柴崎友香の本

かわうそ堀怪談見習い

かわうそ堀怪談見習い 柴崎友香

日常に潜む得体のしれない何かがすうっと忍び寄ってくる。いやもしかしたら日常と思っているこの世界はあくまで世を成す一部分であり、並行する世界が存在し、ふとした瞬間に入ってしまうことがあるのかもしれない。そう感じたのは環状線乗車中成り行きで降りた駅に広がる見知らぬ街の風景である。妙に古臭い街でスッと指差される恐怖。誰もいない校舎から聞こえる子供の合唱。回りは古い家ばかりでどこも窓を閉め切って人の気配はしない。 これはもしかしたら戦前にあった街で、空襲で亡くなった人達の怨念がこの世への未練のために作り上げた街かもしれない。それが環状線と繋がってこの世と出入りできる通路になっているのではないだろうか。と勝手な妄想を抱く。 「元々うちの店は千日前のほうにあったんやけど、じいちゃんの代の時に空襲で焼けて、戦後に親戚がやってたこっちの店に移ってきて」p.113 「ここで昔、大きな火事があって、その時の人が、今でも人を待っているそうです」 その話を受けて 「それに似た話、わたしも聞いたことがあります。この近くにある、私が中学生くらいまではデパートやったビルがあるんですけど、そこの角で待ち合わせしていると、知らない人が待った?って声を掛けてくるって」p.210 全く違うページなんだけど「千日前」「大きな火事」「デパート」が脳内で繋がり 千日デパート火災と答えが導き出された。怨念が残るのも当然の痛ましい事件の記憶。 元々著者の風景描写が好みだけど、今回も「金網のフェンスの外は、運河の流れがある。対岸は白っぽく霞んで、ぼやけている。灰色がかった空気の向こうに、工場のクレーンと煙突がかろうじていくつか見える。向こう岸は、ずいぶんと遠いような気がする」」p.86 家鴨が右左に見ながらただ川を流れていく姿を描いた三好達治の「家鴨」に通じるものを感じた。どちらもたまらなくグッとくる文。

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公園へ行かないか? 火曜日に

公園へ行かないか? 火曜日に 柴崎友香

「そして日本語が話せない毎日の中で自分が話したいと思うのは、話したいと体の奥から湧き出てくるのも、いつも大阪の言葉だった。」P.268、この自分のアイデンティティを認識する、視界がスッと晴れたような腑に落ちる感覚の心地よさ。 アーミッシュの村を訪れた後遠く離れたロンドンで回想する『とうもろこし畑の七面鳥』散文詩的な「どこまでも続くとうもろこし畑、緑色と枯草色。地平線。密度の薄い空間。途方もない空気の量。人間の気配のない、広大な土地。」P.85、アメリカンの質感にグッとくる

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ドリーマーズ

ドリーマーズ 柴崎友香

福島駅のホームのこと、観覧車がある水族館の近く、私の知っている過ごしてきた場所がたくさん出てきて読みながら何度もハッとした。 本を読みながら丁度その場所を通ったり、土地と記憶と夢で繋がれた場所にいた気分だ。 柴崎さんの書く東京もいつか、ここのこと言ってるんだな、ってわかるようになりたいな。 あの景色たちを夢に見れますように、と願いながら。

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パノララ

パノララ 柴崎友香

評判が良かった気がして読んだけど、あんまり面白いとは思わなかった。柴崎友香は芥が賞受賞作を読んだ時も好みじゃないなと感じたものだけど、もう読まないかもな。なんかぼんやりした小説体が苦手だ。

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29歳

29歳 山崎ナオコーラ

なんとなく、女性が書いたものが読みたくなって、図書館で借りてみた。 ちょうど私29歳。 世の中の29歳とはこんな感じなんだなぁと確認した(笑) 不倫率の高さよ。小説だからかいな?? いろんな29歳がいるなぁ。 改めて自分が今どこに立っているのか、確認できた。と、思う(笑)

フルタイムライフ

フルタイムライフ 柴崎友香

つまらないかもと読み進めていたけれど、やはり柴崎友香、面白かった。読みながら自分の会社員時代が激しくオーバーラップした。失敗続きの会社員だった自分のことさえも愛おしいと思えた小説だった。

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待ち遠しい

待ち遠しい 柴崎友香

お隣さん同士の20代沙希、30代春子、60代ゆかり。独身の春子は「標準」であることができない人はどんどんふえているのに、それを認められない空気が強まっていると感じる。それなりに生活出来て自分の好きなことが少しできればいいと思うのに、沙希からは生き方を否定され落ち込み、良かれと思って世話を焼くゆかりに怒り、2人の今までを聞けば心配し気を揉む。女性同士って子供の頃から同志になったり、敵対したり、羨んだり、思いやったり、忙しい。ずっとこんな感じよねと読了後思ったのでした。

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千の扉

千の扉 柴崎友香

新宿区にある三千戸の都営団地を舞台に、戦後70年の間に様々な人の生活が重なったりすれ違ったりする。その人々の織り成す生活がどれもが愛おしくなる。もちろんそれだけでなくちょっとした時空の歪みが物語に奥行を与えている。 印象的なベランダ越しの新宿副都心の超高層ビル群P139は「ビリジアン」の通天閣越しの生駒山と風景の捉え方が通じるものがある。この場面は70年代中期と思われるがまだまばらなビル群に子供のころ中野の家の窓から見た風景を思い出した。 ウルトラセブンの話P60はフック星人登場の「あなたはだあれ」86年か87年の深夜?に放送されていた泉麻人の番組を録画して死ぬほど見た。交番の辺りに野次馬が写っているのが印象的。と思ったら柴崎さんと泉さんのトークショーがTitleであったらしい!この話でたかな。 「千の扉」では戦争の記憶もそこかしこに色濃く残っているのだけど場所柄ということもあるけど遠い記憶もしくはなかったことにしている被害も加害もそんなに昔の事ではなく今の私たちの生活に繋がっているのだよね。目を背けたくなるけどしっかり記憶せねば。

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春の庭

春の庭 柴崎友香

この装丁に惹かれて我が家の本棚に。あの写真集で見たものが実際に部屋の窓から見えたなら、なんて発想がとても好き。この装丁の写真を見てしまっているからか、作中に出てくる風景は全部少し褪せて光量が多くてでも少し薄暗い雰囲気で幸せな気分だった。でも終わりにかけて急に展開が読めなくて、少し困ってしまった。 この人の本、次は何を読もうかな。

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週末カミング

週末カミング 柴崎友香

装幀が好き。始まりと終わりの曖昧な週末、つながりながら新しく始まるそんな短編集。

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小説の家

小説の家 柴崎友香

白地に白インクで印刷されたページ、読むのを邪魔しているかのように模様が踊りまくるページ、手書きが混じるページ、サイズの違うページ。読ませる気はあるのか?と問いたくなる。目次はそれぞれの作者による手書き。装幀は名久井直子さん、さすがである。持っているだけでも楽しい。まだ眺めているだけだが、読めるかどうかは不明。紙にもとことんこだわりありの逸品である。

ショートカット

ショートカット 柴崎友香

文章がとても好き。遠距離にやきもきする若者たちの短編集。物語に今の様な便利さはない。そのもどかしさが綺麗に文章化されていて、各作品の最後の文章や場面に残る余韻が素敵。誰にでもある一瞬の様な。あえて言葉にしない美しさが垣間見える。

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本からはじまる物語

本からはじまる物語 恩田陸

有栖川有栖先生のとこしか読んでないけど、『注文の多い料理店』がベースになってて、でも独自で、いつもの作家アリスシリーズとは違う面白さがありました。

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