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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

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コメントした本

ノモンハン 責任なき戦い

ノモンハン事件については日本史の教科書にちらっと出てくるからなんとなく知っていたけど「ねじまき鳥クロニクル」にも取り上げられたという帯を見てそうだっけ?という興味が出たので手にとってみた。NHKのディレクターが番組の傍らまとめたものらしいけどちゃんとした本であった。地図で改めてみたけれどどう見ても戦略上意味がないモンゴルの平原で日本軍とソ連軍が戦い「事件」というには双方合わせて4万5千人が戦死したという戦い。しかも散々に負けた日本軍(戦死者数はソ連のほうが多いけど)は戦死者も全て回収しきれていないままなのだという。一部のエリート参謀が「国境を侵犯してくるモンゴルの弱い連中を懲らしめる」ために起こした戦闘は相手を見くびり、情報収集を怠り、自己の力を過信し、補給のことを考えず、精神論で戦った結果、日露戦争の結果から日本を警戒していたスターリンにいいようにやられる結果となった。その意味で当時の日本軍は独ソ戦におけるドイツ軍と酷似しているのだけど曲がりなりにもソビエトを植民地化するとともに英国との戦争を有利にする、という目的がドイツにはあったのだがノモンハンの日本軍にはそれもない。驚くべきは現場の指揮官と兵士には自死も含めた過酷な処罰を下しておきながらエリートの地位はすぐに回復させた結果、ガダルカナルを始めとする太平洋戦争においても同じ失敗を繰り返したことでこれが日本軍というか日本人の性質そのものであればとても嫌だな…と思った。この作戦を主導した参謀について「純粋悪」という評価があると遺族が憤っているということも紹介されていたが、個人的にはやはり「純粋悪」だと思う。私利私欲ではなく純粋に国益を追求した結果の悪事という意味で。精神論の恐ろしさもつくづく。作戦の甘いところは精神力でなんとかなるとした結果、敗戦の原因を精神力の無さに求めることになったのでは、と思いました。自国の軍人にこんなに残酷な国家も珍しいのでは、という思いが致します。嫌な話満載だけど一読の価値はありました。

13日前

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍

アントニー・ビーヴァーの「スターリングラード」をとても興味深く読んだのだけど世界史専攻でなかったこともあってそもそも独ソ戦全体はどういうなものだったのかに興味が出たところにちょうどよいタイトルの作品が売り出されていたので手にとってみた。新書ということもあってか簡にして要を得る、という言葉がぴったりであった。悲惨でない戦争というものはないと思うがとりわけ凄惨なこの両国の闘い。一般的に広まっている説だとヨーロッパを席巻したドイツ軍が勢いにのってソ連にいきなり攻め込みかなり押したのだが気候と人口、そしてスターリンの迫害をかろうじて逃れた将軍たちの力で押し返したのだ、ということなのだがそれが誤り、または戦後のいろいろな思惑で捻じ曲げられた説であることがわかる。諸々の悪事はヒトラーとナチスが起こしたものでドイツ国防軍はいわば被害者である、という立場が大嘘であることや、大粛清のあとでも赤軍がかなり洗練された軍隊であったことがわかる。それにしてももともとはユダヤ人を追放したかっただけ(それでもじゅうぶん酷いけれども…)だったものが対ソ戦の展開が思うように行かなくなったことからどんどん虐殺に変化していくところが恐ろしい。他者から収奪することで自分たちの生活を向上させようという戦争が完全に過去のものになったのであればよいのだが、と強く思った。

13日前

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奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

これも装丁とタイトルで損しているな。ものすごく真面目な内容なのになんかキワモノっぽい感じがする。この作者、Youtubeとニコニコ動画で古典の解説をしてるらしくそのの内容を書式化したものらしい。時代によっていかに価値観が変わるのか、というのがテーマで収録されているのは、魔女狩りの発端となった書物、台湾人になりすまして出鱈目をベストセラーにした話、未だ解読されないヴォイニッチ手稿について、野球がいかに悪いものかという論文、ガリヴァー旅行記の作者が人食いを推奨するていでアイルランドの現状を憂いた論文、誰にも見せずに世界で一番長いとされる小説を書いていた男の話、超伝導に関するニセ論文スキャンダル、敬虔なイスラム学者が酒を飲みながら書いた物語、顧客の求めに応じてでっち上げを完璧に作った江戸時代の話、古代ギリシャの赤裸々な愛の物語…この辺が言わば「奇書」の扱いで、逆に天動説への反論がいかになされたのか、古代ギリシャで先鋭的な議論がなされてきたという話、SFが実際の科学の発展にいかに貢献したのか、の3つが価値観の変遷の話と言えるだろう。どれも簡潔にまとめられており読みやすく興味深い話ばかり。紹介されていたいくつかの本は実際に読んでみたいと思います。面白かった。

23日前

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生命の歴史は繰り返すのか?

