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もちもち

食べ過ぎ、飲み過ぎ、読み過ぎ注意!

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コメントした本

老後の資金がありません

街行く人はみんな平穏な毎日を過ごしているように見えるけど、でも私も含め多かれ少なかれ「お金」に振り回されている。 だから普通の主婦である篤子が、娘の結婚、親の葬儀、介護、リストラ、と次々に現れる人生の「まさか」に貯金を取り崩し、老後の恐怖に震える姿は他人事とは思えない。 外面を繕っていた篤子が、見栄や意地を捨てて本音をさらけ出した時に見えた家族の本音や友人たちの苦労。 そして手に入れたお金に振り回わされるのではなくて、自分でお金との距離やスタンスをコントロールする力。 それは人生の「まさか」に直面した時にうろたえないための極意でもあると思った。

4日前

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北海に消えた少女

ジャーナリストのノラは、取材帰りに古道具屋の店先に陳列されていたスーツケースを購入する。 そこに入っていた30年前デンマークからイギリスに渡る船旅の途中で失踪した少女たちの写真。 迷宮入りとなったこの失踪事件に興味を持ったノラは、これを記事にするためかつて少女に関わった人々を取材するが、そこでこの事件が当時世間を騒がせた連続少女監禁殺人事件と関わっているのではないかと気づく…。 人気の北欧ミステリ。 ところが主人公のノラがさっぱりして楽天的、ブルドーザーみたいに次々にトラブルに突っ込んでいくという北欧のイメージを裏切る力強いキャラクターなので、不気味で残酷な殺人事件や「羊たちの沈黙」のレクター博士を思わせるようなサイコパスと怖い要素満載なのに、読後感は非常に爽快。 幼馴染の男性との恋愛の行方も高校生か!とつっこみたくなるほどじれったく愉しい。 デンマーク人から見るイギリス人を茶化したような目線も面白く、シリーズ次作が楽しみ。

20日前

古書贋作師

ある古書贋作師が無残にも両手首を切断され殺される。 被害者の妹の恋人でやはり贋作師として数年前逮捕された主人公は、今では真っ当に働いているにも関わらず文豪の筆跡で書かれた脅迫状に悩まされ、更にはその事件にも巻き込まれ窮地に陥る…。 物語の始まりからずっと不穏なトーンが続き、真犯人が分かる終盤までなんともモヤモヤした主人公の語りが続く。 主人公自体はとても魅力的で、語り口もユーモア混じりで饒舌。 また彼は贋作というものについて独特の考え方を披露してくれるので、なるほど贋作師は自分の仕事や在り方について、こんなふうに自己肯定感を持つのだと読者まですっかり説得させられそうになる。 しかし贋作師の語りだからいわゆる「騙り」も混じっているのではないかと読者はかなりの緊張を強いられる。 異色のミステリと紹介にある通り、不思議な読後感の残る作品だった。

約1か月前

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逢魔が時に会いましょう

女子大生真矢(まや)と民俗学者の布目准教授、2人の妖怪を巡る珍道中を描いた3つの短編が収められた作品集。 なぜか妖怪を惹きつけてしまう特異体質の真矢と古今東西の妖怪研究に没頭する布目の名コンビが座敷わらし、河童、天狗たちの謎にゆるーく迫る。 同じ作者の「愛しの座敷わらし」以来、座敷わらしファンになってしまった私には、特に本書の「座敷わらしの右手」は久々の再会といった感。 貧しさやひもじさに追い詰められた人間たちの苦しみ、良心の呵責、そしてその捻れから生み出された座敷わらしという妖怪の健気さに胸がしめつけられる。 布目教授の解説を読んでいると、どの妖怪も人の暮らしや人の思いの中から生まれ、育まれた賜物たちという気がする。 つまりは私たち人間の落とし子だと。

