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Susumu Hikita

コーヒーと公園

コーヒーと公園

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コメントした本

鷲は舞い降りた

文句なしに面白い!とはこの小説のことだろう。 第二次世界大戦中のドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐、という暴挙とも言える作戦に、 作戦を指揮するドイツ軍将校も落下傘部隊の歴戦の勇士も諦観の域で死に場所を求めるかのように、士気高く遂行していく。 抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが人間の最も優れた価値であることを極上に面白い娯楽小説の形で明朗に伝える。 なんといっても魅力あふれる登場人物の面々。男も女も皆とにかくヒロイックで、自分の思っていることを闊達にシニカルに語る。そして例え獄中であっても決して信念を曲げない。 また航空機、船艇、小火器などの武装から服装や酒、タバコの銘柄までディテールにこだわることでリアリティを演出することに一役買っているが、描写がくどくどしくないのでスピード感に影響させない(もはや馴染みのない機種名や銘柄が登場しても、Google画像検索が楽しみを後押ししてくれる)。 なかでもカバーアートにも描かれているダグラスDC-3がなんといっても印象的。 夢中で読んで「あ!面白かった!」と声に出るほど感嘆した。

1年前

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幽霊たち

モンドリアンの絵画を想起した。 一見単純な色彩と面構成によるあれだ。 矩形の一つ一つに人格があるようで、黒い線は街のようで。 「私は何者か」というテーマは『ガラスの街』と一貫しているようだが、同じテーマを裏側から書いたようなとでもいえばいいだろうか。 自分を観察するものがいて初めて自分を認識する。 そのような感覚はSNSなどによって慰めを得ようとする今の私たちにこそ思い当たる感覚ではないだろうか。

1年前

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忘れられた巨人

忘却の霧が愛の本質を温めあえるのだとわかっていても、人間は残酷な記憶の真実を求めようとする。 物語はファンタジーというメタファーではない。 時代が求めればアーサー王は英雄だが、虐げられた者にとっては残虐な敗北者に過ぎない。 そのような背景をひた歩く老父婦の姿はあたかもジャコメッティの彫刻のように。

1年前

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高い城の男

ドイツと日本が勝利した第二次世界大戦後のアメリカは、陰と陽の一面を返したようで、権力者の影が影絵のように揺らめく様相は、現実においてのアメリカ合衆国が落とす影と一対になっているかのよう。 この世界であっても日本は渦の中心にあって中庸の立場をとらざるをえなくなるというのはいかにも皮肉だ。 そのような世界での官僚、反骨心をくすぶらせる職人、素性を隠すユダヤ人青年などに引き起こされた出来事に対しても、生き抜くための手段を講じる日常にすぎず、世界の大局に影響する力も持たない。 作中作として登場する小説はアメリカが戦勝国となった世界を描いており、またディック自身が傾倒していた「易経」がこの背中合わせの世界を立体的に描写する役割を担っている。 今の世の中も物事の一面に過ぎないということを薄暮の雲のような淡彩の向こう側に描いたような独特の世界観を感じた。

1年前

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ガラスの街

豊かな音楽的な言葉の数々。 人は言葉によって自分が何者であるかを認識するし、ここがどこであるかを定義する。 自分自身の存在があやふやに感じることもあれば、物語のなかの人物が生き生きと存在感を表すこともある。 言葉に、フレーズに、音に、小説に、真摯に素直に向き合った作家と、翻訳家の妙技をただただ芳醇な香りのように、音楽のように味わうことができた。

1年前

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