安部公房の本

題未定―安部公房初期短編集

題未定―安部公房初期短編集 安部公房

気に入ったのは虚妄、題未定、鵜沼。 恋人関係寸前の男女が登場人物として出てくることも多い。 しかしどこか片方(特に男性側)は独りよがりで、共感性に乏しく、同時に残酷さ、未成熟な攻撃性さを持っている。 この未成熟な攻撃性や独りよがりさは他の短編の登場人物も然りであって、共感的な他者(家族や女性)を傷付ける。 そして救済はない。

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飛ぶ男

飛ぶ男 安部公房

再読。安部公房死後に見つかった未完成稿。まだ初稿とも呼べない、ラフスケッチのような状態なので、作品が出来上がる過程が見えて面白いです。

燃えつきた地図

燃えつきた地図 安部公房

自分の読書経験が乏しいからなのか、なかなか頭にすんなりと入ってこない文章だった.でも評価されてる理由はわかった.

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密会

密会 安部公房

恋は盲目。アバタもエクボ。他者の介在を必要としない愛は、グロく、セクシャルでひどく純粋。

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砂の女

砂の女 安部公房

ー罰がなければ、逃げる楽しみもない。 この小説は、自由で、開かれた、近代的な価値観を持つ都会から来た教師(インテリ)が、砂に閉じ込められた集落へ捕らわれ、だんだんと無感覚になっていく様が描かれている。 本来であれば、教師という個性が、「砂かき」なる没個性的な労働・存在になれるはずはない。しかし、集落から「女・水・食料・酒・タバコ」という生活必需品を与えられた主人公は徐々に没個性的存在へと変身していく。 おそらく、この作品が書かれた当時は日本の地方・集落(部落)に野卑さが残されていたこと、そこに文明をもたらすインテリゲンチャとその欺瞞云々といった時代背景があったこととは思う。 しかし、20世紀を経て21世紀へ至った現在の我々はどうだろう。 現在でも我々(都市生活者)は毎日満員電車に自分自身を詰め込み、職場へ向かう。しかし、労働に悦びはなく、苦行でしかない(人が多い)。 この状況は砂に囚われた集落と同じではないか。 「個性を大切にしましょう」なんて言われて育ってきた私らのような世代が「社会人として」なる蟻地獄に囚われ徐々に没個性化し、都市という煉獄に生きていることとなんらかわりなく、『「ぼくには、もっと。ましなことが出来るはずだ・・・」』(p.171)と自己愛を傷つけ続けているのではないか。 不条理とは共感の不足、または欠如であるかもしれない。 『お前は鏡の向こうの、自分を主役にした、お前だけの物語に閉じこもる・・・俺だけが、鏡のこちらで、精神の性病を患いながら、取り残されるのだ・・・』(p.151) 『「かまいやしないじゃないですか、そんな、他人のことなんかどうだって!」』(p.246) 共感の欠如はやがて人間の生き方、感じ方も変わってしまう。主人公は砂と砂の集落に囚われ、砂掻きをしながら同僚に誘われていった講演会を思い出す。『「労働を超える道は、労働を通じて以外にありません。労働自体に価値があるのではなく、労働によって、労働を乗り越える・・・その自己否定のエネルギーこそ、真の労働の価値なのです』」(p.177)そして、抽水装置という『なぐさみもの』の研究開発にも熱中するようになる。 共感が欠如し、周囲で起きていることに関心を払わず、もっぱら生活への適応にのみ神経を注いでゆく。 そして、人は孤独になっていく。『孤独とは、幻を求めて満たされない、乾きのことなのである。』(p.236) 読んでいて考えが膨らんでしまう、小説・物語を読むという体験をしつつ同時に、いろいろさまざま考えが膨らんでしまう。『「日本、いや世界の真相を最も小説的な方法によって書いている』(解説 ドナルド・キーン p.276) その他 『人間にはめいめい、他人には通用しない理屈ってのを持っている・・しかし僕には絶対我慢できないね。もう沢山だ!』(p.76) 『仮に、義務って奴が人生のパスポートだとしても、なぜこんな連中からまで査証を受けなきゃならないんだ!ー・・・人生はそんな、ばらばらな紙切れなんかではないはずだ・・・ちゃんと綴じられた一冊の日記帳なのだ・・・』(p.142)

