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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

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コメントした本

生命の歴史は繰り返すのか?

大雑把に言ってしまうと生物の進化というのは同じ条件が揃うと必ず同じ結果になるのか、それとも偶然がかなりの比重を占めるので必ずしも同じ結果にはならないのか、ということを一般人向けに簡単に説明した本。哲学と違うところはこの両者について実験で検証できるというところで…つまり進化という何世代もかかるために実験不可能と思われていた進化の検証が実は実験可能なのだという。つまりある種の生物においては進化の結果は早いスピードで現れるという。学者の腕の見せどころはどういう生物を実験の対象とするのか、またどういう実験をするのか、ということのようで、いろんなケースが取り上げられていて実に興味深い。地球外生物の可能性にまで言及されていて面白かった。完全に文系人間なのでちょっとしんどいところもあったけども…。

約7時間前

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発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ

食べ物に興味があり発酵についてもう少し理解を深めたいと思ったので手にとってみたのだがこれが正解だった。もともと文化人類学も学んでいたデザイナーだった筆者。味噌のパッケージデザインから味噌そのものに興味を持ち農大で発酵を学んだうえで「発酵デザイナー」として活動しているのだそう。根っからの文系人間なので科学とかそういう分野に話が展開するとたちまち嫌になってしまうので極力化学式とかの出てこないものがよいな、と思ったのだけれどその意味では良い選択をした。発酵とはどういうもので一口で発酵といってもどういう種類のものがあるのか、について極めてわかりやすい内容。ちょっと語り口がフランクすぎるので人によっては拒絶反応があるだろうな...と思うほどの。参考文献の紹介も極めて親切で初心者向けには最適な内容ではないか、と思った。面白かった。

7日前

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ブラック・スクリーム

新作が出ると必ず手にとってしまうシリーズの一つ。科学捜査の天才でほぼ全身麻痺の名探偵が主人公のこのシリーズ。本作ではシリーズ初の海外が舞台。呻き声に合わせた音楽に合わせて拉致した人間をじわじわ殺そうとするところを動画にして投稿する、という猟奇殺人犯を追って探偵の手足となる女性刑事と介護士を連れてイタリアはナポリに渡り、強引にイタリア国家警察の捜査に加わってしまうという展開。犯行現場に残された微細な証拠から真相を追う展開と、この作者の場合はどういうどんでん返しがあるのか、という興味で読み進めていくのだが…本作のひねりはちょっとやり過ぎというか反則という感じかな。面白かったし良くできた作品だったのだけどちょっと引っかかった。悪くは無いんだけど。

約1か月前

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「いいね!」戦争

SNSが政治や戦争に及ぼしている影響を軍事研究家がまとめたもの。SNSを日々使っている者としては目を通しておくべき内容かと思い手にとってみた。前半の1/3くらいはインターネットの誕生とSNSの生い立ちについてまとめられているのだがこれがかなりコンパクトで分かりやすく良かった。中盤以降がSNSがいかに「悪用」されているかの実例で、ISISのSNS活用、ロシアによる情報操作とアメリカ大統領選に及ぼした影響、同じくロシアによるウクライナ紛争、インドの大規模テロにおけるSNS活用、メキシコの麻薬戦争におけるSNS活用などがこれでもか、と列挙されている。フェイクニュース、それも怒りを駆り立てる情報は真実の報道よりはるかに早く広がる、という指摘が悲しい。何気なくいいねやシェアをすることで知らないうちに我々のような一般人も戦争行為に加担してしまう可能性がある、という指摘が怖い。SNSが生まれてから実はそんなに日が経っておらず、その意味では規制なども考えられていくだろう、ということだが我々自身も気をつけなければならない、ということが分かった。それにしても透明性を気にしない国家、要はロシアと中国のことだが、のITの「悪用」の上手さはちょっと驚くほど。ロシアの活用した4つのD(批判を一蹴「dismiss」、事実を歪曲「distort」し本題から目をそらさせ「distract」、聴衆を動揺させる「dismay」)が新たなSNS時代の戦争行為における文法であり戦略であるのだそうだ。しかしいろいろな事例を解説、分析しつつもよくある規制を強化せよ、みたいな文脈にならないところはやはりアメリカの研究者だからか。なにげに使っているSNSだけれども気をつけなければいけない、と分かった。ためになりかつ面白い作品だった。

