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もちもち

食べ過ぎ、飲み過ぎ、読み過ぎ注意!

食べ過ぎ、飲み過ぎ、読み過ぎ注意!

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コメントした本 ページ 2

わたしを離さないで

運命を受け入れつつ、自らの命の重さになんとか小さな声をあげようとする子どもたち。 幼い頃から教師たちの手によって慎重に染みこませた受容の教育の恐ろしさ。

7か月前

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ブロークバック・マウンテン

誰もいないところなら、人を愛することは単純なことなのに。

7か月前

体の贈り物

主人公は、ボランティア団体からエイズに罹患した人々をサポートするため派遣された女性。 そして本書は、彼女が患者たちの家事、掃除、買い物、調理などを手伝いながら過ごす日々を淡々と描く短編集だ。 相手は精神力、体力の落ちた病人でもあるので、主人公はサポートする人の瞳を見つめ、その声に耳を澄まし、表情を観察し、身体の汗を拭い、手を握り、抱きしめる。 しかし時間の経過とともに病気は進行し、やがて訪れる別れは、主人公の心から希望を削ぎ落としていくことになる…。 このボランティア団体を主催する女性が疲れ果てた主人公に言う。 「もう一度希望を持ってちょうだい」 私たちは、この世で生きているつかの間、他者と視線を交わし、言葉を交わし、触れ合って、そうやって最期まで互いの体を通じて「贈り物」を交換することができるのだ。 たとえ死が間近に迫った人であっても。 多分、そのことに人は「希望」を見出せるのだと思う。

8か月前

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未来の年表 人口減少日本でこれから起きること

本書にあるように将来起こり得ることは、様々な統計などの数値で予測できる、処方箋もある。 なのになぜ、現実にはそれらの対策が採用されないのか? 目先の利益や既得権を守る者や声の大きな批判者たちに振り回される愚かさについて考えさせられる。

8か月前

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浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―

「タガが外れる」という言葉がある。 何かの拍子にリミッターが解除され、欲望や感情が暴走し理性が吹っ飛んでしまうこと。 本書は、この「タガの外れ」具合をある対象につぎ込んだ「お金」の多寡によって計る、というチキンレースに参加する者たちの赤裸々な告白本だ。 「ある対象」は人さまざま。 ある者は声優に、ある者は同人誌に、ある者はアイドルに、ある者はオンラインゲームに、ある者はディズニーに、ある者は韓流スターに。 そして参加者たちは愛する対象に自分のお金をつぎ込むその行為を、浪費ではなく「愛」と呼ぶ。 本書の読者は、ある者は共感し、ある者は「さっぱり分からない」と評するらしい。 だけど、そこには、正しいも間違いもない。 浪費もまた、それぞれの自己表現であり、自己実現行為でもあるのだから。

9か月前

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市立ノアの方舟

どんな仕事にも課題や障害があるけれど、自分では喜怒哀楽を伝えることができない動物を相手に、自問自答しながら仕事に取り組む飼育員の仕事には、答えのない課題を解き続けるようなつらさがある。 予想を裏切るような行動や反応に悩まされ、だけど同時に、動物たちの人間に向ける愛情や信頼に触れ、励まされたり慰められたり。 けれど、動物たちの行動の非合理さは、生きもののたくましさや柔軟性のあらわれでもある。 ここに収められた アフリカゾウのノッコ ホッキョクグマのネーヴェ フラミンゴのロミオとジュリエット ニシローランドゴリラのコータロー の物語は、どの話でも、さまざまな制約の中で環境に適応しながら生きようとする動物たちのたくましさに、逆に人間たちが知恵やエネルギーを与えてもらっている。 生きるものは皆、健気だなあとしみじみ思う。

