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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

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コメントした本 ページ 2

夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組

今、一番はまっているシリーズ。楽しみが無くなってしまうのが悲しいのでなるべく読むのを引き伸ばしたいのだけど我慢できずにまた手を出してしまった。火消しを主人公にしたこのシリーズ、これまでいろんな火消したちが登場したが本作で登場するのは吉原火消。遊郭が私的に雇っている火消なのだが遊郭は家事の間だけ吉原の外で営業できて免税もされるということで微妙な立場にあるという設定。そこに主人公たちの一人が深くからんで、という話。最初に助けた花魁と最後に結ばれるような展開だったらいいのに、と思っていたのだけれどさすがにそこまで荒唐無稽でないところもこのシリーズの魅力。本作もとても楽しく読ませてもらいました。

2か月前

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おじいさんに聞いた話

動物を主人公にした作品で母国オランダではかなりの人気を誇る作家とのこと。「ハリネズミの願い」という作品が日本でも売れたらしくその関連で翻訳されたらしい。作家自身が祖父から聞いた話をまとめたもの、という形態だが実際には「いかにも祖父が語りそうだった物語」という完全な創作らしい。作家自身にもボルシェビキを嫌って故郷サンクトペテルブルクからオランダに逃れた祖父が実際にいたらしく。ロシアでは何一つまともなことは起こらないという感じのおかしくもどこか物悲しい物語の数々。どんよりした感じが無くて悲しくて辛い話ばかりだけどさらっと読めてしまう。これはいい作品でした。

2か月前

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とせい

キャリアの警察署長シリーズが気に入ってる作家の別シリーズ。好きなシリーズの新作がなかなか出ないので他のものを読んで場つなぎにしようという思い。そしてタイトルと表紙から反社会勢力をテーマにした作品だと分かったので...浅田次郎の最高傑作がいまだに「きんぴか」だと思っていることもあって楽しみに読んでみた。独立系の弱小やくざの組長が倒産しかけの出版社の社長に収まってしまいそれを元にいろんなドタバタがあるのだけど最後は経営を立て直して去っていく、という読む前からだいたい予想のつく話。唐獅子株式会社というのもあったな...。完全に荒唐無稽な設定なんだけども適度にリアリティも盛り込んであってなかなか面白かった。

3か月前

献灯使

翻訳ものが好きなこともあって知らない作家さんだったのだが友達が薦めてくれたので手にとってみました。ジャンル分けするとすればSFになるのかな。舞台はなんらかの災害によって鎖国状態になっている日本。100歳を超えた老人が頑健で死なず若い人たちは直立歩行もままならないくらい弱っている。外来語やインターネットは禁止され首都東京は壊滅状態。日本国内の移動すらままならないそういう未来。読み進んでいくうちに災害とは原子力発電所の大事故で鎖国状態になっているのは放射能を恐れた諸外国からなかば鎖国状態に追い込まれているのだとわかる。そんな東京近郊で暮らす元作家の老人とその曾孫を中心とした物語。ファナティックな原子力反対にはげんなりするけどもこういう怖いやり方があるんだなと思った。また欧米の同じジャンル...滅亡ものとでも言おうか、がだいたいマッドマックスや北斗の拳的な暴力的な世界になるのに比べて我が国のそれは静謐な感じになるのも興味深い。かなり楽しく読みました。

3か月前

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泥棒はスプーンを数える

巨匠ローレンス・ブロックは複数のシリーズを持っているがこれはその中でも一番軽妙なもの。主人公は言わば本格派の泥棒。不在の家に忍び込んで目当てのものだけ盗み出していくという。長い稼業の中でいろいろあってマンハッタンにビルとその中にある書店を手に入れて猫と書店で過ごし、昼は近所でトリマーをやっているレズビアンの友人とテイクアウトのご飯を一緒に食べ、たまに夜は歩いていける馴染みのバーに二人で行くという優雅な生活を送っている。本作では依頼を受けてフィッジェラルドの生原稿を盗む話と、金で買える最高のお巡りと主人公が呼ぶ警官から協力依頼された老女の不審死の調査が並行して進み最後は、という話。まぁ正直なところミステリというよりスタイル小説という感じで好き嫌いは分かれる感じ。特段の盛り上がりも無いがこれがシリーズ最終作だとか。アル中探偵スカダーと殺し屋ケラーのシリーズも終わったみたいだし…かなり寂しいがもう作家引退ってことなんだろうな。