約1か月前

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人生で大切なことは泥酔に学んだ

著名人の酒にまつわる失敗談を集めた本。人のこういう話ってなんでこんなに面白いんだろう…。登場するのは太宰治・福澤諭吉・原節子・三船敏郎・小島武夫・梶原一騎・横溝正史・平塚らいてう・河上徹太郎・小林秀雄・永淵洋三・白壁王・源頼朝・藤原冬嗣・力道山・大伴旅人・中原中也・梶井基次郎・辻潤・黒田清隆・米内光政・古田晁・泉山三六・藤沢秀行・梅崎春生・葛西善蔵・藤原敏男といった面々。へぇこの人がねぇ...という人もいたり。ちょっと笑える失敗談もあれば危なすぎて笑えない話までよくもこれだけ集めたな、という印象。自分も人一倍の酒好きでたまにもう少し控えなきゃ、とか今日はちょっと良くない酒だったかな、と反省したりするのだけどもここに出てくる人達に比べたらかわいいものかも、とか思ったりしたのでその意味では学ぶべきところはあったかも知れない(笑) 面白かった。

約1か月前

路地裏の子供たち

ここ数年読んだ中で特に印象に残り、再読したいと思ったので図書館で借りて読んだ2作品(『シカゴ育ち』『僕はマゼランと旅した』)を改めて購入した作家。彼の初期短編集ということでこれはもう最初から購入しました。古き良きというのかシカゴの裏町で育った子供時代のことを瑞々しく描いた2作品が気に入ったのでその意味ではそのものずばりのタイトルではないか、ということで。結果だけどもかなり荒削りな作品があったりちょっと幻想的に過ぎるのではという作品があったりでなるほど初期の作品はこんな感じだったんだな、という印象。正直なところ個人的には先に挙げた2作品には全体的には及ばないなとは思ったもののいくつかの作品では荒削り故に先の2作品よりもインパクトがある作品があったな、という印象。やはり優れた作家だなと改めて思った。面白かった。

約2か月前

訣別(上)

作品が邦訳されたら必ず読む作家の一人。いくつかのシリーズを出しているがこれはアマゾンプライムビデオでもおなじみの刑事ハリー・ボッシュのシリーズの邦訳最新。ベトナム帰りの刑事ボッシュはとっくに定年を迎えておりロス市警に嘱託のような形で再雇用されていたのだが逸脱行為を咎められてロス市警から解雇されている。そのため市警時代の知り合いが本部長を務めるロサンゼルス近郊の小さい町で無給の嘱託刑事として働く一方で私立探偵としても活動している、という設定。本作では刑事として連続レイプ事件を捜査しつつ私立探偵としては後継ぎのない大富豪から依頼された「若いときに付き合っていて身分の差から無理に別れさせられた恋人との間にできた血縁者がいないか探してほしい」という依頼に対処する。手練の作者なので破綻なく両方の捜査が進んでいくのだが...個人的には捜査があまりにもスピーディなのが気になった。掴んだ手がかりは確実に次に繋がるし割とすぐに真相に到達してしまう。このシリーズは一時期かなりおかしな状態になっていたのであの時期に比べたら、と思わないでもないがちょっと展開がイージーじゃないですか、と思ったりした。もちろん実力者の作品で面白いし上質なミステリを求めている方にはお薦めできるのだけど実力者だけにもうちょっと捻りがあっても、と高望みをしてしまいました。