10か月前

アーサー・ペッパーの八つの不思議をめぐる旅

本書の主人公は、最愛の伴侶ミリアムを亡くし、毎日のルーティンワークに埋没することでなんとか生きている69歳のアーサー・ペッパー。 お向かいさんとは挨拶のみ、お隣さんからは居留守を使って逃げ回り、葬式にも出てこなかった娘、息子とは疎遠になっている。 そんな彼が、一周忌を機に妻の身の回りの品を整理することに。 ところが、遺品の中からゴールドのチェーンに八つのチャームがついたブレスレットを発見したアーサーは、ブレスレットに妻の「秘密」を感じ取りつつ、心に潜んでいた冒険を切望する気持ちにも気づく。 そして、ゾウ、花、本、パレット、トラ、指ぬき、ハート、指輪の八つのチャームの由来を探求する旅に出ることを決心するのだか…。 自宅を出たアーサーは、トラに襲われたり、強盗にあったり、見ず知らずの人の家に泊めてもらったり、孤独な誰かのために手を貸したり、妻以外の女性とデートをしたり。 そして彼は知る。 この世界には自分とミリアムと子どもたち以外の他者が泣き、笑い、必死に自分の人生を生きている! そして彼は以前とは違う気持ちで子どもたちやご近所さんと向き合い、新しい関係を築き始める。 人生に発見を、偶然を、ハプニングを、新しい出会いを! そしてそれらを受け容れ、違う世界に踏み出す勇気ある一歩を。

12か月前

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死してなお踊れ: 一遍上人伝

本書は鎌倉時代中期の僧侶、一遍上人の生涯の伝記であり、著者によるその教えの翻訳である。 翻訳というのは変な言い方だけど、おそらく本書を読んだ多くの人には分かってもらえると思う。 「いいよ、いいよ、すくわれちゃいなよ、いますぐに」 くだけた話しことばで書かれた文章は、一遍上人のラディカルな生き方を語るのにしっくりとくる。 ものすごくパンチのある作品だ。 一遍はただただ迷いの中で生きる大勢の衆生を救おうとした、いや「あなたは既に救われているんだよ」ということを伝えようとした実践の人だった。 その実践が、本書ではまるでRPGのように、展開する。 まずは出家し、旅に出る、修行を積む、旅の道連れができる、人がついて来る、巨大な敵が攻撃を仕掛けてくる、逃げる、暴れる、踊る、踊る、踊る…!! 危機感を煽るニュースが毎日のように流れ、重苦しい不安な空気が広がっている今。 実は私たちの社会は一遍の思想を受け入れる準備が整っているのかも。 あるとき誰かが「人はみな独りで生きていくんだよ、苦しいねえ、寂しいね、けどね、実は私たちはすでに大きな何かに救われているんだよ、さあいろんなものを捨ててみんなで踊ろう!生きながらにして往生しよう!」と言い出し、一斉に人々が踊り出す…そんな未来が来るかも。 そして、私はそのとき、一緒に踊るんだろうか、踊りを眺めているだけなんだろうか。

約1年前

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コードネーム・ヴェリティ

第二次世界大戦の最中、イギリスから一機の飛行機が月明かりの下、フランスに向けて飛び立つ。 乗っているのは飛行機乗りのマディとイギリス軍の特殊任務員であるクイーニー。 それは2人の少女にとって、運命の飛行だった。 本書は三部構成で、第一部はナチスの収容施設に囚われたクイーニーが拷問に屈しイギリスの情報を提供する、その手記という形をとっている。 そして第二部ではマディが、オルメで地下活動をするレジスタンスたちに匿われながらクイーニーを救出しようとする経緯を記録したものという形をとっている。 さてクイーニーは救われるのか…そしてクイーニーの手記はどこまでが真実(ヴェリティ)なのか。 すべては第三部で明らかになる…。 本書ではナチス側にも印象的な登場人物たちがいて、中でもナチスのオルメにおける責任者フォン・リンデン大尉、故国では校長を務めクイーニーと年の近い娘を持つという彼が、なぜ捕虜やレジスタンスたちに非人間的な行為を粛々と遂行していたのか。 これらは彼の「思考停止」、ヒトラーやナチスそして国家への「忖度」だと私は思う。 このように自分の信念や他人の命さえも犠牲してまで有能な官吏であろうとする心根を、ハンナ・アーレントは無思考性、「凡庸な悪」と名付けたのではなかったろうか。 「kiss me, hardy」 クイーニーの手記にたびたび登場するネルソン提督の最期の言葉、実はこの言葉の前に、ネルソンはこうも言っている。 「Thank God,I have done my duty」 「神に感謝します。私は義務を果たしました。」と。 だけど…私は願う。 あたら若い命を国家に捧げることを賞賛しない世界を生きていけることを。

約1年前

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ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~