大雑把に言ってしまうと生物の進化というのは同じ条件が揃うと必ず同じ結果になるのか、それとも偶然がかなりの比重を占めるので必ずしも同じ結果にはならないのか、ということを一般人向けに簡単に説明した本。哲学と違うところはこの両者について実験で検証できるというところで…つまり進化という何世代もかかるために実験不可能と思われていた進化の検証が実は実験可能なのだという。つまりある種の生物においては進化の結果は早いスピードで現れるという。学者の腕の見せどころはどういう生物を実験の対象とするのか、またどういう実験をするのか、ということのようで、いろんなケースが取り上げられていて実に興味深い。地球外生物の可能性にまで言及されていて面白かった。完全に文系人間なのでちょっとしんどいところもあったけども…。

約2か月前

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発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ

食べ物に興味があり発酵についてもう少し理解を深めたいと思ったので手にとってみたのだがこれが正解だった。もともと文化人類学も学んでいたデザイナーだった筆者。味噌のパッケージデザインから味噌そのものに興味を持ち農大で発酵を学んだうえで「発酵デザイナー」として活動しているのだそう。根っからの文系人間なので科学とかそういう分野に話が展開するとたちまち嫌になってしまうので極力化学式とかの出てこないものがよいな、と思ったのだけれどその意味では良い選択をした。発酵とはどういうもので一口で発酵といってもどういう種類のものがあるのか、について極めてわかりやすい内容。ちょっと語り口がフランクすぎるので人によっては拒絶反応があるだろうな...と思うほどの。参考文献の紹介も極めて親切で初心者向けには最適な内容ではないか、と思った。面白かった。

約2か月前

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ブラック・スクリーム

新作が出ると必ず手にとってしまうシリーズの一つ。科学捜査の天才でほぼ全身麻痺の名探偵が主人公のこのシリーズ。本作ではシリーズ初の海外が舞台。呻き声に合わせた音楽に合わせて拉致した人間をじわじわ殺そうとするところを動画にして投稿する、という猟奇殺人犯を追って探偵の手足となる女性刑事と介護士を連れてイタリアはナポリに渡り、強引にイタリア国家警察の捜査に加わってしまうという展開。犯行現場に残された微細な証拠から真相を追う展開と、この作者の場合はどういうどんでん返しがあるのか、という興味で読み進めていくのだが…本作のひねりはちょっとやり過ぎというか反則という感じかな。面白かったし良くできた作品だったのだけどちょっと引っかかった。悪くは無いんだけど。

3か月前

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「いいね!」戦争

SNSが政治や戦争に及ぼしている影響を軍事研究家がまとめたもの。SNSを日々使っている者としては目を通しておくべき内容かと思い手にとってみた。前半の1/3くらいはインターネットの誕生とSNSの生い立ちについてまとめられているのだがこれがかなりコンパクトで分かりやすく良かった。中盤以降がSNSがいかに「悪用」されているかの実例で、ISISのSNS活用、ロシアによる情報操作とアメリカ大統領選に及ぼした影響、同じくロシアによるウクライナ紛争、インドの大規模テロにおけるSNS活用、メキシコの麻薬戦争におけるSNS活用などがこれでもか、と列挙されている。フェイクニュース、それも怒りを駆り立てる情報は真実の報道よりはるかに早く広がる、という指摘が悲しい。何気なくいいねやシェアをすることで知らないうちに我々のような一般人も戦争行為に加担してしまう可能性がある、という指摘が怖い。SNSが生まれてから実はそんなに日が経っておらず、その意味では規制なども考えられていくだろう、ということだが我々自身も気をつけなければならない、ということが分かった。それにしても透明性を気にしない国家、要はロシアと中国のことだが、のITの「悪用」の上手さはちょっと驚くほど。ロシアの活用した4つのD(批判を一蹴「dismiss」、事実を歪曲「distort」し本題から目をそらさせ「distract」、聴衆を動揺させる「dismay」)が新たなSNS時代の戦争行為における文法であり戦略であるのだそうだ。しかしいろいろな事例を解説、分析しつつもよくある規制を強化せよ、みたいな文脈にならないところはやはりアメリカの研究者だからか。なにげに使っているSNSだけれども気をつけなければいけない、と分かった。ためになりかつ面白い作品だった。