約2か月前

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エヴァンズ家の娘

同居中の男性から度を過ぎた束縛を受けるシングルマザーのジャスティーン。 亡き大叔母が自分に遺した古いロッジに二人の娘とともに逃げ込んだ彼女は、その場所でかつて大叔母の幼い妹エミリーが行方不明になったことを知る。 本書は過去パートである姉リリスとエミリーとの日々を描いた大叔母ルーシーの手記と、現在パートであるジャスティーンと娘たちの経済的、精神的苦境やストーカーに怯える日々が交互に描かれる。 ジャスティーンの母モリーも含め、代々のエヴァンズ家の娘たちが底なし沼みたいな男性関係の不幸の中にズブズブとはまり込んで行く恐ろしさ。 彼女たちは、みな互いへの愛ゆえに行動しているのに、いつもすれ違い傷つけあう。 登場人物の一人が『自分がまったくちがう人間だったらよかった。勇気ある人間。もしそうだったらたくさんの人生が今とはちがっていただろう』と過ぎた日を悔いる。 ラストでジャスティーンが見せた勇気を彼女たちが見ていてくれたら、と思う。 MWA賞など各新人賞の候補作になった著者のデビュー作。

2か月前

ささやかで大きな嘘〈下〉

騒々しいママたちのやりとりや我が子優先の自分本位な本音、そしてセレブママと懐が寂しいママとの経済格差や、離婚によって複雑になった家族関係…。 本書に描かれるのは嫌になるほど現代的な親子たち、主に母親である女性たちの姿だ。 著者は軽いコメディタッチでこれらを詰め込み、随所に笑いを交えてすいすい読ませてしまうけど、もちろん本書はミステリであり、殺人事件に至る深刻なトラブルと秘密が幼稚園内に存在していることを丁寧に描いていく。 例えば家族間で起こるひどい暴力や、大人と子どもの両方に起こる残酷ないじめ、モンスターペアレントの横暴や教師たちの疲弊…。 けれどニコール・キッドマンに自ら主演、ドラマ化すると決意させた本書の最大の魅力は、これが女性の友情と自立を描く物語だから、なのだと思う。 齢を重ねて感じる、大人の女性が主体的に生きるということ、そして誰かと繋がりながら生きるということの難しさと大切さ。 最後まで読むとしみじみとそれが分かる。 本当に、読んでよかった。

2か月前

ゆるい生活

ちょうど身体の変化に合わせて暮らし方の見直しを考えていたので、この本に巡り会えて良かった。 数々の体調不良の兆しから漢方医を訪ね、衣食住(特に食)を見直していく著者の生活の記録は5年以上に及び、すぐに飽きがくる私に喝を入れてくれる。 人間の身体と心は日々の積み重ねによって作られるのだ、安易に時を流してはいけない、という当たり前のことを忘れないようにしなければ。

3か月前

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スタートボタンを押してください

ゲームにまつわる12の作品が収められたSF短編集。 ケン・リュウ(「紙の動物園」など)や桜坂洋(「All YouNeed Is Kill」など)、アンディ・ウィアー(「火星の人」など)といった有名どころの作品は当然ながら、本邦ではあまり知られていない作家の作品もどれも個性的で魅力的だ。 これはお得感ある。 私にとってSFはどれも、現実にはあり得ないという前提からか、どこかせつなさを感じる物語で「お気に入り」の物差しもせつなさの質と量が基準になる。 その基準に従って、上記の3人の作品以外でいくつか本書から挙げてみると、 「1アップ」 「猫の王権」 「キャラクター選択」(一時期私もこういうマイルールでゲームをプレイしてました!) 「アンダのゲーム」 かしら。 ゲームにまつわるとは言ってもビデオゲームばかりでなく、どの作品で取り上げられるゲームも千差万別、荒唐無稽な設定で難解なルールもあったり、そのもどかしさがまた面白い。