3か月前

オープン・シティ

ナイジェリア出身の作家の作品。アフリカ出身の作家の作品はあまり読んだことが無く、ゼーバルトの再来という評価も興味深かったので試しに手にとってみた。主要な舞台はアフリカではなくマンハッタン。知らずに手に取ったらエッセイか日記と思ったかも知れない。ある程度作家自身のバックグラウンドを反映したと思われる主人公はナイジェリア出身だがアメリカの大学を出てニューヨークで精神科医をしている。彼が特にあてもなく散歩しながら出会う人達との会話や頭に浮かぶ追想が綴られた形を取っている。ドイツ人との混血児として育ったナイジェリアのことや祖母を捜してさまよったベルギーのこと、そしてニューヨークでの出合いや自らの過去を責める声など。とりとめのない感じになりがちな形式ながら破綻もなくまとまっているのはさすが。

3か月前

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殺意

生きてる間は全く評価されなかったノアール界の大物。最近まで存在を知らなかったのだけど一作読んでみたら面白かったのでまた手にとってみた。これはかなり後期の作品らしくちょっと小慣れてる感があって粗削りの魅力は薄いけれど楽しい作品だった。海辺の街が舞台。ゴシップ好きで街の鼻つまみ者の女を巡る話。街には夫も含めてこの女を殺したいと思っている者だらけ。検察官や顧問弁護士までが殺意を持っているという状態。最後に殺されるわけだけど果たして殺意を持ってる人間のうち誰が、というフーダニット。個々の登場人物の独白の連続で語られていくストーリーが斬新で戦前の作品とは思えない。死ぬ間際に「俺は約10年後に有名になるから原稿は取っておけ」と言い遺したというエピソードもかっこいいこの作家。他の作品もポツポツ読んでいきたいと思います。

3か月前

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暗殺者の潜入〔上〕

暗殺者グレイマンシリーズの邦訳最新。今、一番優れたアクション・シリーズと思うのだけど本作もまだ勢いを保っている。元CIAの軍事組織で最高級の腕前とされていた主人公、身に覚えのない理由でCIAから「見つけ次第射殺」とされていたのも昔の話、今はCIAからも発注を受けるフリーランスの立場で活動している。本作ではシリアの反政府組織からフランスに来ているモデルを拉致してほしいという依頼を受ける。このモデルがシリアの大統領の愛人で、内戦を止め得る情報を持っているからということだったのだが…拉致してみるとシリアに大統領との間に産まれた子供を残してきているということが分かってしまう。仕方なく民間軍事会社の戦闘員に偽装して内戦中のシリアに渡り、子供と子守の二人を救い出すという困難に挑む、という話。冒頭から主人公がイスラム国に処刑されつつある捕虜の状態で現れる作品。ゴルゴ13の小説版と思って貰えばだいたい間違いないのだが、本作はシリア内戦という現在進行形の危機を舞台に名前こそ変えてあるが実在のシリア大統領夫妻を彷彿とさせる人物も出てきてよりリアルな印象。強力な悪役も出てきて今後もますます目が離せないシリーズ。