ビブリア古書堂シリーズ、第7作目はシェイクスピアのファースト・フォリオをめぐる人間模様を描く。 当初は栞子さんの周囲の人々に起こる事件がメインテーマだった本シリーズも、本作ではいよいよ核心である栞子さんの家族の確執に決着がつく。 好きで好きで、周囲の人を不幸にしてでも手に入れたいものがある人の幸、不幸。 自分も周囲の人も不幸にしないために、必死で踏みとどまろうとする栞子さんと、それを支えようとする五浦くんと。 二人は、それが叶わなかった父や母、祖父母たちの無念を昇華させることはできるのか。 本書ではわかりやすい悪役が登場し、おかげで栞子さんのお母さんの暗躍でここ最近もやもやしていたものが晴れるような展開。 シリーズ本編は一旦完結し、今後はスピンオフや前日譚・後日譚が描かれるとのこと。 お気に入りのキャラ志田さんの物語も期待できそうな予感が。 まだまだ楽しみは続く。

約1年前

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教場

警察学校で学ぶ警察官の卵たちに起こるさまざまな事件。 って警察内部で、傷害だの薬物だの脅迫だの殺人未遂だのの事件が次々起こること自体がまず「大丈夫なの?」と心配になる短編集。 警察という一種の「ムラ」の、その時々の訓練内容や独特の風習は興味深く読めたのだけれど、どの陰惨な事件も同期の友と思っていた者同士の間で起こるので、人間不信はより深まる。 狭いところに大人数で押し込められ、思考と行動を規制され、命令され、ふるいにかけられるとこんなことが起こります…そんなことを伝えてくれる作品かも。

7か月前

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カフェでカフィを

誰かとお茶してお喋りして。 人が2人以上集まるとそこにはドラマが生まれる。 16話のショートストーリーは、どれも独特の台詞とアングルと表現(擬音の使い方面白い!)で、新鮮な驚きと発見にあふれてる。

8か月前

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月の満ち欠け

生まれ変わりは誰のためなのか? 遺された人にとってはかえって残酷なものかもしれない。 どんな不幸も引きずることなく一旦断ち切る、死は、あるいは優しいのかもしれない。

8か月前

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孫と私の小さな歴史

毎年の年賀状の撮影にここまでの情熱とモチベーションを保つことができる佐藤愛子さんをただただ尊敬! そしてその情熱に流されないお孫さんの桃子さんのマイペースぶりも本当に…。 80代でここまで頑張る自信は、私にはない。

9か月前

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誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち

本書は、音楽というコンテンツを巡り、堅固に構築された(と思われていた)ビジネスシステムが、ある画期的な技術革新や自己顕示欲に駆られた「音楽泥棒」たちによる海賊版リーク戦争によって、短期間に崩壊していくさまを描いたドキュメンタリーだ。 そしてこのドキュメンタリーは、古いシステムが燃え落ちたあと、灰の中から新しいビジネスモデルが生まれる過程を描くものでもある。 章を分け、4つの観点から本書は描かれる。 1つ目は史上最大のリーク源となった大手レコード会社のCD工場で働く男性の。 2つ目は革新的な音響データ技術開発者たちの。 3つ目はある音楽エグゼクティブの。 最後に音楽泥棒たちを追うFBIなど捜査官たちの。 それぞれまったく接点もなく別々の方向を見ていた彼らの行動が、やがて音楽産業を巡る「今ここ」へと絡み合い、結びつく。 著者が5年に渡る綿密な調査と関係者へのインタビューによって明らかにしたその経過は、そこで生計を立てていた人には申し訳ないけれど、劇的でスリリングで、正直たまらなく面白い。

9か月前

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神は背番号に宿る

数字には魔法があり、それによって喚起されるドラマがある。 本書はさまざまな野球選手の現役時代やその後を、背番号という数字を手がかりに語る、まるで「読むノンフィクション」とでも言いたくなる作品だ。 実はそれも当然で、本書はNHKーBS1の特別番組「背番号クロニクル プロ野球80年秘話」の放送で取り上げきれなかった逸話をとりまとめたもの。 不運とか甘えとか自己責任という言葉でくくると見えてこないドラマが、「神」と「数字」の組み合わせを加味することで生き生きと、そして切なく浮かび上がってくる。 できればハッピーエンドで終わって欲しい、そう願いながらも、なぜか本書の逸話はハッピーエンドよりも報われない結末の方が余計に心に残る。 悲劇のヒーローになんて、誰もなりたくないし、なろうと思ってなれるものじゃない。 ましてや、人から愛され、惜しまれ、記憶に残る悲劇のヒーローになんて。 だけど、不運や不幸に襲われ才能を十分に発揮できなかった野球人生は、その人もまた神の前では私たちと同じ小さな存在なのだと気づかせてくれる。 日の当たる場所に咲く花ばかりではなく日陰にひっそり咲く花を愛するのは、多くの人が報われない努力や虚しい希望を胸に毎日を懸命に生きている証かもしれない。 そして理解する人を得られないまま、どうしようもない寂しさを抱えて、独り生きているからかもしれない、そう思った。