4か月前

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カラヴァル 深紅色の少女

領主である父親に虐待を受け続けるキャサリンとドナテラの姉妹。 そんな2人に届いた、年に一度、世界のどこかで開催される魔法のゲーム「カラヴァル」への招待状。 数日後に結婚式を控えたキャサリンは躊躇するが、ドナテラを探すため過去には死亡した参加者もいるという「カラヴァル」のゲームに参加することに。 このゲームでは、すべての謎を解き最初にゴールしたものにたった一つ願いを叶えるというのだが…。 謎と魔法、狂気、地下通路の死体、麗しい美青年たちとの恋と裏切り…。 これでもか!というほどトキメキの要素をてんこ盛り、視覚的表現が豊かな文章、to be continuedなラストも含めて、ハリウッド映画を観たような読後感。 2018年本屋大賞、翻訳部門1位作品。

4か月前

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僕が殺した人と僕を殺した人

1984年、台湾。 兄を亡くし両親とも別れて暮らすユン、牛肉麺屋の太っちょのアガンと弟のダーダー、そしてジェイ。 中でも同級生だった13歳のユンとアガン、ジェイは義兄弟の契りを交わし、それぞれの危機や苦境に互いに助け合うことを誓った。 13歳の真剣さで、彼らはともに遊び、踊り、喧嘩し、その同じ真剣さで殺人を計画、そして結果、ある人物が死んだ。 その事件が義兄弟たちをバラバラにし、後にそのうちの1人は連続殺人犯となってしまう…。 友と結んだ誓いがある時は絆になり、ある時は重荷になる。 少年時代が輝いていればいるほど、代償として重荷はひときわ過酷なものとなるのかもしれない。

5か月前

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天龍院亜希子の日記

「天龍院亜希子の日記」だけど、生身の彼女は出てこない。 主人公は天龍院亜希子のもと同級生で、そのインパクトの強い苗字でもって彼女をいじめていた男子の一人。 現在彼はさえないサラリーマンとして些かブラックな人材派遣会社に勤め、偶然彼女のものと思われるブログを発見し、なぜか時々アクセスしてはそこを覗いてしまう…。 もと同級生ふたりが、27歳になり誰かの人生に責任を負ったり、不毛な関係を絶って何かを始めたり、人生の新たな段階に入るその時にたまたまこんな方法でニアミスしてしまうというのも、現代のネット社会のリアルなんだろう。 自分は自分だけで生きているわけではないということ、自律的に生きていると思っているその日々は、実はどこかの誰かの支えで過ごしていたのだと気づくこと。 主人公が無為な時間を過ごしていた日々から、誰かのために頭を下げ、誰かの努力を支える態度へと変わっていくことは、それが必ずしも報われないとしても、人生の違うステージに彼が立ったことを意味しているような気がする。 ブログで断片的にしか知らないもと同級生の幸せを彼女の知らないどこかで祈る。 そうできる彼に変わる、一人の男性の変革の時を私は本書で読んだんだなあと思った。

18日前

ディス・イズ・ザ・デイ

青い空と緑の芝生と大好きなサッカーチームがいれば、人生なんとかなる。 今日もなんとかやり過ごすことができる。 つまりそういうこと。

約1か月前

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偽りの書簡

1952年、フランコ独裁政権時代のバルセロナを舞台にしたミステリ。 主人公は女性記者アナ、そしてその彼女のはとこで文献学者のベアトリズ。 アナは男性記者の急病で社交界で有名な女性の殺人事件の担当に抜擢されるが、いわゆる御用記者であるから当然警察の意向に沿った検閲済の記事しか書けない。 ベアトリズは過去の政治的な言動を問題視され研究者としての道を絶たれ、現在は大切な書物を売って生活費の足しにしている。 男女差別や思想統制で不遇な境遇にある年齢も性格も違う2人の女性が、殺人事件をきっかけに、ともに才能や得意技を活かして闇に葬られようとしていた事件を解決していく。 社交界に詳しく頭の回転の早いアナの活躍はもちろん、ベアトリズが文献研究の知識と経験を活かして手紙の書き手の正体や動機に迫っていく独自のアプローチは、学術的である一方、蘊蓄に史料オタクの喜びが溢れ絶妙に面白い。