4か月前

決定版 天ぷらにソースをかけますか?: ニッポン食文化の境界線

タイトルに惹かれて。日本における食べ物の嗜好の分布をネットを使って調査し考察を加えたもの。じつに面白いしとても重要な作品とも思う。彼我の相違について、「違うからこそ面白い」と「違うからおかしい」という捉え方の違いには言葉にするより大きな差があると思う。少なくとも後者の立場を取る人間にはなりたくない。さて、本作における調査項目は以下のとおり。これが想像以上の違いがあって面白い。皆さんはさてどうでしょう?(笑) ・天ぷらにソースをかけますか、またはかけていたことがありますか。 ・紅ショウガの天ぷらを知ってますか。 ・小豆やお餅が入った甘い食べ物をなんと呼びますか。 ・中華まんには何かつけますか。 ・呼び方は肉まんですか、豚まんですか。 ・鉄板で焼くコナモンが好きですか。 ・釣鐘型のたこ焼きはありますか。 ・お肉とは牛肉、豚肉、それとも? ・豆の炊き込みご飯はありますか。 ・いわゆる「冷し中華」を何と呼びますか。 ・それにマヨネーズをつけますか。 ・甘納豆が入った甘い赤飯を食べる地域ですか。 ・茶碗蒸しに砂糖を入れますか。 ・茶碗蒸しに栗の甘露煮は入りますか。 ・卵焼きは砂糖入りで甘いものですか、出したっぷりで甘くないですか。 ・味噌汁に唐辛子など辛いものを入れますか。 ・ニラの味噌汁は普通にありますか。 ・漬物を煮ますか。 ・福神漬けをなんと読みますか。 ・カレーライスに卵を乗せる場合、生卵ですか。 ・住んでる地域にカレー蕎麦はありますか。 ・納豆は好きですか。 ・納豆に砂糖を入れますか。 ・正月に食べる「年取り魚」は鮭ですか鰤ですか。 後半は嗜好の境界線を体感するために東海道を歩いて京都まで行ったり、糸魚川沿に新潟から静岡まで行ったりとにかく労作。素晴らしかった。

4か月前

天皇はなぜ紙幣に描かれないのか: 教科書が教えてくれない日本史の謎30

タイトルに惹かれて。有名な先生なのかな…自分は存じあげなかったけれど…の歴史エッセイ集。新書とかで日本史ものが流行ってたのでその流れかもしれない。タイトルになった話もさることながら、お寺の落書きにまつわる話とか、古代ではなく近世の木簡の話とか、義経ジンギスカン説とか、騎馬民族征服説とか、よく言えば縦横無尽に、悪くいうとまとまりなく(笑)書かれた話がどれも興味深く楽しかった。役に立つかどうかは別として…雑学好きの人にはおすすめかな。

4か月前

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

アウシュビッツの医者でガス室送りの選別をし、囚人達を生体実験でいわば拷問して殺したナチスの医者ヨーゼフ・メンゲレ。敗戦と共に親ナチスだったペロンのアルゼンチンに逃亡した彼がブラジルの海岸で心臓発作で亡くなるまで、をあくまで小説として描いた作品。同じ南米に逃げた戦犯でもイスラエルに拉致され処刑されたアイヒマンと違って最後まで逃げおおせた逃亡生活が追う者達の立場も押さえながらリアルに描かれていてさながらノンフィクションのようでもある。道を踏み外した医者の生家が今では消滅してしまったものの世界的な農機具メーカーであり比較的潤沢な資金援助が得られたこと、また追う側の中心であったイスラエルも中東戦争などより優先度が高い事案が生じたことなどもありあと一歩まで迫られながらも逃げおおせた逃亡生活は追手に怯えながらの惨めなものであったと描かれているのだけども果たしてそのようないわば同情的な筆致が必要だったのか、ベートーベンを口ずさみながら人の生き死にを決めていたという純然たる悪に対してはもっと過酷な運命があっても良かったのでは、などなど考えさせられる作品でした。読み物としてはかなり面白かった。

