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Toru Omae

欧米ミステリを中心に読んでいます

欧米ミステリを中心に読んでいます。 自分のは書評とかレビューみたいな大それたもんではなくて「これ面白かったから読んでみて!」レベルの感想文ですが…よろしくお願いします。

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コメントした本 ページ 2

NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生

職場を離れたら仕事のことはあまり考えたくないのでビジネス書とか業界(IT系)に関する本はあまり読みたくないのだけどもこれは取り上げているテーマがあまりにも面白そうだったので手に取ってみた。もはやこれなしでは生活に支障をきたすのでは、とさえ思えるGoogle Map(そういえばGoogleがなかったのにどうやって卒論書いたんだろう、と思うときがある…。)がどのように誕生したのか、についての話。作者は元々地図サービスのベンチャーでGoogle Mapの元になったサービスの生みの親であるジョン・ハンケの大学時代の友人。ベンチャーにも設立間もない頃から参加し、サービスがGoogleに買収されるとGoogle Mapのマーケティングマネージャーとして活躍し、今はジョン・ハンケが新たに設立したナイアンテック(そう、あのポケモンGoの!)に移っているという。物語は大きく前半と後半に分かれていて前半がベンチャーの立ち上げ、後半がGoogleに買収されてGoogle EarthとなりGoogle mapに発展するまで、が描かれている。前半は資金調達に悩み時に給与も返上して必死で働くベンチャーの創設話が生き生きと描かれていて楽しくなる。後半はGoogleという巨大企業に入ったとまどいや驚き、そして社内政治などがこちらはちょっとオブラートに包んだ感じで描かれている。素晴らしく成功したベンチャーの話だから悲壮感はなく前半の苦労話も大したものだと思いつつ楽しく読める。自分を金持ちにしてくれた恩義もあるのだろうけどGoogleに関しては好意的で社内政治のドロドロも「本当はこんなもんじゃなかったんだろうな」と思いつつ楽しく読める、といった感じ。分かりやすく書かれているからITに詳しくなくても全然楽しく読めると思います。しかしGoogle mapのデータが本書が書かれた時点で25ペタバイトで更に日々増え続けているとか...いやいや凄いです。非常に面白かった。

3か月前

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金剛の塔

西暦578年、飛鳥時代の創業という世界最古の会社である金剛組の歴史を小説仕立てにしたもの。冒頭、聖徳太子の声が現代人の耳に届いたりしていたのでファンタジー仕立てだと嫌だな、と正直なところ思ったのだがそれは杞憂だった。流石に手練の作者だけあって寺社建築のために百済から渡ってきた創業者の話から、戦国時代に寺が焼かれてしまう話など過去の要所要所を経て現代の話に至るところを荒唐無稽にならずまとめてある。高温多湿な上に地震の多いこの国でいかにして何百年も倒れない五重塔をたててそれを維持してきたのか、ただ単に建てたときの話でなく、維持してきたところも網羅してスカイツリーの構造にも繋がる技術なのだ、ということまで網羅しようと思うとこの形態しかなかったのかも知れない。時空を超えて現れ聖徳太子の声を伝える木札とスカイツリーのストラップ、というものが登場し重要な役目を果たすことに違和感を持たれない方にはおすすめできると思います。

3か月前

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逆転の大戦争史

なんとなくタイトルから「いろんな戦争のことが書かれた本なのかな」くらいの軽い興味で手にとってみたのだがとんでもない誤解。かなり重要な作品だった。ちゃんと理解できているか不安なのだが…その昔、世界にとって戦争とはあくまで外交の延長にあるものでつまり合法な行為であった。どちらが正しいか裁けるものがいない以上、当事者同士で話をつけるしかなく話で無理であれば力でかたをつけるしかない、ということ。強者による弱者の征服もそのような文脈の中では正当な行為とされた。このルール(旧世界秩序)においては当事者以外は公平な立場を維持する、つまりどちらにも味方しないがどちらとも交易を行う、ことが求められていた。このシステムが原因で第一次世界大戦が起こり、その反省から「戦争は違法である」という取り決めがなされた。これが今ではほとんど忘れられているパリ不戦条約だがこれには違反者を戒める手段がなく、日本、ドイツ、イタリアの暴力を止める手段が違法と皆で取り決めた戦争しか無かった。この第二次大戦の反省も踏まえて考えられたのが今の新生活秩序であってその結果、征服戦争のようなものは起こっていない…ということが説明されている。「暴力の人類史」で説明されている暴力の減少には国際法の整備というシステムも貢献している、ということが分かる。第二次大戦の対立軸がなんだったのか、なぜあのような展開になったのか、また大戦後多くの植民地が開放され民族自決が台頭してきたのか、という大きな流れが「こういうことだったのか」と理解できた気がする。恥ずかしながらドイツとイタリアの憲法にも日本の九条と同じ条項が入っている、ということも知らなかったのでかなり新鮮に読めた。イスラム原理主義の台頭の意味やトランプのアメリカの振舞いがなぜ危険なのか等々、現在進行系の世界のことも説明されていてかなり興味深く読めた。非常に良かったのだが内容を踏まえて邦題を見るとかなりの違和感がある。原題「The Internationalists: How a Radical Plan to Outlaw War Remade the World」のままだと日本向けには不適切というのも分かるのだがこの素晴らしい内容をもっと的確に伝える術がなかったのか...とそこだけは残念。とにかく素晴らしかった。