約2か月前

ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29

村上春樹作品の英訳で知られる日本文学研究者ジェイ・ルービン。夏目漱石や芥川龍之介なども翻訳しているらしい…がイギリスの老舗出版社(だと思うんだよな。昔ペーパーバックってここのオレンジのやつしか無かったような気もする。なんかイメージ的には岩波?)から出した日本の作家の短編アンソロジー。序文を村上春樹が書いてて、自作も二つ収録されているが、なんでこれ?みたいなこと書いてて面白かった。正直なところ日本文学はそんなに得意ではないのだけどかなり面白く読めた。収録はテーマ毎で特に時系列というわけではなくこういう形式も面白いかな、と思った。列記するとこんな感じ。知らない作家も何人かいたけどどれもクオリティ高く選者の力量を感じた。小説好きの方にはおすすめです。 (日本と西洋) 監獄署の裏 永井荷風 (忠実なる戦士) 興津弥五右衛門の遺書 森鷗外 憂国 三島由紀夫 (男と女 ) 焔 津島佑子 箱の中 河野多惠子 残りの花 中上健次 ハチハニー 吉本ばなな 山姥の微笑 大庭みな子 二世の縁 拾遺 円地文子 (自然と記憶) 桃 阿部昭 『物理の館物語』 小川洋子 忘れえぬ人々 国木田独歩 1963/1982のイパネマ娘 村上春樹 ケンブリッジ・サーカス 柴田元幸 (近代的生活、その他のナンセンス) 屋根裏の法学士 宇野浩二 工場のある街 別役実 愛の夢とか 川上未映子 肩の上の秘書 星新一 (恐怖) 砂糖で満ちてゆく 澤西祐典 件 内田百閒 (災厄 天災及び人災) 大地震・金将軍 芥川龍之介 虫 青来有一 ピンク 星野智幸 UFOが釧路に降りる 村上春樹 日和山 佐伯一麦 マーガレットは植える 松田青子 今まで通り 佐藤友哉

2か月前

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教養としてのロック名盤ベスト100

タイトルとざっと見た内容でつい買ってしまった。この作品がユニークなのはベスト100の選出を英米の有名音楽誌(もっとも両者ともに自らを音楽誌とは呼んでいない)であるNMEとRolling Stoneのランキングを極力公平にマージしたリストを元に解説を加えている点。従って本作のリストに作者の意向は全く入っていない。尤も言わば底本にした2誌がいずれも偏った読者を対象にしているため出来上がったリストもかなり偏向しており、大衆受けしたグループ、例えばクイーンは100位までに一枚も入っていない。プログレ系もほぼ皆無。また明らかにロックじゃないよね、みたいな作品が入っていたりする。どちらかというとオルタナティブ系に偏った内容でこれが変かというとなかなかに面白い。どれも一度は聴いてみたいと思わせる作者の腕は見事。洋楽ファンを自認していたが聴いたことがないアルバムが33作品もあった(偏っているから!)うえに全く知らなかったアーティストが7人もいてびっくり。一応全部聴いてみようと思っている。

2か月前

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ニックス

話題になった短編小説を一作出した後は鳴かず飛ばずで今は大学で文学を教えている主人公のもとに、幼い頃に出奔して行方知れずとなっていた母親が大統領候補に石で襲いかかったという知らせが入って…というあらすじを見た瞬間に読みたくなったので手に取ってみた。母親のことには一切触れたくなかった売れない作家だが出版社から受け取ったアドバンスの返還を求める訴訟を起こすと脅されたので渋々、母親と接触し犯行に至る経緯をさがることになったのだが、という話。ベトナム戦争からイラク戦争、トランプの出現までを盛り込んでなおかつ地理的にはシカゴ、ニューヨークからノルウェーまで。いろいろ盛り込んだ結果700ページ超の大部になってしまっているけど実に読ませる。読み応えがあって面白かった。アメリカ文学が好きな人にはおすすめできます。

約7時間前

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宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源

是非はともかく現在の世界が欧米中心に成り立ってきたことは間違いなく、欧米はキリスト教社会であってその歴史の中で宗教改革は非常に大きな役割を果たしたと思うのだけど実はちゃんと理解できていないなと思ったので。7年もキリスト教系の学校に通っていたのにお恥ずかしい話ではあるけども…。というわけでタイトルとこの作者であればわかりやすいであろうという期待のもと。どちらかというと宗教改革に伴う欧州の歴史みたいなものに興味があったのですが本作は思想面での宗教改革の起こりについて、が主な内容。一般的に宗教改革はルターが始めたもの、という認識だと思うがルターより百年ほど前にチェコにおいて宗教改革のはしりのような論を唱えて最後は刑死したチェコのヤン・フスと思想上の彼の師に当たるイングランドのウィリクリフが説いた内容を元に筆者が考察を展開しているのだが…聖書はともかく両聖職者の引用がもってまわった表現が多く難解で手間取った。途中で筆者の要約だけ読めばよいのだと気がついたのだが…。世界史を選択していなかった(そもそも日本史と世界史って分ける必要があるのだろうか)ので宗教改革については「カトリックが腐敗しておりその状態を改めようとルターが声をあげて」という説明が印象にのこっているのだども言われてみると当時の欧州においては世俗の権力も握っていたカトリックの力は絶大で教皇は文字通り「神の代理人」だったわけでその誤りを指摘しようなどとは誰も思わなかっただろうしそう簡単にひとりの人間がはじめられることでもなかっただろう。今更ながらキリスト教とはいかなる宗教であるのか少し理解が進んだと思う。手こずったけども興味深く面白い内容だった。

