武井彩佳の本

〈和解〉のリアルポリティクス――ドイツ人とユダヤ人

〈和解〉のリアルポリティクス――ドイツ人とユダヤ人 武井彩佳

旧日本植民地の人々が「心からの反省」を求める時、具体的にそれは一体どういう状態なんだろうとよく思う。金ではない、気持ちだという人もいるが、ある一国の国民全てが一つの心を持つというのはありえない以上、やはり条約、立法、補償・賠償という政治によるカタチが必要になる。この本は、ドイツはこんなに素晴らしいのに日本はダメですね、という本ではない。例えば以外にもある方面への補償は2015年までされていない。ならば、今までされてきた補償とは、なぜどのようなリアルポリティクス(現実政治)でなされたのか。それは(西)ドイツの利益追求の過程でもあったことが明らかにされる。日本と違って早々に再軍備をし集団安保の中枢の座にも座るのだ。(一方で東独は全く熱心でなかった。) 一読して、やはりこの本から日本のこれからの政治が学ぶべきことはたくさんある。ただ、過ぎてしまった年月、地政学、相手国や国際状況を考えると、実行は全く簡単ではない。 一つヒントになりそうな点があるとすれば、ドイツは自国民の強制動員や戦争被害に対しても責任追及と補償を行なっていること。これが筋や法理の上でも現実政治の上でも、国際補償の遂行に大きな力となったように本書は読めた。最近、原爆手帳の交付が、二次被爆者や「韓国の被爆者」にもなされた。我々はそれを苦渋の被爆者運動と司法・行政の呼応の一つの形として安堵する事はあっても、反日運動による被害とは思わないだろう。ここに至るまでのリアルポリティクスを辿る事で、我々自身の戦後を否定的でなく他者と見直すことは、できないか。 ちなみにこのサムネイルは本扉の写真で、カバーはもっとカッコいいですよ。