3か月前

タタール人の砂漠

イタリア文学の鬼才といわれ20世紀幻想文学の世界的古典と言われる本作。SFとかファンタジーの類がそんなに得意ではないので手が出なかったのだけどパラっと見たところそんなに幻想的でもなさそうだったので手に取ってみた。国境線の砦に配属された新任の将校。国境の向こうにはタタール人の砂漠と称される砂漠が広がっているだけ。およそ敵の来襲などは想定できそうにない環境で目的のよく分からないパトロールを日々続けていくうちに…という話。不条理劇ということだけどこれって現実に自分たちが直面してる状況と殆ど変わらないのでは…という気がした。あまりにも悲しいラストが印象的。良い作品でした。

3か月前

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倒壊する巨塔(上)

これも内容が重たいはずなのでなかなか手が出なかったのだが…とある本でこの作品に言及されていて読んでみようかということで。言わずとしれた2001年9月11日のアメリカ同時テロ事件についてニューヨーカーのスタッフライターである著者が五年を費やし膨大なインタビューをもとになぜこの事件が起こったのか、に迫った作品。途中何度か掲載したとはいえライターに5年間も著作に専念させる、という辺りが一流誌の一流誌たる所以なんだろうな…。先入観ではいわゆる9.11の準備段階からテロの詳細、という感じだろうかと思っていたのだが良い意味で裏切られたのはほぼ半分を費やしていわゆる「イスラム原理主義」がどのような背景で生まれ組織化されていったのかということを掘り下げていること。イスラム原理主義の大きな流れからビンラディン、ザワヒリの二人がアルカイダをどのように立ち上げていったのか、についても人間中心の描かれ方をしておりいわゆる狂信者ではなく普通に家庭を持っていて富裕層でもあった二人の姿が描かれている。一方、標的となったアメリカ側はテロ対策捜査官のオニールという個性的な人物を中心にテロといかに戦いなぜ9.11を防げなかったのか、ということがこちらも人間中心に描かれている。あのツインタワーの惨劇は本当に作品の最後に出てくるだけでそこに向かって大きな流れが収斂されていくところが見事。イスラム原理主義とは何か?ということを学ぶのにも役立った。数年前にニューヨークに行った際、グランド・ゼロに行ってみたのだがこれを読んでからだとまた見方が違ったかもしれない。今更ですがピューリッツァー受賞も文句なしの優れた作品でした。

4か月前

ガルヴェイアスの犬

今年の日本翻訳大賞受賞作品ということで手にとってみた。ポルトガルの作家の作品は初めてかもしれない。タイトルのガルヴェイアスというのはポルトガルに実在する村で作家の生まれ故郷らしい。ある日この村に隕石と思われる巨大な物体が落ちてきて、という出だしなのだがその物体を巡る物語が語られるわけでは全くなく、犬もほとんど出てこない、という作品。落ちてきた物体を折々意識しつつも大勢の村人達のエピソードというか小さい物語が様々に描かれてゆく。短編集というわけでもなく各々の物語はつながっているようで切れていたり、とかなり独特な作風。なんとなく気になる物語があったりするので例えばいくつかをピックアップして中長編にしても面白いのではないか、と思った。恐らく読み返すたびに違う印象を受けるであろう面白さがありました。

4か月前

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スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943