約1か月前

わたし、定時で帰ります。

どんなに仕事が山積みでも就業時間内で自分の仕事は計画通りに片付けて定時に帰るということにこだわる結衣。 それは今は上司となった元婚約者の晃太郎、企業戦士だった父に対する意地でもあった。 新しい婚約者との結婚も決まり、順風満帆に思えた彼女に降って湧いた昇格と長時間残業必至な問題案件。 このままではチームが崩壊してしまう!自らも満身創痍で彼女が立てた作戦とは…。 無茶ぶり案件を悪名高きインパール作戦に見立て、どうしたら同僚や後輩を無理させずに働いてもらえるか、と考える結衣。 そして「為せば成る」の精神論で作戦完遂をうたう晃太郎たち企業戦士の面々。 しかし絶対に残業をしないことが前提で仕事を組み立てる結衣も、仕事量に自分を合わせる晃太郎も、どちらも「決めつけ」をすることで却って自分を追い詰めているような気がする。 インパール作戦という人の尊厳を蹂躙するような失敗を二度としない方法は、そのような無謀な作戦を提案、実行させる無能な人物たちを中枢に据える会社や社会の構造を変えることだと思う。 つまりインパール作戦がそもそも選択肢に挙がらない社会を作ること。 もちろんそれが難しいからこそ今もパワハラなどで斃れる人が絶えず、現代のインパール作戦、東京オリンピックを巡るドタバタが続いているのだが。 会社について、社会について考えさせつつ、ほどよく恋愛の要素も取り入れたバランスのよい小説。 一気読みしました。

2か月前

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駒子さんは出世なんてしたくなかった

会社など組織で働いていると、駒子さんに限らず誰でもある時期に来ると「次の段階」に向き合わねばならない時、いわば人生の曲がり角がやってくる。 曲がり角の先には困難や苦労もあるから角を曲がる前は大抵緊張したり尻込みしてしまう。 本書はまさに会社人であり家庭を持つ駒子さんが曲がり角でさまざまな葛藤に直面しながらそれをどう乗り越えていくかという物語。 仕事上の曲がり角と家族の曲がり角が同時期に重なり、その大変さが身につまされる。 けれど駒子さんがそうであるように、危機的状況には結局はそれまでに自分がどう生きてきたか、周囲の人々とどんなふうに信頼関係を築いてきたかということが命綱になる。 自分の味方は、一生懸命に生きてきた過去の自分なのだ。 お仕事小説は数あれど、地味な(失礼)主人公、地味なお仕事にここまでいろいろ感情移入したのは初めて。 地道に真面目に仕事と家庭を大切にしながら働くたくさんの人に読んで欲しいと思う。

2か月前

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弁護士アイゼンベルク

ドイツミステリ。 主人公は刑事弁護士のラヘル・アイゼンベルク。 辣腕で知られる彼女だが、現在弁護士事務所を共同経営する夫が浮気して別居中、思春期の一人娘は学校で問題を抱え、家庭はトラブル続きだ。 そんな中、猟奇的な殺人事件が発生し、その容疑者として浮上したのはもと恋人の物理学者。 そして彼女は彼の無実を信じ、その弁護を務めることになる。 元彼の容疑を晴らすべく奔走する主人公の物語と、隣国から命をかけてドイツに入国しようとする母娘の物語が交互に描かれ、やがて思いがけない形で交差する…。 タフな主人公がブルドーザーのように強気でぐいぐい障害物を破壊しながら真相にたどり着くという流れは、最近内省的な主人公の物語を読むことが多かったのですっきりする。 主人公の嘘も方便、依頼人を無罪にするためには手段を選ばず、というガツガツしたプロとしての姿と、夫の浮気や娘の問題に動揺したまに自信喪失する姿が対称的で憎めないし可愛い。 二転三転する裁判にやきもきし、複雑な事件が解きほぐされる快感を楽しむ。 これぞエンターテイメントという一冊。

