伊坂幸太郎の本

クジラアタマの王様

クジラアタマの王様 伊坂幸太郎

あっちの世界とこっちの世界、現実原則とファンタジーが絆的ななにかで繋がっている。 こうした物語で印象的なものは数多くある。 映画の『アバター』も文字通り宇宙生物に意識をインストール(ダウンロード?アップロード?)していたしキズナ的な感覚器官で他の宇宙生物を操っていた。 そして本好きならば(あえて文学好きとは言わないでおこう)村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』も等しくあっち(幻想)とこっち(現実原則)を往復しつつ世界を救う的な物語だった。 古今東西、あっちとこっちを行き来しつつ世界を救う物語は沢山あるし、普遍的な集合的無意識が物語として顕れているのかもしれず、『アバター』や『ハードボイルド〜』もまた等しく匿名的で普遍的だった気もする。 東 浩紀氏曰く匿名的なセカイ系、といったところか。 では、なぜこの物語に星をつけるのか? 面白いから。 東 浩紀氏概念的なセカイ系に対してこの物語は東京、宮城という土地、日本的な男性アイドル、日本的な政策立案者(議員)、モラハラ・パワハラ・セクハラといった極めてにっぽんドメスティックな土壌・文化、そして社会を批判的に眺める眼差しがなければ楽しめない物語なのかもしれず、普遍的足りうるかというとちょっと苦しいのも欠点かもしれない。 そして犠牲を払えば多数が救えるが・・というジレンマもどこか興醒めなところもあった。 それはそれでエンターテイメントとして面白く楽しい物語だったし、そういう体験があってもいいではないか。 なによりアクションシーン(?)の描写が活字でこれだけ引き込ませるのはテンポ・語彙・文脈と鮮やかで、なるほどポンポン映画化される作家の表現とはおそろちい、と上から目線になってしまう。 この物語は、いまや古典的手法かもしれないあっち(ファンタジー)・こっち(現実原則)モノ=セカイ系(©︎東 浩紀)を伊坂幸太郎の爆発的な表現力によって陳腐さのない新鮮な体験ができる物語でした。 (アクションの描写はあとがきにも触れられていた。この本はあとがき先読み派の人もあと読みをお勧めしたいところ) その他 『「お節介なんです。帝王切開で生まれてきたし。」』(p.100) これは普段使い出来そうなフレーズ。 『拍手とブーイング』(p367)どちらが望み?

801196d5 8c77 4f11 b225 35cc4b0d120e994e4877 2baa 4443 953d 8efec2a34d2cIcon user placeholder0970f3da 8bc1 4a63 b77a adf191cda81a6aee530d 57e8 479d bc8f 2a26d5c69141Icon user placeholder6c297c28 f15b 4bd1 b046 0af57a8709c9 19
陽気なギャングは三つ数えろ

陽気なギャングは三つ数えろ 伊坂幸太郎

2018/09/20 読了 ふと立ち寄った書店で発見。シリーズ化してるのかと思いきや、9年ぶりだとか。伏線&回収は健在。思わず、「そっちか〜」とつぶやいてしまった。久遠と対等に話が出来る人物の出現に驚いた。

1c81c53e fffc 4e52 a0ac aad944d8e01d27975ca8 a059 4dff 8868 6373d3a65c41E524c3c4 c31b 442b b205 216ab7491779C4e0f889 81d4 4002 9009 452bb68478a27e1d4d07 eea5 4449 adc7 e7d921554619Ce9136e9 9588 4939 8a88 54d00b73eb6cC9416021 ddcd 4549 a615 2e95cc0f62ac 32
火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい? 伊坂幸太郎