前からこの戦いには興味はあったのだが内容が重たいはずなのでなかなか手が出なかったのだが...ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンが愛読書として挙げていたので手にとってみました。独ソ戦の趨勢を決め、第二次大戦全体にも大きな影響を与えたスターリングラード攻防戦。両軍合わせて200万人以上が戦死、60万人いたスターリングラードの人口は攻防戦後1万人を割っていたという凄まじい戦い。しかもこの中にはドイツが進軍してくる途中で略奪を働いたりして犠牲にした民間人の犠牲者は含まれていない。元々なぜこの都市を巡ってそこまでの死闘を繰り広げたのか、が個人的には謎だった~モスクワやレニングラードなら分かるけども地味な街だし~のだがカフカス地方の油田を占領したかったヒトラーがその玄関口でありスターリンの名を冠したこの街の獲得に意欲を燃やしたこととあくまで街の死守にこだわったスターリンの意地の結果だということが分かる。カフカス地方を攻略したければ両軍ともに別のやり方があっただろうしここまでの犠牲を出す必要もなかったはず。それ故に全体主義と独裁制の愚かさがこれでもかと言わんばかりに伝わってくる。作者はイギリス人だからか独ソ双方をそれぞれ冷静かつ厳しい目で見ている。捕虜の過酷な運命などは目を背けたくなるし、守るべき住民がそばにいたほうが兵士も力を発揮する、と民間人の避難を許さなかったスターリンや、軍に玉砕を求めるヒトラーなどの異常な話は読んでいて苦しくなるほどだけどそれでも読み応えがありました。たしかに凄い作品。

4か月前

一発屋芸人列伝

お笑いに興味を持つ者としてとても気になるテーマの作品なので手にとってみた。一世を風靡し、やがて活動が地味になっていったお笑い芸人たちの今を同じ立場の芸人である髭男爵の山田ルイ53世が取材しまとめたもの。取り上げられている芸人はレイザーラモンHG、コウメ太夫、テツ and トモ、ジョイマン、ムーディ勝山、天津・木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、キンタロー、髭男爵。テレビでよくある「あの人は今」みたいな感じになっていないのは興味半分や面白半分では無くて自分も同じ境遇ということもあり取材対象に愛情を持っているからだろう。芸人であるからには売れたいわけでそれをどうやって達成したのか、維持できなかったのは何故か、仕事が減った現状にどうやって折り合いをつけているのか…当たり前だけどこれが各自各様でかなり興味深い。失礼ながら作者の鋭い視点と文才にもびっくり。かなり面白かったです。

4か月前

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狐花火 羽州ぼろ鳶組

もしかしたら今一番面白い時代小説かもしれないこのシリーズの七作目。不幸な事故から凄腕の放火魔になった天才花火職人。主人公たちの活躍で火刑に処されたはずの放火魔の手口を思わせる放火が相次いで、という話。正直なところストーリーには少しマンネリを感じなくもなかったがそれでも読ませる力はさすが。主人公とその周辺の花形火消たちが一同に会して難しい火事の消火にあたるシーンがすごい迫力でもしかしたらストーリーは二の次でこの凄い消火シーンがとにかく書きたかったのかな、とも思った。面白かった。

5か月前

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タコの心身問題

タイトルで気がつくべきだったのだが...てっきり生物学者がタコの生態を面白おかしく紹介してくれる内容だと思っていたのだけど作者は哲学者にして熟練のダイバーだという。海の底で出会ったタコの振る舞いに興味を持ち観察と研究を行うのだがそこは流石に哲学者、タコの意識や心の問題についての洞察が中心となった内容。ところどころ難解でさらっと読める感じではありません。しかしタコという生物は面白い。こんなことが知れ渡るとタコも食べるなとか欧米人が言い出さないか心配だが…タコというのはああ見えて高い知力を持っていて好奇心も強く人間のことも見分けるし向こうから手を延ばしてきて触ろうとしたり水槽の中から気に食わない奴に水をかけたりするらしい。頭に大きな中央処理装置が一つあってそれが手足に殆どの命令を下す我々哺乳類と違ってタコの脳というか大きな神経の塊は分散されて八本の手にもあり味覚なども手で感じ取れるのだそうだ。しかもそれだけ高度に進化しているくせにおおかたのタコの寿命はほぼ二年くらいしかないらしい。我々人類とは全く異なる進化を遂げたタコを観察しながら意識とはなにか、言語やそれに替わるコミュニケーションの手段はなにか、寿命とはどういうものか、などなど哲学者らしい考察が為されていて興味深かった。手軽に読める感じではないけども量も手頃だし面白い作品でした。これはおすすめ。

