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Shun

普段は帰宅後に、休みの日は散歩しながら、…

普段は帰宅後に、休みの日は散歩しながら、のんびり読んでます。

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コメントした本 ページ 2

文豪妖怪名作選

全部で19篇。冒頭の尾崎紅葉『鬼桃太郎』は、桃太郎に浴びせられた屈辱を晴らそうと桃太郎退治に出かけた鬼の珍道中。挿絵付きでいきなりかっ飛ばしてくれます。泉鏡花『天守物語』は怪しくも美しい青獅子の戯曲。日影丈吉『山姫』は、一読妖怪探索の旅行記かと思わせといて、気がつくとあちら側へ。椋鳩十『一反木綿』、ほおこんなの書いてたんですか。内田百閒『件』は、なにを今更ですが、こういう並びで改めて読むとやっぱり流石ですね。巻末には東雅夫の懇切丁寧な編者解説付き。怖くはないですが、クスッと笑える妖怪達のあれやこれや。

約13時間前

おにいちゃん―回想の澁澤龍彦

澁澤龍彦の最初の妻だった矢川さんによる回顧録。澁澤の死後に書かれています。書くことを躊躇したというフレーズが何回も出てきます。しかし矢川さんは書いてしまった。しかも澁澤の仕事に自分が関与していたこと、澁澤との性交渉などについて克明に書き綴ってしまった。相手は故人で最早なにも弁明出来ないのに。そのくせ延々おにいちゃんと呼び続ける。これは個人的なノートかなにかに書いて秘しておくべきだった文章だと感じました。そんな矢川さんも自ら命を絶ち、みんな《彼(THEY)等》となった。もう、それでいいのではないでしょうか。

約13時間前

アメリカン・グラフィティから始まった

『アメリカン・グラフィティ』の劇中に流れる曲を、サウンドトラック盤未収録の曲含め解説した254ページにわたるライナーノーツ。十代の若者らが大人になる過程を描いた映画なのか。アメリカという国が混乱を経て成熟へと向かう過程を描いた映画なのか。酒とタバコとロックンロール。明け方のドラッグレース。ドーナツ盤の英雄達の多くは早死にした。登場人物達もまた。成熟する前に訪れる唐突な死。ドナルド・トランプを産んだアメリカは「もう大人になろうなどとはしてないのだろうか」。夏は必ず終わる。エンドレスじゃない。次へ行こうぜ。

2日前

初恋宣言―自選青春小説〈2〉

かつての集英社コバルトの星、富島健夫。のちに執筆の路線を官能小説に変え、元少女等から裏切り者だのなんだの非難されたようだが、さて。表題作の『初恋宣言』。併録の『星への歩み』。どちらも物語のテーマは共通しています。いつの世も人々は徒党を組む。男子は暴力で、女子はうわさ話で。烏合の衆。その群れから外れようとする者は男子はリンチにあい、女子は仲間外れにされる。そんなことがなんだ。誇りを持って我が道を行け。そう富島健夫は思っていたのではないか。媒体が少女小説だろうが官能小説だろうが、富島健夫はぶれてなかったのだ。

2日前

草の花

幾度目かの再読。今回は七年ぶりくらい。数十年前は、この作品は少年愛を描いた物語として、そういう小説を好む女性達に盛んに読まれていた。それを知った上で手に取った若き頃の自分は、登場人物の一人の台詞を借りていえば麻疹のような時期だったのかもしれない。しかしそんなものではないと主人公と一緒に声を荒げて反論してみたい気もするのだ。初老の年齢になって読み返し、ひしひしと感じるのは愛の不可能さと孤独である。愛を深刻に捉えすぎると、行き着く先は孤独になるのではないか。作中でさらりと荷風に触れられるのが、実に示唆に富む。

2日前

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書芸閑話

古代から現代までの書家についての、これでもかというぐらい濃厚な蘊蓄を、粋な文章でぐいぐいと読ませる随筆集。二部に分かれてます。聖徳太子・光明皇后・小野篁・藤原定家とくる日本編もいいけれど、この本の真髄は中国編。李斯・鍾繇・王羲之ら、最早真筆とされるものの存在しない書家について、この本が出版された昭和45年当時の日本の話題を取り込みながら、図版を多量に添えてじっくりたっぷりと語ってくれる。著者検印の代わりに〈著者花押〉のおまけ付き。著者は生前便所の歴史研究で知られたそうで、そちらの仕事にも触れてみたい。