2か月前

冬の物語

小洒落た表紙とタイトルだったので手に取ってみました。最近の作家だと勝手に思っていたのだけどこの短編集は作家の母国デンマークがナチスドイツに占領されている時に書かれたものだとか。デンマークの旧家出身でスェーデンの男爵と結婚してアフリカで農場を経営していたという作者。農場の経営が破綻し男爵とも離婚して帰国したデンマークで最初は男性名で小説を書いてたらしい。今ではアンデルセンと並び称される国民的作家なのだそう。その作家自身が一番気に入っていたという本作、プロイセンの横暴な軍人が登場するものまで収録されていてよくナチスの検閲に引っかからなかったな、という感じ。その作品でも単に敵方の軍人だけが悪く描かれていないところが素晴らしい。第一遍こそよくできた物語、という感じだったけども後半に向かってどんどんシリアスで切ない物語になっていく印象。どれも優れた作品だけど個人的には特に「ペーターとローサ」に感銘を受けた。悲しくも美しいラストがなんとも言えず印象深い。素晴らしい作品だと思いました。

2か月前

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バースデイ・ストーリーズ

近年は翻訳家としての仕事のほうが好きな作家がまとめたアンソロジー。これ読んだことあったかな、と思ったので手にとってた誕生日をテーマにした短編集。収録されている作家はラッセル・バンクス、デニス・ジョンソン、ウィリアム・トレヴァー、ダニエル・ライオンズ、リンダ・セクソン、ポール・セロー、デイヴィッド・フォスター・ウォレス、イーサン・ケイニン、アンドレア・リー、レイモンド・カーヴァー、クレア・キーガン、ルイス・ロビンソンに翻訳家自身の作品が一つの全13編。半分くらい知らない読んだことのない作家の作品でこういうアンソロジーって新たな才能を知ることができてよいです。作家というものはひねくれているのか誕生日というテーマで幸福感の溢れたハッピーエンディングな作品は皆無。ダークでそれでいて味わい深い作品ばかりで素晴らしかった。そして最後の作家自身の作品でやっと大昔に読んだことがあることに気がついた(笑)

3か月前

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菩薩花 羽州ぼろ鳶組

今一番気に入ってる時代物のシリーズ。火消って本当にいいところに目をつけたな、とつくずく思う。主人公は大名家の火消し〜大名と旗本と町民の大雑把に三種の火消しがいた…さらに守備範囲とかでいろいろ分かれていたみたいで〜だけど火消しであれば身分の違いもある程度超越できるし大名家の火消しであれば幕府の動きにもある程度関与できたりする。本作ではこれも本当にあったのか分からないけども火消番付がテーマ。小藩でも番付が高い火消しを抱えている家は知名度も上がり、産物を売る時も有利だし取り潰しされ難い、ということで番付を上げなければ経費を減らす、と申し渡されたある藩の火消しと、火災の孤児を育てて、地元で菩薩と崇められている火消しの二人が登場する。番付を上げる目的で自作自演の火事を起こしている火消しがいるのでは無いか、ということに気がついた瓦版の筆者が行方不明になって、という話。謎解きや火災シーンの迫力、火消し同士の連帯などなど、本作も凄く面白かった。次作がすぐにでも読みたい。

3か月前

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メモリー・ウォール

少し前に読んだ「全ての見えない光」という作品が良かったので短編集も手に取ってみた。「記憶」をテーマに書かれた短編が6編。作家は想像力をどこまで発揮できるか試すかのようにいろんな舞台設定で物語を作っている。表題作は少しSF仕立てで、記憶を自由に外部保管、再生できる世界の物語、他にも不妊治療を扱ったもの、ダムに沈む中国の村の話、両親の相次ぐ死でアメリカからリトアニアに渡った少女の話、第三帝国のハンブルグから奇跡的にアメリカに逃れたユダヤの少女の物語などなどどれも読み応えのある作品ばかり。他の作品も読んでみたいと思った。