3か月前

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金座

ずっと読み続けている歴史もの。もう26冊目とか。時代ものって演歌と同じであたると息が長く売れますね。将軍の毒見役が実は凄腕の刺客で表立って裁けない悪を成敗する、というシリーズ。こんなに悪人ばっかりでまともに政権運営できてたのか、という気もするが...。長続きさせるために主人公の家のルーツとか出生の秘密とかが織り込んであって飽きさせない。許せない悪が今回もばっさばっさ斬られるのだけどここ最近もやもやしていた背景の謎が解けてすっきりしたのも良かった。

3か月前

動的平衡ダイアローグ 世界観のパラダイムシフト

実はこの先生の他の本を読んでみて挫折したことがあってなかなか手が出なかったのだけど気にはなっていたので思い切って手にとってみました。すごく大雑把に言うと…例えば分子レベルで言うと我々の体は一定の期間ですっかり入れ替わってしまっている、実体であり固定された存在に見えて常に動いており変化している、これを動的平衡と作者は呼んでおりそれに共鳴した人達との対談集。会話ベースなので分かりやすくとっつきやすくて良かった。文学、美術、建築、宗教など各界から万遍なく識者が集められていて非常に興味深い話ばかり。すごく面白かった。個人的に、地球上の分子の数って変わらなくて人類が増えたら他の生物が減る、とかそういう関係なんじゃないか、とか素人ながら思っていたのでその辺も追求してみたくてもう少し頑張って他の本も読んでみようと思いました。それにしても先月の俺だった分子が今はどっかで別の形…例えばアルゼンチンで雑草になってるとか、だったらすごく面白いな、とか思ったんだけどそもそも解釈が間違ってるのかな(笑)

3か月前

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20世紀ラテンアメリカ短篇選

大昔、ガルシア・マルケスが流行った頃に案の定ハマってそれ以来ラテンアメリカの文学はずっと気になっていて定期的に手にとって見るのだけども短編は読んだことはあまりないな、と思ったので手にとって見た。収録されている作家は16名。お恥ずかしながら知ってる作家はイサベル・アジェンデ、バルガス=リョサ、ガルシア・マルケスの三人だけだった…。なんとなくラテンアメリカの文学には凄く洗練されている部分と野生というか野蛮というか凄く暴力的な部分と土着の伝統みたいなものとが混ざっりあっていてそこが好きなのだけどうまくそれらがバランス取れている作品もあれば、どこか一箇所が突出していてそれが面白いのもあれば、ちょっと前衛過ぎてこれは??みたいなのもありこういうアンソロジーの醍醐味だなと。やはりラテンアメリカ文学、面白い。

4か月前

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帰還

ピューリッツァー受賞作ということで手にとってみた。ずっと外国で暮らしていた作家がカダフィ政権の崩壊に伴って祖国リビアに帰国するという話。作者の父親は元軍人でカダフィがクーデターで政権を獲った際に外交官になり~カダフィはライバルになりそうな軍人を外交官にして一種の国外追放にしたらしい~その後、職を辞して帰国、貿易商として成功するとその資金をもって反政府活動を行った結果、亡命せざるをえなくなった。作者が大学生の頃、その父親が亡命先のエジプトで拉致され行方不明となってしまう。父親の行方を追求するキャンペーンを行っていた作家にとってはただの帰国ではいのだ。裕福だけれども常にリビアからの刺客のことを意識しなければならなかった子供時代の話と帰国してから大勢の親類達~その中には父親に連座して長く収監されていた者が何人かいる~との交流が折々にリビアの歴史なども交えて描かれている。人生の大半を国外で暮らし、欧米で作家として成功、欧米人のパートナーまでいる身でも自分たちの一族に過酷な運命を課した祖国への思いはあるものなのか、と思った。父親の行方を追求するキャンペーンで当時のリビア政権とも付き合いのあったロスチャイルドから紹介されたカダフィの穏健派の次男とのかけひきは特に興味深かった。いろいろ考えさせられる作品でした。

