらしいけどちゃんとした本であった。地図で改めてみたけれどどう見ても戦略上意味がないモンゴルの平原で日本軍とソ連軍が戦い「事件」というには双方合わせて4万5千人が戦死したという戦い。しかも散々に負けた日本軍(戦死者数はソ連のほうが多いけど)は戦死者も全て回収しきれていないままなのだという。一部のエリート参謀が「国境を侵犯してくるモンゴルの弱い連中を懲らしめる」ために起こした戦闘は相手を見くびり、情報収集を怠り、自己の力を過信し、補給のことを考えず、精神論で戦った結果、日露戦争の結果から日本を警戒していたスターリンにいいようにやられる結果となった。その意味で当時の日本軍は独ソ戦におけるドイツ軍と酷似しているのだけど曲がりなりにもソビエトを植民地化するとともに英国との戦争を有利にする、という目的がドイツにはあったのだがノモンハンの日本軍にはそれもない。驚くべきは現場の指揮官と兵士には自死も含めた過酷な処罰を下しておきながらエリートの地位はすぐに回復させた結果、ガダルカナルを始めとする太平洋戦争においても同じ失敗を繰り返したことでこれが日本軍というか日本人の性質そのものであればとても嫌だな…と思った。この作戦を主導した参謀について「純粋悪」という評価があると遺族が憤っているということも紹介されていたが、個人的にはやはり「純粋悪」だと思う。私利私欲ではなく純粋に国益を追求した結果の悪事という意味で。精神論の恐ろしさもつくづく。作戦の甘いところは精神力でなんとかなるとした結果、敗戦の原因を精神力の無さに求めることになったのでは、と思いました。自国の軍人にこんなに残酷な国家も珍しいのでは、という思いが致します。嫌な話満載だけど一読の価値はありました。

読者

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田中雄一の本