7日前

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

ベストセラーの前作「サピエンスの歴史」があまりにも良かったので後編に位置づけられている本作も手にとってみた。内容はいろいろなところで取り上げられているがざっと言うと、人類(サピエンス)のこれまでの歩みをまとめたものが前作であり、今後の歩み述べたものが本作。人類はAIをはじめとするITのテクノロジーとバイオテクノロジーを使って新たな段階にアップグレードされる。これを筆者はサピエンスからデウスと呼んでいる。神をゴッドではなくデウス、としているところがミソで全能の存在ではなく、力を持っているがときに迷惑な存在にもなり得るギリシャ神話のそれのようなイメージだという。明るい未来を提示しているわけではなくむしろ一部のデウスのような存在とテクノロジーに取って代わられ社会に不要な存在が増えるどちらかというと暗いイメージの未来像である。個人的な感想ではあるが残念ながら概ね首肯できる内容でありこうならないためにどうすればよいか考えなければならない、と思った。 あとITに関わる端くれとしては民主主義もインターネットも分散しているからこそ成功した、という説明が非常に興味深かった。企業のシステムはまだまだ集中処理が中心ではあるけども徐々にクラウドやインターネットの技術を用いて分散されていくだろう、逆に集中処理で残るものは分散、オープンにする必要のないもの~勘定の処理であるとかそういうもの~であるから社会に影響を与えることはない、と考えると集中型で残っていきそう、かつ社会に影響を与えるものはSNSではないか、と。これだけは一部の人間がデータを独占して活用できる状態になっていてやり方によっては世論を操作できる状態になっているのではないか...とかそういうことを考えたりしました。 翻訳者の力もあるのでしょうけども難しく広範囲に渡るテーマを極めて分かりやすくテンポよく書かれていて売れるのも当然という印象。一度だけでは理解できたと思えないので前作含め再読したいと思う。時間と心にかなり余裕がある時に…。

7日前

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玉麒麟 羽州ぼろ鳶組

おそらく今一番乗ってる時代もの作家の出世作シリーズ。最新が出てるのでこれは一作前のやつ…と考えるとほんと多作というか作家のノリ具合が分かる。本作ではボロ鳶火消し組のナンバーツーで剣の達人ではあるが一見軽薄でいじられキャラの若者が主人公。都内でも有数の商家が押し込み強盗に入られ主人以下が殺され放火された現場から若者が商家の娘を連れて逃げるところが目撃される。その後行方をくらましてた若者だがボロ鳶は幕府から謹慎を命じられ身動きが取れない。本当に若者が罪を犯したのか〜シリーズの読者であれば何か事情があったのだろうとわかるのだが〜その事情は何か、またボロ鳶達が動けない中、若者を誰が助かるのか、江戸中の火消しと火付盗賊改が追う中、若者の逃亡がどうなるのか、というシリーズの中でも屈指のスリリングな展開が見事。期待を裏切らない面白さでした。

約1か月前

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ランチ酒

タイトルに惹かれて手にとってみた。主人公は寝ずの番を行う「見守り屋」を生業としている女性。いずれもわけありの依頼人から寝ずの番を頼まれて…夜中に不在の家で子供やペット、ちょっと言動が怪しくなってる母親、などを見守る。いわば夜勤明けの楽しみはランチタイムに楽しむ酒。主人公には別れた夫に引き取られた娘がいて昼酒とともに娘のことを考えたり依頼人のことを考えたり…という組み立て。職業柄いろんな町でいろんなお店に行くのでまさに女性版「孤独のグルメ」といった趣。女性ということもあって井之頭五郎のようなドカ食いはしない反面、実にうまそうに酒と飯を味わうところが良い。出てくる街は武蔵小山・中目黒・丸の内・中野・阿倍野・御茶ノ水・新宿・十条・新丸子・秋葉原・代官山・房総半島・不動前・中野坂上…これはあそこかな、というお店は少しで、ここどこだというお店が殆どだったので探して主人公よろしく昼酒を楽しんでみるのも良いかもしれない。面白かった。