4か月前

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

興味深い内容ではあるけれどややこしい話は面倒だなと思ってなかなか手が出なかった本。たまたまきっかけがあり同じ作者の代替医療についての作品を読んでみたところ分かりやすい内容だったのでこれも手にとってみました。かなりの昔から文書による意思疎通に於いて第三者に内容を見られないようにする取り組みが行われていたことに驚いた。暗号の作成と解読、そして古代文明の文字をいかに解読したかの歴史が数学が苦手な自分のようなものにも分かりやすく説明されていてやはり上手い書き手だなと改めて感心しました。特に戦争における暗号解読者達の活躍やナヴァホ族の通信兵の話などは興味深かった。そして何よりの驚きはまだインターネットによる商取引が始まったばかりの頃に書かれた作品なのに量子コンピュータにまで言及されていること。この作品中ではいつか製品化されるだろう、とされていた量子コンピュータ(作者のわかりやすい説明をもってしても仕組みが良く分からなかったが…)も既に実用されつつある今、桁違いの計算速度で従来の暗号を即時に解いてしまい無用のものにしてしまうという新しいテクノロジーに対し暗号がどのように対応していくのか非常に興味深い。とても面白い作品でした。

4か月前

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ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

面白い本をいろいろ紹介されている方の熱の入った書評に惹かれたので手にとってみた。すさまじく長くまるで広辞苑のような分厚さと重さで読むのが非常に大変でしたが…。しかしこれは衝撃の内容。筆者はスタンフォード大学の心理学の教授なのだが前半は自身が行って物議を醸した「スタンフォード監獄実験」の克明な記録。それこそ日時で詳細に内容を紹介してある。そして後半は当時大きなニュースとなった米軍がイラクで行ったアグレイブ刑務所での捕虜虐待の分析。作者はこの虐待事件の検証にも参画していた。全体を通しての結論は、問題の所在はシステムにあるのであって生まれつき邪悪な人間が事件を引き起こすのではない、ということ。つまり普通の人と自分では思っている我々の誰もが置かれた立場と状況によっては悪魔になり得る(ルシファー・エフェクト)ということを言っている。そしてその意見にはじゅうぶんな説得力があった。きつい内容だし衝撃的な写真も載っているうえ長大なので誰にでも薦められるとは思わないが非常に重要な作品だと思いました。

5か月前

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アイル・ビー・ゴーン

テロが一番激しかった頃の北アイルランドを舞台にした警察小説の第三弾。かなり面白いシリーズと思っていたけども立て続けに邦訳が出るということはけっこう売れたんだな。良いことだ。本作だけども前作でやり過ぎた結果、刑事から制服警官に降格されて一番厳しいアイルランドとの国境警備に回された主人公。しかも物語の早い段階で警察を辞めさせられてしまう。そんな主人公の元にイギリスの諜報機関MI5がやってくる。脱獄したIRAの大物テロリストの捜査に加わるのであれば警察に暫定的に復帰させる、というのだ。大物テロリストとは幼馴染であった主人公はその機会を逃さず警察に復帰し幼馴染の行方を追う。その過程で別の密室殺人をどうしても解決する必要に迫られ…という話。荒々しい舞台設定の物語だし主人公も時にやり過ぎるけども諦めない地道な捜査が特徴、みたいなこのシリーズに上手く本格推理の密室殺人の謎解きが盛り込まれていて感心した。これはかなり完成度が高く面白い作品だった。

5か月前

エネルギーの人類史 上

ビル・ゲイツが推薦していたので手にとってみました。先史時代から現代に至るまでの人類とエネルギーの関わりを綿密に網羅した作品。人類の文明の進化とはエネルギーをいかに効率的により多く使えるようにしていった過程に他ならない、ということが分かる。現代においては限りのある(しかしどのくらいの限りなのかは誰にもわからないとも指摘している)化石燃料による電気を中心としたエネルギーを主に使っている時代ではあり二酸化炭素排出が問題になっているが、その前の段階、人力と役畜をを中心とし、木材を中心としたバイオマス中心の時代にも森林破壊の問題があった、というように何が正解か、を冷静に分析しようとした作品。つまり原子力の全否定であるとか化石燃料の問題点を指摘する、とかバイオマス礼賛、という立場と目線では全くない。結論めいたこととか未来予測はなく、言わば過去経緯を示して正しい方向を共に考えましょう、みたいなスタンスかと読み取った。高校の物流や代数幾何で赤点を連発した自分のような者には荷が重い箇所がかなりあってちゃんと読めたのか甚だ疑問ではあるが…。

5か月前