檀一雄の本

(016)妖

(016)妖 坂口安吾

谷崎潤一郎の『秘密』は僅か数十頁の短編だが、耽美な非日常の世界にどっぷり浸ることができる名作だ。 秘密を持つということの妖しい魅力に取り憑かれた男は、夜な夜な白粉を塗りたくり女の姿となって街に繰り出す。 「…鏡に映して凝視して居ると、廃頽した快感が古い葡萄酒の酔いのように魂をそそった」 秘密は秘密のままにしてこそミステリアスな魅力があるのであって、それが暴かれると同時にその魔力は失われてしまうのではないだろうか。