積極的な密告を奨励する制度、全く無実であっても「自白」が得られれば公開処刑される近未来という設定は、日本の伝統いやもとい、ディストピアに他ならない。 公開処刑は、群衆と同一化する事でカタルシスを得ようとする病的な自他境界の曖昧さへ導く。 まるでハロウィンやらサッカーやら年末だかになぜかわざわざ遠方から電車を乗り継いで渋谷で群れる人たちがいるように、狂乱は心地よい変性意識状態に導くのかもしれない。 物語の設定としてはSF的荒唐無稽さもある。執行するのがなんで法務省ではなく警察なのか、根拠法はどう成立したのかなどなど、描かれる仙台の街並と登場人物たちの心理描写がリアルなために逆に突っ込みを入れたくなる。 しかし、伊坂幸太郎的世界では暗殺者が妻の尻に敷かれてボルダリングジムで友だち作ったり、新幹線で銃撃戦が起きたりするから世論がそうなっても不思議ではないのかもしれない。 とは言え、現実はどうか。 幸い安全警察も特高もいないが、テレビで「容疑者が逮捕された」となれば、「いつかやると思ってました」的同級生と「そんな人とは思いませんでした」的近所の人が代わる代わる現れ、ネットに個人情報がばら撒かれる。 まだ容疑がかけられている段階であっても、こいつは巨悪だと感じさせる。 そしてこの物語と同じく、「あぁ危険人物がいなくなってよかったね(まぁ自分には関係ないけど)」とか思っている。 この物語の登場人物。 ある会社でリストラをさせる部署で働き、全く共感のかけらもない人物が密告によって突然捕まり、自白させられて処刑された時、好き好んで拷問する刑事たちが血を流し、絶命した時、「ざまみろ」と思っている。 こうした「悪いヤツ」が傷付き破滅してスカッとした時、なんだ、公開処刑観に行くのってこんな感じかな、なんて思ってしまう。 気付けば、群衆側にいる恐ろしさを感じる。 そこで、『人間が人間らしく振る舞えるのは、群れていない時だけだ。』(P.450)という言葉にギョッとする。 しかし、人間らしさは、残酷さか、善良さか。 この物語において「善良さ」は「お人好し」とか「偽善」と言う言葉をもって容赦なく、ずんだシェイクの枝豆よりも細かく粉砕されてそれがもともと善良さだったのかずんだだったのかわからない状態になる。 『火星で住むつもりかい?』と言うけども、結局火星に行ったところで我々人間は移住組と火星生まれ組で集団作って排斥しあったり、ホバーカー的な浮かぶクルマで煽り運転して捕まった残念でイタイ奴のモノマネとかして遊ぶんだろうな、と感じる。 とはいえ、どこにいっても同じだからこそ人間らしく考え、行動する事が重要じゃないかとも思う。 振り子は振れるけども振り幅は抑えられるはず、と願いたい。

5f14cdd5 64d7 4d4e 9861 4bf89921793fIcon user placeholder2af949e2 ba82 4727 ac32 bf9af12ccb9075e05375 99d6 43a8 9717 6f92deb748ac86ea1743 f03e 4260 b00c 241dbc6cbcc2C1328c50 7403 4c06 af9f dccee519f9e4Icon user placeholder 164
キャプテンサンダーボルト 下

キャプテンサンダーボルト 下 阿部和重

2018/04/22 読了 読書家の友人の評価は高くなかったが、伊坂初心者のボクには楽しく読めた。上巻からまさにノンストップ。ラストシーン、ちょっと疑問が残るが、何か読み落としてるのかな? 本を紹介してくれた友人にも感謝。

D6630da9 772e 49b5 b568 1d687963fbe04850bc71 474d 43c0 a6d2 91bd9636a8efF92a09c0 8b7f 49ed 82a2 7eb73343c797Bb0b5db3 204b 486f a93b 668539339fe3Icon user placeholder9bd1b2c1 e7a2 4379 ad5a 7a12d0da13edC6541c1a af4c 4abd a981 30e7891f96bd 17
クリスマスを探偵と

クリスマスを探偵と 伊坂幸太郎

真実は1つなのに 真実を知らなければいろんなこじつけというか解釈の仕方で 物事が違って見えたりすることはあって そこから誤解や勘違いが生まれるんだなぁと思う

3cd37064 1d83 49de 9667 9e8230054c79Icon user placeholderF92a09c0 8b7f 49ed 82a2 7eb73343c797C9416021 ddcd 4549 a615 2e95cc0f62acA04651c6 77a4 4f29 beaa 4f99afde3b842e93f14f 5e55 42e7 87aa 5cc2e4ca66b92f9c8e23 5832 4f9a 848c 70f8907e72b5 15
ホワイトラビット

ホワイトラビット 伊坂幸太郎

読んで良かった、面白かったです! 話が繋がった時のスッキリ感や驚きだけでなく、悩み迷いながらも、間違った状況から抜け出すこと、人としての正しい行いを選ぶことの大切さが心に残った。

Icon user placeholder0a33d080 afd2 4d51 8229 a727cb668ce4E209f0f8 0522 43ad 8158 61720099e4b6A3b27df3 b7dc 4058 82c6 9e4a136003c23cd37064 1d83 49de 9667 9e8230054c7983ed6485 8f58 45b3 b8f4 ce1dd50e5a7127975ca8 a059 4dff 8868 6373d3a65c41 87
短編少年

短編少年 伊坂幸太郎

少年の気持ちは複雑でせつない。 でも少女だって同じじゃないのかな? 自分の子供の頃を思い出しながら読みました。

2cb5b581 20be 4158 85d4 1f1a29ad5c589c19fa1b 8fc8 4081 9b4c 1548b52facaa5ccce948 fb39 470d b106 d50c34d573e1Cb292262 5d04 49b0 a83b 2c35d1bc843bF92a09c0 8b7f 49ed 82a2 7eb73343c7975596b9d4 40c3 496a b8ce 2686b5bfde15F1cbc8fe 8677 45c1 b00f 1bf7f89ad113 11
サブマリン