2日前

死者の書・口ぶえ

もの静かで感覚が鋭敏な少年少女は、思春期になると、よくないものも引き寄せてしまう。むくつけき上級生に抱きしめられ嫌悪感を持ちながらも、自身の性を求められることにどこかでうっとりとする明治時代の少年(というか折口自身)『口ぶえ』。奈良時代、貴族の娘の元を夜毎訪れる死者。慄きながらもどこかで陶酔を感じ、くるのを待ちわびる『死者の書』。性と死。嫌悪と陶酔。穢れと宗教。若者達は清いものに憧れつつ、力づくで近づいてくる穢らわしいものにも眩しさを感じる。奈良時代・明治時代の迷える魂がとった行動とは。渾身の注解付き。

3日前

ポロポロ

初年兵として中国戦線に赴いた体験を元に描いた連作集。「中国戦線では、敵兵を見ない、というのは有名なはなし」。敵兵の代わりに襲ってくるのは、飢えと感染症。行軍途中に倒れたり肛門から血を吹き出させたりしながら呆気なく死んでいく仲間達。たまに発砲すれば、その弾は敵兵ではなく身内のはずの者の命を奪う。そのうちに敗戦を迎え、病人がうじゃうじゃいるのに野戦病院は解散してしまう。後半では、自分の体験を物語ることへの疑念やためらいが吐露される。文体は淡々としてるけど、ぐらぐらと揺れ動く戦記です。

3日前

藤原氏―権力中枢の一族

天智八年(669年)、中臣鎌子は大王から死の直前に藤原姓を賜った。以降、不比等を経て四家の分立、怨霊が乱れ飛ぶなか、ある者は消えある者はのし上がる。栄華を極めたと自認した道長は「この世をば」と豪語したが、実際には次々と子を喪い、望月はボロボロに欠けていく。他の木の養分を吸い取り枯らし、自らは咲く藤の花。そんな藤原氏はしぶとく生き残り、殿と呼ばれた元総理まで脈々と跋扈し続けている。歴史の舞台となった土地の写真満載ですが、ほとんどが最早ただの住宅地や駐車場・畑です。その地面の下にはドロ沼の歴史が眠っているぞ。

3日前

写真のボーダーランド: X線・心霊写真・念写

コナン・ドイルがいれあげた妖精写真や、心霊写真、念写といった、アヤシイ写真を題材としながら、写真というメディアの本質を考える試み。現実に起きている出来事を十全に写真におさめることは出来ないし、写真の中に描かれた以上、どんなに荒唐無稽で非科学的な内容でも現実と全く無関係でもない、と述べられます。ドイルが夢中になった妖精写真は人を騙す為に撮られたのではなく、少女達にとっての夢を写す鏡だったのだという著者の主張はわかる気がします。子どもの頃ってそういう遊び方をしますものね。

4日前

妙高の秋

海産塩物を扱う家に産まれた島村さんは長男であり、家を継ぐことは必然でした。しかし小学校教師の影響で文学少年になり、父親はそれに対し警戒心をつのらせます。15歳。問屋に見習い奉公に出したい父親に殴られ、それでも思い切って家出しようとしたけれど、姉に気づかれてしまい、深夜、泣いている母や姉弟達と身震いしながらの話し合い。島村さんは自分の意思を通しますが、それは弟に家業を押し付けるようなものでした。好きに生きることが家族全員の運命を翻弄してしまう時代の、家族の混迷と微かな再生。そんな私小説の表題作を含む短編集。

約13時間前

土の絵師 伊豆長八の世界

蔵や寺院の壁面にコテで龍や天女を描いた左官・伊豆長八について書かれた文章をまとめた本。その作品の多くは幕末の火災や関東大震災で既に失われているようなので、編者の村山道宣さんによる〈品川に残る長八の建築装飾〉は、わずか3ページほどながら有り難い品川散歩ガイド。建築家の石山修武さんが設計した長八美術館は、「左官のことは左官に任せるのが条件だ」と引き受けた左官達と石山さんとの激しい合戦の果てに出来たそうです。建築家の膝を恐怖に震わせる左官らの怒りや気概。左官側の生前の談話も載っていて、公平な編集がされています。

約13時間前

人生居候日記

数年に一度読み返すエッセイ集。読み返すたびに印象に残る文章が変わる。初読時に強烈だったのは、タライを酒で満たした中に男性が2人あぐらをかき、互いのタライの酒をひたすら柄杓ですくい飲み比べという『酒の上で死ぬ』。おしゃれなエッセイと程遠い、尿臭と便臭漂う文章にたじろぎページを閉じたが、この方の発する猥雑さには惹きつけられた。それから二十数年。団体旅行の群れに脅かされながら一人裏町を歩く『あまのじゃく旅行術』、居酒屋で飯食うなという『酒場ぎらい』に今回は惹きつけられました。人生居候っていう佇まいがいいですね。

