岸政彦の本

はじめての沖縄

はじめての沖縄 岸政彦

この著作は、沖縄についての研究が専門の岸政彦さん自身が、はじめて沖縄と出会って、沖縄病になって、自分勝手なイメージを沖縄に対して当てはめてしまっていたときのことが、思考の出発点となっているようです。 なぜ沖縄は、それを語る真面目な言説でさえも、「自分にとっての沖縄」というものを沖縄へ押し付けてしまっている側面が拭えないのだろうか。 そこに「本土/沖縄」という境界線があり、語るものは常にそれを抱きながら、軽々と乗り越えては行けないのだが、すぐにそれを忘れてしまう。そんな語られ方を分析し続け、まだ発見されていない新しい語り方を真摯に考察する本です。 『沖縄戦のさなか、米軍の攻撃を避けるために、ガマと呼ばれる洞窟にたくさんの住民が避難した。子どもや赤ちゃんが大きな声で泣き叫ぶと、それで敵にみつかってしまう。だから、親たちは自分の子どもや赤ちゃんを、自分たちの手で殺した。そういう話が多く語り伝えられている。』 この本では、大勢の方に直接聞いた話を具体的に引用しています。 『大規模で凄惨な地上戦と、それに続く27年間の米軍統治を経験した沖縄に、本土と異なる社会規範が形成されたとしても、それほど不思議なことはないだろう。』 あらゆる「沖縄的なもの」は、気候や民族的なものへ還元されるべきではないと、著者は言っています。 おだやかな文体で断片的に語りながら、本質的な部分にしっかりと触れていくしぐさは、前に読んだ「断片的なものの社会学」と共通で著者の魅力ではないでしょうか。 文献化されていない、一般の人の日常的な記憶を直接聞き取り記録するオーラル・ヒストリーは、それによって言語化されていない複雑で微妙な、当事者でしか分からない感覚へ近づこうとする行為。 目の前の家族ですら、その経験を取って代わることは出来ないし、そうやって蓄積された感覚の差異へ自覚的になり続けることも出来ない。単一民族で移民も少ない日本において、その感覚は増すばかりだ。以心伝心とは言うが、実は様々に存在している差異へ思考停止している部分も大きいのではないか。 僕らはいつも自らの社会を批判的に語り、世の中の矛盾へいらだちを表明しつつ、自身が思考停止している部分の「大きさ」へ気付かないフリをすることに慣れきっているのではないか、そんな痛い部分を拾われる思いでした。

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atプラス28

atプラス28 岸政彦

岸政彦さんの断片的なものの社会学がとてもおもしろかったので、読んでみました。知識として日本の貧困化については知っていたけど、本を読んで昔から根深い差別や地域の差などを実感。

ビニール傘

ビニール傘 岸政彦

ビニール傘…大阪に無数にいる俺と私のお話。 私も大阪にいる無数の私のひとりだった。 大阪の街の情景が浮かぶ。 背中の月…つらいことがあると閉じこもる頭の中の部屋。 なんだかわかる気がする。 主人公の喪失と孤独と。

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愛と欲望の雑談

愛と欲望の雑談 雨宮まみ

社会学者の岸さんとエッセイストの雨宮さんが恋愛、不倫、結婚などについて話し合ったことが書かれている本。お二人とも恋愛などについて思っていたり考えていたことを分かりやすく話され、さらに話を聴いている側の人が話のポイントをいい感じに押さえたりさらに発展させたり。そしてお二人が相手と自分が話している話題についてどういう対応をしているのか、どんなポジションを取っているのかが読んでいると徐々に掴めてくる感覚があって、かなり面白いです。話されている内容は30代、40代の方が経験されたり共感したりしそうな、じわっとくる話題が多いです。

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