10か月前

四人の交差点

これはフィンランドの小さな村に住む、ある家族の物語。 この家には、伝えなかった言葉があり、使われなかった拳銃があり、燃やされた手紙があり、家族にさえ言えない秘密がある。 互いの胸のうちに秘密を抱えたまま、理解できない家族のふるまいに怒ったり泣いたり傷ついたり…それでも、毎日を生きていく。 そんな家族の100年の物語。 本書はマリア、その娘のラハヤ、ラハヤの息子の嫁カーリナ、そしてラハヤの夫オンニの四人の章に分かれている。 数年おきに起きる小さな事件が、時代を行ったり来たりしながら語られる。 違う章で同じ出来事を違う人物が語ると、出来事はまったく違う様相を見せる。 秘密を明かさない故に、寂しさも愛しさもまっすぐに伝わっていないことが読者だけはわかる。 それが本当に、せつない。 ただよく読むと、実は彼らの秘密はいつの間にか次の世代にひそかに伝えられていることが分かり、それはそれで救われる思いがする。 そして、その秘密の最後の継承者が血の繋がりのない嫁カーリナであることが、またいい。 この家の秘密は、血ではなく、それを引き受けられる強さと感受性を持つ者に継がれていくのだ。

約1年前

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人間の土地

「精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる。」 先日、ふと本書のこのフレーズが浮かんで来た。 最近、粘土のまま精神の風が吹いていない人による無残な事件や無様な活動を見聞きしているからかもしれない。 常に風に吹かれていなければ。 強い風に吹かれていなければ。 自宅には三冊保管し、何度も読み返している。

約1年前

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死にゆく患者と、どう話すか

本書は、日本赤十字看護大学一年生後期の基礎ゼミ「コミュニケーション論」において、進行がんの治療を専門とする國頭英夫医師によって行われた講義の記録である。 「医者には三つの武器がある。第一に言葉、第二に薬草、第三にメスである」 このヒポクラテスの言葉の通り、医療者として臨床現場で死を前にした患者に何をどのように語るのか、そのコミュニケーション・スキルを学ぶことが本書のテーマである。 國頭先生が監修を務めたTVドラマ(「白い巨塔」「コード・ブルー」など)を参考に手探りで講義は進むのだが、よりよいコミュニケーションとは何か、ということを先生と学生たちが答えを探す過程で見えてくるのは、医療者と患者、患者の家族とのコミュニケーションギャップである。 バッドニュースを患者に知らせる時の心構え、見捨てないということを伝えるための言葉、表情、態度、部屋や椅子の位置、タイミング…。 ひとつ間違うと患者を絶望の淵に立たせることになる、医療者が背負うものの重さにきりきりと胃が痛む。 本書は医学系の出版社から発行され、読者も医療に携わる人を対象にしていると思うが、大学生への講義なので難しい医学用語も少ない上、丁寧な解説があるので不自由な思いはしないと思う。 むしろ、我が国における終末医療について、安楽死と法制度について、がん告知について、また自分はどのような死を迎えたいのか、家族の死にどのように対応すべきなのか、真剣に考えるための素晴らしい教材になっている。

約1年前

ねないこはわたし

子どもたちが保育園に通っていた頃、寝る前に絵本を読む約束をしていた。 そしてその中には本書の著者、せなけいこさんの「ねないこ だれだ」や「いやだ いやだ」、「あーんあん」もあった。 本書では、そんな作品を作ったせなさんの子どもの頃の話や、絵本作成の過程などが、その独特の「貼り絵」とともに語られる。 子どもの頃「お嬢様が絶対正しい」と言ってくれるねえやと、彼女がくれた一冊の本が著者の人生を決めたこと。 息子ににんじんを好きになって欲しくて作った手作り絵本が、出版のきっかけになったこと。 落語家の夫との暮らしの中で落語の絵本ができたこと。 母の期待に応えられない苦しさや悲しみ、だからこそこの道を邁進してこれたという複雑な思い。 才能のある女性が家事や子育てに埋もれながら、子どもの泣き顔にも、反抗期にも、にんじんにも、自宅に流れる落語にも、自分の身の内にある「作り手」としての何かが発動する。 そんな姿に、これは立派にキャリアウーマンの話でもあるんだなあと感じた。

約1年前

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