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壁

壁 安部公房

幻想小説なのか、ディストピア小説なのか。 「理性」が問われていた時代。人々が活字を欲し、娯楽を欲し、小説を欲していた時代の小説。 理性或いは論理が暴力的に主人公に襲いかかる。全く了解不能の論理によって主人公たちは窮地に陥り、そして絶望へ至る。 この物語を通してどういう体験があったかはっきりと言語化するには自分の読書力が不足している。 しかし、物語として奇妙でおもしろい。 p.126『両極という概念・・・(中略)北極と南極との関係がそのいい例です・・(中略)みなさんの部屋もそれに対する極としての世界の果を発見することによって、はじめて真の世界の果たりうるというわけなのであります。』(pp.127) 『この両極という新しい性質の附加にもかかわらず、世界の果てへの出発が壁の凝視にはじまることには変わりないということ、そして旅行くものはその道程を壁の中に発見しなければならぬということ・・』(p.128) 『考えるは休むに似たし』(p.141)

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飢餓同盟

飢餓同盟 安部公房

かつての温泉街花園を舞台に土着の支配者とひもじいと称されるよそ者が結成したアナーキスト同盟たる「飢餓同盟」戦後民主主義を象徴する「読書会」3すくみのわちゃわちゃした対立を哀しくもどこかユーモラスに描く。 招致された医師である森が町につくも一向に病院にたどり着くことができない阿部公房的な不条理たらい回しぐるぐる地獄や人間をいかなる機械よりも精密な機械と化してしまう!ドイツ製の怪しげな薬「ヘクザン」の実験台となった地下探査技師織木、飢餓同盟員に対し「たとえばソロバンを盗んでこい、財務部長らしくなるために、明日までに割り算の九九をおぼえろ。電球を三つ盗んでこい。将来キャラメル工場の煙突塗り替えるために、毎日電柱にのぼる練習をしろ。姉さんの指紋をとってこい。電気コンロを盗んでこい。そして昨日は姉からヴァイオリンを盗んでこいというわけだ」P185と無茶ぶりをするリーダーの花井(ヒロポン中毒)等々奇妙奇天烈な登場人物が繰り広げる人間喜劇。

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他人の顔

他人の顔 安部公房

周囲の目線、行動でどれだけ人間の内部が揺さぶられるか。 妻の置き手紙 「仮面は、仮面であることを、相手に分からせてこそ、かぶった意味も出てくるのではないでしょうか。」 妻がどんな状況でもブレずに、主人公への気遣い、微笑みを絶やさなかった信念がみえる。

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カーブの向う・ユープケッチャ

カーブの向う・ユープケッチャ 安部公房

公房の短編集。「砂の女」の原型になった「チチンデラヤパナ」が収録されています。私は砂の女より、こちらの原型の方が好きです。公房は短い言葉でわかりやすく、難しいシーンを説明してくれる所が好きなんですが、短編だと一発でシーンや空気を伝えてくるから、ラストの一行が効いてて、初めて読んだ時ブルッときた覚えがあります。

榎本武揚

榎本武揚 安部公房

安部公房が書く歴史小説ってどんなの?と気になって読んだけど、構成に安部公房らしさが詰まっていてニヤニヤ。この小説の榎本像、大鳥像、土方像は独特で他にはありません。

無関係な死・時の崖

無関係な死・時の崖 安部公房

物語はフィクションであると分かっていると思いつつも、さも当然の事のように現実にあるのではないかと錯覚させるような文の力があります。 独特な言葉まわしが非常に面白く、この人って頭の中どうなってるんだろう?と本の内容とは別に安部公房さんの人間性に興味がわきました。 この著者の世界観を味わいたいのであれば、まず最初にこの本を勧めると思います。

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笑う月

笑う月 安部公房

「夢」をモチーフに語られる17編の話。エッセー風の話からショートショート風の話まで。 不条理を感じるものが多く、正直安部公房の感性というのは自分にはまだ理解できない。それでもまあ面白いと思えたのは、漂流生活の中で誰が犠牲になるかを決める、「自己犠牲」という話。生き残ることよりも、犠牲になることを争うというのが新鮮だった。とはいえ、この話もなぜこの結末を持ってきたのかよく分からない。

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