約1か月前

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ディオゲネス変奏曲

華文ミステリの第一人者とされる香港の作家の短編集。一時期かなり話題になった連作中篇集『13・67』が非常に面白かったのでこれも手にとってみた。すべてミステリなのかと思ったらいくつかSF…いくつかはディストピア系のものがあったり、完全に純文学のものがあったり、星新一かと見まごうばかりのものがあったり、とバラエティに飛んでいる。正直これはちょっと…という作品もいくつかあったもののトリックや奇想としか言いようのないアイデアを駆使した作品もあって全体としてはかなり良かったと思う。いくつかの作品では普通に日本のポップ・カルチャーが登場したりするところも面白かった。欧米のミステリが完全に成熟期に入っていていろんな作家が試行錯誤を重ねているところにオーソドックスというか衒いのないミステリをポンと出されたようなある種の新鮮さがこの人の作品にはあって楽しい。

約2か月前

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IQ2

前作が荒削りだったもののなかなか面白かったシリーズの第二作が早くも出たので。前作の解説によるとシャーロック・ホームズ的な頭脳派探偵を現代のロサンゼルスでかつ黒人という設定で描こうというものらしい。本作では非業の死を遂げた兄の彼女からギャンブル中毒から窮地に陥っているらしい妹を救ってほしいという依頼を受けた主人公が腐れ縁の相棒を連れてラスベガスに乗り込み、という話。ロサンゼルスのラテン系ギャング団、ギャング団の資金洗浄をするルワンダ出身の投資家、ラスベガスの高利貸し、中国系マフィアが入り乱れて、更に主人公の兄の死の真相を探る動きまで盛り込まれての少々詰め込み過ぎな感のある内容。しかし前先よりもミステリやアクションとしては洗練されていて面白く読めた。残虐シーンもけっこうあるし救いのある物語でもないので万人におすすめできるものではないですが。

約2か月前

殺人鬼ゾディアック――犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実

絶対に嫌な気持ちになってしまうのに何故か興味を惹かれてしまう猟奇殺人もの。ゾディアック事件とはサンフランシスコで60年代に発生した現在も捜査継続中となっている未解決の連続殺人事件。女性やカップルが次々に狙われ5人が死亡、2人が負傷したこの事件はいずれも強盗やレイプ目的ではなく純粋に殺人目的での襲撃だったこと、犯人が遺留品を残したり目撃されたりしていること、そして警察やマスコミに暗号(ここからゾディアックと命名された)を含んだ犯行声明を送りつけたことなどが特徴でダーティーハリーの犯人のモデルにもなっている。この作品はいわゆる「真犯人は誰だ」という作品なのだが特徴は養子である作者の元に生みの母親からコンタクトがあり、行方不明にの父親のことも知りたいと思って調べたところ謎の連続殺人犯なのでは…という疑念が湧いてきて、という話であるところ。それだけに痛々しさもひとしお。異常な育てられ方をした男が壊れた人間になってしまう過程と壊れた人間に巻き込まれた人々の悲劇が痛々しい。

2か月前

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胡椒 暴虐の世界史

タイトルそのままに胡椒をめぐる歴史について描かれた作品。不幸なことに熱帯でしか採集できない胡椒を中心としたスパイスを巡って欧米、もっとはっきりいうとポルトガル、オランダ、イギリス、アメリカがいかにひどいことをしてきたか、の歴史。帝国主義の横暴ではおなじみのスペインは南米での暴虐で忙しかったらしく胡椒の産地であるインド~インドネシア近辺での横暴な振る舞いは主にこの四カ国に絞られるらしい。サブタイトルに「暴虐」とあるがどぎつい描写はなく(原題が “PEPPER A History of World’s Most Influential Spiceなので作者に罪はない)貿易から徐々に植民地化に移行していく過程が様々なエピソードを交えて紹介されている。一般的な世界史だとバスコ・ダ・ガマやコロンブスなど大航海時代に海に乗り出していった側のことはよく見かけるが押しかけられたほうの歴史はあまり見かけないのでその意味でも貴重な作品かと思った。ローマ時代から胡椒の存在は欧州でも知られていた、というのが意外だった。しかしより美味しいものを食べたい、という欲求のみで胡椒やスパイスを熱望した先人の欲望には感心させられた。何も考えずに使っていた胡椒だが見方が変わったかも知れない。面白かった。

2か月前

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