3か月前

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暗殺者の追跡 上

当代最高のアクション・シリーズの一つ。簡単に言うと小説版ゴルゴ13。元々は軍の特殊部隊出身でCIAの秘密部隊のエースだった主人公。グレイマンと渾名されるとおり至って目立たない男なのだけど戦闘力は凄まじい。元々は古巣のCIAから身に覚えなく「見つかり次第射殺」という扱いを受け殺し屋をしながら世界中を逃げ回っていたのだけれど、陰謀を暴き古巣との関係が改善されて、今はCIAの外注工作員として活動しているという設定。今回は情報漏洩対応のためアメリカに呼び戻される途中でCIAの専用機にたまたま乗り合わせた囚人が謎の集団に攫われたため急遽そちらを追うことになり、一方で何作か前に登場した元ロシア対外情報庁の女性将校はCIAの保護を受けていたがあるきっかけで逃亡しておりやがて二人は一緒に巨大な陰謀に立ち向かう、という話。主人公の立場を大きく変えることでシリーズのマンネリ化をうまく避けた感じ。息もつかせぬアクションとはこういう作品のことで最後は主人公たちが勝つと分かっていても続きが気になって一気に読んでしまう。こういう作品では往々にして主人公がスーパーマン過ぎて荒唐無稽になりがちなのだが主人公を適度にコテンパンにさせたり愚痴らせたりさせることでそのあたりも巧みに避けている。出世主義者で主人公たち工作員を毛嫌いしているにも関わらずいやいやCIA側の窓口をさせられている女性幹部もいい味を出していて本来殺伐とした物語にいいアクセントをつけている。やはり巧い作家。次作も楽しみでならない。

13日前

1793

読了できていないので本来コメントする資格ないのかもしれませんが…。 フランス革命でルイ十六世とマリー・アントワネットが処刑された年でこちらも前年に国王グスタフ三世が暗殺され政情不安な状況にある1793年のスウェーデンが舞台。湖で凄惨な状態の死体が発見され、結核で余命いくばくもない法律家と片腕の元軍人が警察の委託を受けて捜査にあたる、という話...なのだけどグロテスクさと汚い描写に耐えられずリタイア。誉田哲也とかが好きな人には向いているかもしれない。関係ないのだけど作家のナット・オ・ダーグという名字、ナイト・アンド・デイという意味らしくスウェーデンでも最も古い貴族の姓なんだそう。どうでもいいことだけど。

13日前

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そしてミランダを殺す

たまたま飛行機で隣になった男女。男はなんの気なしに妻の浮気について女に話してしまったのだが女に煽られる形で妻の殺害を目論むようになって、というのが導入部分。それが徐々におかしなことになってきて…という話。妻に浮気されている男、殺人を煽る女、妻、その浮気相手、刑事、と語り手を変えて展開していくストーリーだが話の捻れていき方がかなり気持ち悪く、読む人を選ぶ印象。当然ながら読後感もかなり悪く万人におすすめできるものではなかった。個人的にはどんどんスケール・アウトしていく感じが嫌いではなく面白かったのだけど。そして最後のオチの付け方が見事で嫌ミス好きな方にはおすすめできる作品でした(笑) ちょっとご都合主義的なところも気にはなったけれども…。

23日前

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みんな、忙しすぎませんかね?

ちょっと気になっている僧侶にして宗教学者の先生と仏教に造詣が深いお笑い芸人の対談本。「苦手な人」とか「死んだらどうなる」みたいなお題に対してまず一方が思うところを書き、それを受けてもう一方が同じく思うところを書く、という形式。脳が大きくなりすぎた人類は死後をはじめとする未知の領域や自然災害などの理不尽に対してなんらかの整理をする必要に迫られ、宗教と哲学を生み出したというのが個人的な理解。神や仏の有無で宗教と哲学、というふうに呼び名は変わるものの目指すところは同じと思っている。宗教は地理や風土、民族性によってバリエーションに富んでいて例えばマニュアル通りに従っていれば天国にいけるというものもあれば、既に罪は清算されていて救われる者も決まってしまっているというのもあるが、仏教はどちらかというとどうやって生きると良いか、みたいなところが中心というイメージがあってそれを裏付けられたような印象。なるほどこう考えたら気持ちが楽になるな、という作品。興味深い話が多く非常に面白かった。ずっと浄土信仰と輪廻転生はどう整理されているのか知りたかったのだけど整理なんかされていない、ということが分かったのも収穫。そんなことも知らなかったので少し仏教について学ぼうと思いました。