サブマリン 伊坂幸太郎

最近の交通事故のニュースと重なる。被害者のことを思うと胸が苦しくてニュースを見るのも辛かった。この本を読んだ後、被害者だけでなく加害者側のことも考えるようになった。交通事故そのものは辛い出来事でその事実は変わりないけれど、物事を色んな視点で見ることで自分の心のバランスが保てるような気がした。

29fe4976 e832 4f3e 9f69 48303809fa4fEb4efb3a 7016 434c b55c 9e8b88e762644225c5c8 10f3 48ed bf29 51aa6fcaa35a6ccbbf35 c0dc 4d81 85fb 55865f7cce063cd37064 1d83 49de 9667 9e8230054c79Icon user placeholderD3e4c275 4ddb 4e6d 82d6 df5fe724e79e 17
フーガはユーガ

フーガはユーガ 伊坂幸太郎

優我と風磨。双子の物語で、不思議な世界感満喫しました。ふたりの運命は辛かったりするのだけど、ふたりはひとつ。強くてたくましくて☆

C679b118 7132 4af8 91da 063ee59d46214d32d8bd 8834 49c7 baa2 ade3fb8458fbAaa44b68 d736 48b4 bc15 f33cf39d36cd7c1dc9c5 4e7b 4e9c b2da 83d8eaeda652De620377 d7b3 413f 908d dc24e769262a2cb5b581 20be 4158 85d4 1f1a29ad5c5886ea1743 f03e 4260 b00c 241dbc6cbcc2 186
砂漠

砂漠 伊坂幸太郎

キャンパスライフの醍醐味はこうゆうとこだと思う。勉強、バイト、旅もいいが、感性の違う友人と仲を深めることで、自我が芽生えて、本当にやりたいことを見つけられる。 本当にやりたいことをそれぞれが本気で取り組めれば、世界が変わる。 なんてことは、まるでない。

Icon user placeholderA9abbf8f 4ed6 443c 8672 c542ce9bd696A8e8874a 488a 4dc3 b8cc 892a116e533f32bb3f83 409d 455f 9519 cd67a2bb78af253143cf 34a1 4879 856d 81378d299d2dCfe5b19d ec20 49d3 a183 ae00848b70935944564c 0cdc 4683 a72e 4de2441ae1a0 31
AX アックス

AX アックス 伊坂幸太郎

凄腕の殺し屋「兜」は、恐妻家だった。家族を愛する兜は、殺し屋から足を洗いたいと思い始め、遂に覚悟を決める・・・という話。 一つ目のエピソードを読み終わったときは、正直それほどでもないなと。でもラストのエピソードを読み終えると、その評価は一変。 殺し屋の話だが、メインテーマは家族愛。特に最高なのが、ラスト数ページ。妻に対して怯えてばかりだと思ってた兜の心の奥底にある、感謝や愛情。それが明らかになって、心から感動。良い話だった。

7f543922 3de6 47a3 977c 40b24f18176fF92a09c0 8b7f 49ed 82a2 7eb73343c7972e93f14f 5e55 42e7 87aa 5cc2e4ca66b922f9e151 9e48 475e 9cdf bf208c4feb8aE9fb4a96 face 4612 bd8a c6bfdc207400907a996d 9c7a 4e8c ac62 77c43e428217B81813b6 473e 46cd 90d2 a98ad0bc98f4 34
AX アックス

AX アックス 伊坂幸太郎

『「ぱっとする仕事ってなんですか。暗いというのは、単に、静かに日々を楽しむことができる、ということですよ」明るい性格です、と自称する人間がえてして、他者を巻き込まなくては人生を楽しめないのを兜は知っている。』(p.144) これが主人公、兜の生き方・他者観を表しているように思う。 主人公の兜は人間らしく、愛する妻と子を持つという弱みを抱えており、そして「医師」は反面で『この医師自身が・・・医療器具の一つ』のような無機質さ、コンピュータのような強さを持っていた。 しかし結局、家族を愛する、日常で出会う他者を愛するという善良さは兜の圧倒的な強みとなる。そして医師の無機質さは臆病さの現れでもあった、といったところだろうか。 この物語は暗殺者の物語であり、かなりの人間が簡単に殺害されたり、身を滅ぼすことになる。 ところが読み進めると家族の物語、夫と妻のラブストーリーを読んでいるという体験に変わっている。 こういう物語体験ができるのはとても素敵なことだと思う。 そして、やはり幻のDの物語はあるのだろうか、Crayonだけ小文字が用いられているのは子供を巡る物語だったからなのか、と読んだ後も様々仕掛けがありそうな点もまた楽しい。

6d026c70 e564 4a03 aef8 2ca376b424f152c763f7 7434 4184 8bd5 b00a8c1684a52af949e2 ba82 4727 ac32 bf9af12ccb9049448683 e6cb 4bea 841b 0883d9480cf98fccfba6 78fc 477f a546 a3125957caa1491a536b f623 46ba 80b3 28bc291e8dd96c203172 9338 4f25 8b69 7e892d67b668 120