3か月前

わたしの忘れ物

大学で半ば無理やりに紹介された大型商業施設の忘れものセンターの期間限定バイト。 渋々働き始めた恵麻は、次々に持ち込まれる不思議な忘れ物と持ち主たちの「モノがたり」に触れ、次第に自分自身の大事な「忘れ物」に気づいていくのだか…。 「死んだ女より 悲しいのは 忘れられた女」 本書を読んで頭に浮かんだのはマリー・ローランサンの言葉だった。 何かを「忘れる」ということは、忘れられたモノにとっては自らの存在の意味を、支えを失ってしまうということなのかも知れない。 そしてそれは、とてもとても残酷なことだと思う。 廃校や廃墟、空き店舗や住民がいなくなった部屋などを見た時に感じる寒々しい気持ち、心細さ。 どのエピソードもドラマチックで意外性があり面白く読めたのだけれど、いかんせん存在感がないと自嘲している主人公にどうしても好感が持てず、残念だった。 設定上、仕方ないとは思いつつ、都合良すぎな周囲の人々にも突っ込みつつ、最後まで読んでしまった。

3か月前

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ヌヌ 完璧なベビーシッター

パリのアパルトマンの一室でベビーシッターが2人の幼児を殺害し自殺を図った。 「完璧なベビーシッター(ヌヌ)」 雇い主からそう呼ばれたルイーズがなぜそのような凶行に及んだのか。 そして物語は陰惨な事件の起こった冒頭から、夫ポールとともに妻ミリアムが弁護士の仕事を再開するためにベビーシッターを面接するシーンへと転じる。 面接のその日から子どもたちに好かれ、シッターばかりではなく、美味しい料理、自宅の整理整頓まで完璧にこなす女性ルイーズ。 子どもたちは彼女を「わたしのヌヌ」と呼び、慕う。 そしてポールとミリアムもやがてルイーズなしには自分たちの生活が成り立たなくなってしまう。 では、ルイーズは?彼女は何を考え、何を悩み、何を望んでいたのか… 悪魔は突然現れるわけではなく、たいていはその人の内面で眠っていて、あたたかい人間関係だけがそれを抑える力になる。 それが得られない境遇にいる、またはそれを断ち切られた時、悪魔はその人の中で育ち外界に牙を剥く。 私たちには「事件」が起こって初めてその残酷さが目に見える。 初めて…本当に?いや、本当は分かっている。 ミリアムも気づいていた。 ルイーズの寂しさ、寄る辺のない心細さに、そしてその不安定さに。 複数の人間の身勝手や自己保身、心の弱さ、様々な要素が重なって、惨劇が起こる。 おそらくは私たちが目にする多くの「事件」もまたそうなのだろうと思う。

4か月前

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いま見てはいけない

表題作の「いま見てはいけない」をはじめ、語りの見事さにひきこまれ一気に読んでしまう。 「あーそっちに行ってはだめ」と主人公に何度も声をかけたくなるが、一方で結末がどうなるのか知りたくて仕方がない。 上手い作家だなぁ。

4か月前

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コールド・コールド・グラウンド

1981年、イギリス連合王国の一部である北アイルランドの首都ベルファスト。 当時の北アイルランド地域は、イギリスとアイルランド、プロテスタントとカソリック、ナショナリストとユニオリストという相反する存在が互いに自分の是を声高に主張し殺しあう場所だった。 そこで起こったのは体内に残された楽譜、別の誰かと交換された被害者の手という猟奇的な連続殺人事件。 事件を担当する巡査部長ダフィは、カソリック教徒で、また大学で心理学を学んだという警察隊の中の異分子で、その宗教的、政治的に微妙な立場は、捜査を困難なものにする。 IRAやUDR、UFFと言った名称が頻出するので巻末を確認しながら読み進めたが、慣れてくると苦にはならない。 それよりも各陣営の主張や立場を理解するに従い、犯人探しだけでなく「こいつが悪い」と名指しできないこの紛争の複雑さと矛盾に満ちた政治や宗教の問題についても考え込んだ。

5か月前