約1か月前

ザ・ボーダー 上

「犬の力」「ザ・カルテル」に続く三部作の最後。前の二作も同じくらいのボリュームでもはや大河小説の域。しかし前の二作も非常に面白かったので凄く楽しみにしていました。少しネタバレ気味なので申し訳ないのですが…。 本当は前の二作で完結させるつもりだったのだろうけどトランプ政権の誕生でこの三作目を書いたのではないか、と解説者が推測しているが自分もその意見に賛成。第一作はアメリカとメキシコの混血である主人公が若き麻薬取締官としてメキシコに赴任、ボクシングのプロモーターを目指す若き会計士と友人になり、そして会計士が一族に引き込まれる形で麻薬カルテルに入り台頭し主人公と不倶戴天の敵となり最後はアメリカにて逮捕されて終わる。第二作ではメキシコに移送された麻薬カルテルのボスがお約束のように脱走、麻薬カルテルから懸賞金をかけられて隠遁していた捜査官が再び任務に復帰、最後はカルテルのボスが死んで終わる。そしてこの第三作ではボス亡き後の後継者争いが発生、一方で麻薬取締局を辞めて隠遁していた捜査官が麻薬取締局長に抜擢される。混沌のメキシコより消費地の対策を、ということでアメリカ国内に目を向けたのだが…という話。アメリカ国内の捜査で巨額の麻薬マネーがある不動産会社に流れ込んでいることがわかったのだが社長の義理の父親で「国境に壁を作るなどと主張するマヌケ」がよりによって大統領になってしまい…という展開はもうほぼ名指しである人物のことを描いていて大丈夫なのかとすら思うほど。これはどう収束させるのかと疑問に思いつつ読みすすめたのだがそこは手練の作者、こう終わらせるのか、と唸らされました。とにかく凄い作品。これからも追い続けたい作家です。

約1か月前

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ニックス

話題になった短編小説を一作出した後は鳴かず飛ばずで今は大学で文学を教えている主人公のもとに、幼い頃に出奔して行方知れずとなっていた母親が大統領候補に石で襲いかかったという知らせが入って…というあらすじを見た瞬間に読みたくなったので手に取ってみた。母親のことには一切触れたくなかった売れない作家だが出版社から受け取ったアドバンスの返還を求める訴訟を起こすと脅されたので渋々、母親と接触し犯行に至る経緯をさがることになったのだが、という話。ベトナム戦争からイラク戦争、トランプの出現までを盛り込んでなおかつ地理的にはシカゴ、ニューヨークからノルウェーまで。いろいろ盛り込んだ結果700ページ超の大部になってしまっているけど破綻することなく実に読ませる。読み応えがあって面白かった。アメリカ文学が好きな人にはおすすめできます。

約2か月前

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宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源

是非はともかく現在の世界が欧米中心に成り立ってきたことは間違いなく、欧米はキリスト教社会であってその歴史の中で宗教改革は非常に大きな役割を果たしたと思うのだけど実はちゃんと理解できていないなと思ったので。7年もキリスト教系の学校に通っていたのにお恥ずかしい話ではあるけども…。というわけでタイトルとこの作者であればわかりやすいであろうという期待のもと。どちらかというと宗教改革に伴う欧州の歴史みたいなものに興味があったのですが本作は思想面での宗教改革の起こりについて、が主な内容。一般的に宗教改革はルターが始めたもの、という認識だと思うがルターより百年ほど前にチェコにおいて宗教改革のはしりのような論を唱えて最後は刑死したチェコのヤン・フスと思想上の彼の師に当たるイングランドのウィリクリフが説いた内容を元に筆者が考察を展開しているのだが…聖書はともかく両聖職者の引用がもってまわった表現が多く難解で手間取った。途中で筆者の要約だけ読めばよいのだと気がついたのだが…。世界史を選択していなかった(そもそも日本史と世界史って分ける必要があるのだろうか)ので宗教改革については「カトリックが腐敗しておりその状態を改めようとルターが声をあげて」という説明が印象にのこっているのだども言われてみると当時の欧州においては世俗の権力も握っていたカトリックの力は絶大で教皇は文字通り「神の代理人」だったわけでその誤りを指摘しようなどとは誰も思わなかっただろうしそう簡単にひとりの人間がはじめられることでもなかっただろう。今更ながらキリスト教とはいかなる宗教であるのか少し理解が進んだと思う。手こずったけども興味深く面白い内容だった。