3か月前

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ロスト・シティZ~探検史上、最大の謎を追え

アメリカ原住民連続殺人のノンフィクションが良かった作家のデビュー作を手に取ってみた。ヴィクトリア時代に世界的に有名だったという探検家~顕著なランドマークなどの発見がないので忘れられているらしい~パーシー・フォーセットの行方不明の謎を追求した一作。探検家目線の章と、作者自身の動きの章がほぼ交互に出てくる構成。アマゾンのどこかに古代文明の大きな都市跡があるといういわゆるエル・ドラドの伝説を追ってジャングルで行方不明となった探検家はジャングルでの過酷な生活にも耐える頑健さと先住民の文化を尊重する公正な心を持った傑出した人物だったらしい。もっとも「できない人」に対しての許容ができず同時代人からの評価は二分されるようだが...。この時代の探検家の殆どがありあまる富に物を言わせるタイプだったのに比して没落貴族の出身で軍人だった探検家~第一次大戦では砲兵隊中佐として参戦、ソンムの戦いにも加わっている~は生涯に渡って探検への資金集めに苦労し、最後は息子と息子の友人の三人でジャングルに消えた。アマゾンのような過酷過ぎる環境では高度な文明は発達しないというのがほぼ定説になるまでに彼らの捜索、救助の目的で命を落とした人は100人を超えるという。しかし初期の征服者達がジャングルの奥で大都市を見たという話を残しているのも事実らしく…作者も探検家のことを調べるうちに自らもジャングルに入りそこで新たな説に出合ってエル・ドラドの正体に行き着く、という構成がかなりスリリングで引き込まれた。

3か月前

イラクサ

短編の女王とも称される作者。以前読んだものどれも素晴らしくじっくり味わいたいので手に取るのを控えていたのだがたまらず読んでしまった。女性の作家にこういう表現が良いのかわからないけども骨太かつ繊細な作品が9編。短編集の原題は「Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage」という。このタイトル作の邦題が「花占い」。 とにかくこの人の短編、これまで駄作があった記憶がない。強いていうとこういう邦題のつけ方くらいかな…不満があるのは。舞台はだいたいカナダの片田舎、設定が突拍子もないわけでもなく大事件が起こるわけでもなく…なのにこれだけドラマを感じさせる短編が書ける人も珍しいのでは。本作ももちろん全編が素晴らしかった。ノーベル賞受賞後しばらくして断筆宣言してしまった作者。まだ翻訳されていない作品や読んでない作品がいくつかあるのが救い。まだ楽しみたいと思います。

4か月前

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花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

久しぶりにここまで酷い話を読んだ。ノンフィクションであることが恨めしいくらい。 アメリカ先住民にオセージ族という部族がいて、他の先住民と同じく白人に住んでた土地を追い払われ荒れ果てたオクラホマの片田舎に居住地を与えられる。彼らが他の部族と異なったのはその居住地〜ちょっといいところだとまた白人が奪いにくるからと自らわざわざ僻地を選んだ〜から大量の石油が出たこと。さすがの白人達も気が引けたのかそこからも更に追い払うことはせず定期的に国から金を払うことにした、というのが物語の前提。そのオセージ族で謎の連続殺人が起きる。インディアンが何人死のうが構わないという風潮の中、FBIを立ち上げようとしていたフーヴァーがこの事件に目をつけて優秀な捜査員を送り込み、という話。ちょっとネタバレになってしまうのだけどオイルマネーを奪おうとあの手この手で犯罪を犯す連中の悪辣さにはもはや驚きしかなく、人間はここまで悪くなれるのか、という印象。フーヴァーのクソ野郎ぶりも聞きしに勝る感じで読んでて本当に切なくなる。しかもエピローグの章で更に打ちのめされて、という構成。ものすごく嫌な話だけど読み物としてはかなり面白かった。嫌な話でも平気、という人にはおすすめします。改めていうけど…これがノンフィクションとは…。

4か月前

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鬼煙管 羽州ぼろ鳶組

個人的に今、一番ハマっている時代もの娯楽作品。楽しみを後回しにできない弱い人間なので次々に手に取ってしまう(笑) 本作では舞台が京都に設定されており京都町奉行の長谷川平蔵(あの鬼平の父親)から支援要請を受けた主人公たち江戸の大名火消しの主要メンバーが慣れない京都で連続放火魔に立ち向かう、という話。朝廷と幕府のある種の争いが背景に設定されておりスケールの大きな事件が描かれている。四作目の本作でもテンションは全く落ちておらず見事な出来。はやくも次作が読みたくてたまらない。お見事です。

4か月前

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