2日前

ユリイカ 1989年 3月 臨時増刊 総特集 ※監督 川島雄三 ●<川島雄三作品集 ・エッセイ・ドラマ・俳句・座談会・戯文・シナリオ>

ALSだったのである。女優に喋り方を揶揄われ不機嫌におし黙る痛々しいエピソードを、小沢昭一が愛情深く語っている。小沢はきき返したりせず、聴き取れた言葉の断片から川島の意図をじっくり考えたそうだ。フランキー堺のインタビューからも、川島の自己破壊的な生き方と孤独が色濃く感じられる。作品と監督を重ねるのは邪道だが、自分が若死にすることを自覚しつつ酒をあおり親と絶縁し月収の数倍のスーツを身にまとう生き様は彼の作品の登場人物達そのままだ。「いきてるうちがはなではないか/さいげつひとをまたないぜ」。

2日前

声をなくして

永沢は本来、人の語りを聴く仕事をする人だった。彼の遺した『AV女優』を読めば、語り手の気持ちをほぐし併走する稀代のインタビュアーであったことがわかる。癌となり喉頭を摘出し、彼は声を失う。インタビュアーとしての武器を喪失した彼は焼酎で薬を流し込みながら、自身一番軽蔑し書くまいと決めていた闘病日記を書き日々を過ごす。だけどどっこい彼は声を失ってもインタビュアーだった、、、自殺志願しネットで出会った者に自らの命を預けるような事件は、この本の出版時も現在も絶えない。永沢の、あの世からの声にならない声よ彼等に届け!

2日前

音・ことば・人間

1970年代後半『世界』で連載された、文化人類学者と作曲家の公開往復書簡。音やことばが一応のテーマになってはいるものの、まとまりはなく議論が深まらない。日本が経済的に豊かであった頃の連載であり、書簡が書かれた場所はアフリカであったりパリであったりニューヨークであったり。金あるなあ。豊かな資金を背景に海外に飛びながら、辺境である日本から西欧に赴く人類学者・作曲家というねじれに二人とも悩んでいること、日本の音楽やその他の芸術に対する愛憎の念が入り混じっていることが行間から伝わってくる。これが裏テーマか。

2日前

内部の真実

1944年。日本の植民地であった台湾で一人の軍人が死んだ。陸軍曹長と一等兵の間で起きた、色恋沙汰の果ての決闘騒ぎ。その結果としての死で片付けられる単純な出来事のはずだった。が。ありがちな密室殺人もののように幕を開けるが、日影丈吉お得意の民間伝承、純文学ネタがあちこちで暴発。人間関係も物語も錯綜し、あれよあれよというまに、パパイヤの濃厚な香り漂う亜熱帯を我々もさまようことになります。日影作品、ここのところ一年に一冊のペースで再刊されており嬉しい限り。

3日前

幽霊船

再読。確か出版当時、『本の雑誌』で騒がれていた記憶があります。1882年生まれの英国のどマイナー作家の短編集。表題作は、幽霊船というタイトルから想像される内容を気持ちよく裏切られるお話。『ブライトン街道で』は、読んだ後に心を冷風が吹き抜ける名作。読み終えた後巻末の『ミドルトン小伝』を読むと、寂寥感倍増です。表題作の原稿をあちこち投稿したものの不採用、一文無しとなり29歳で自殺した不遇の生涯だったようですが、地球の裏側で100年経っても読まれてますよと伝えてあげたい。といってもとっくに絶版なんだけど、、、

3日前

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ニッポン大音頭時代:「東京音頭」から始まる流行音楽のかたち

音頭の通史。炭坑節の起源や東京音頭の事始め、三波春夫の音頭観、フランキー堺から大滝詠一に至る冗談音楽の系譜、アラレちゃん音頭などのアニメ発音頭や、アイドルの音頭などの歴史を丁寧に辿り、最後の大友良英作音頭まで駆け抜ける。当たり前のことながら、音頭はダンスミュージックなんですよね。

3日前

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釣影―つり随筆

自伝。結果として民俗誌でもあります。復員した素石は「絵を描く人募集」という求人広告を見て画工の師匠に弟子入りする。山々を渡り歩く師匠について共に商売をしながら、合間に師と共に釣り糸を垂れる。最初の妻の死、師の死。その後マッカーサー元帥が解任される頃までの素石の生き方は自己破壊的というか自ら泥濘に突き進むような激しいものですが、当時の山々を素石同様歩き回っていた木地師やら刃物研ぎやら山伏やらの面々や、川にきらめくアマゴやイワナ、そしてなにより流麗な文体のおかげで流されるようにすいすいと読み進んでしまいます。

4日前