約2か月前

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

ベストセラーの前作「サピエンスの歴史」があまりにも良かったので後編に位置づけられている本作も手にとってみた。内容はいろいろなところで取り上げられているがざっと言うと、人類(サピエンス)のこれまでの歩みをまとめたものが前作であり、今後の歩み述べたものが本作。人類はAIをはじめとするITのテクノロジーとバイオテクノロジーを使って新たな段階にアップグレードされる。これを筆者はサピエンスからデウスと呼んでいる。神をゴッドではなくデウス、としているところがミソで全能の存在ではなく、力を持っているがときに迷惑な存在にもなり得るギリシャ神話のそれのようなイメージだという。明るい未来を提示しているわけではなくむしろ一部のデウスのような存在とテクノロジーに取って代わられ社会に不要な存在が増えるどちらかというと暗いイメージの未来像である。個人的な感想ではあるが残念ながら概ね首肯できる内容でありこうならないためにどうすればよいか考えなければならない、と思った。 あとITに関わる端くれとしては民主主義もインターネットも分散しているからこそ成功した、という説明が非常に興味深かった。企業のシステムはまだまだ集中処理が中心ではあるけども徐々にクラウドやインターネットの技術を用いて分散されていくだろう、逆に集中処理で残るものは分散、オープンにする必要のないもの~勘定の処理であるとかそういうもの~であるから社会に影響を与えることはない、と考えると集中型で残っていきそう、かつ社会に影響を与えるものはSNSではないか、と。これだけは一部の人間がデータを独占して活用できる状態になっていてやり方によっては世論を操作できる状態になっているのではないか...とかそういうことを考えたりしました。 翻訳者の力もあるのでしょうけども難しく広範囲に渡るテーマを極めて分かりやすくテンポよく書かれていて売れるのも当然という印象。一度だけでは理解できたと思えないので前作含め再読したいと思う。時間と心にかなり余裕がある時に…。

約2か月前

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玉麒麟 羽州ぼろ鳶組

おそらく今一番乗ってる時代もの作家の出世作シリーズ。最新が出てるのでこれは一作前のやつ…と考えるとほんと多作というか作家のノリ具合が分かる。本作ではボロ鳶火消し組のナンバーツーで剣の達人ではあるが一見軽薄でいじられキャラの若者が主人公。都内でも有数の商家が押し込み強盗に入られ主人以下が殺され放火された現場から若者が商家の娘を連れて逃げるところが目撃される。その後行方をくらましてた若者だがボロ鳶は幕府から謹慎を命じられ身動きが取れない。本当に若者が罪を犯したのか〜シリーズの読者であれば何か事情があったのだろうとわかるのだが〜その事情は何か、またボロ鳶達が動けない中、若者を誰が助かるのか、江戸中の火消しと火付盗賊改が追う中、若者の逃亡がどうなるのか、というシリーズの中でも屈指のスリリングな展開が見事。期待を裏切らない面白さでした。

3か月前

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ランチ酒

タイトルに惹かれて手にとってみた。主人公は寝ずの番を行う「見守り屋」を生業としている女性。いずれもわけありの依頼人から寝ずの番を頼まれて…夜中に不在の家で子供やペット、ちょっと言動が怪しくなってる母親、などを見守る。いわば夜勤明けの楽しみはランチタイムに楽しむ酒。主人公には別れた夫に引き取られた娘がいて昼酒とともに娘のことを考えたり依頼人のことを考えたり…という組み立て。職業柄いろんな町でいろんなお店に行くのでまさに女性版「孤独のグルメ」といった趣。女性ということもあって井之頭五郎のようなドカ食いはしない反面、実にうまそうに酒と飯を味わうところが良い。出てくる街は武蔵小山・中目黒・丸の内・中野・阿倍野・御茶ノ水・新宿・十条・新丸子・秋葉原・代官山・房総半島・不動前・中野坂上…これはあそこかな、というお店は少しで、ここどこだというお店が殆どだったので探して主人公よろしく昼酒を楽しんでみるのも良いかもしれない。面白かった。

3か月前

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