滝口悠生の本

愛と人生

愛と人生 滝口悠生

渥美清、車寅次郎、さくら、満男、ホエールズ帽のテキ屋の息子、美保純と物語の視点は目まぐるしく変化する。虚の 中で虚を語る物語の中で美保純は常に見られている。そして美保純の存在とその尻だけがこの世の確固たる現実としてゆるぎなく存在する。 「私が二十七年前に見た美保純の尻のことを今でも忘れずに、むしろ積極的に思い出して思い出して、それがなにかであると思おうとしている。何か、というか、正直に言えば私はそれを愛情だと思いたがっている。でもそうして思い出すことが愛だとしても、はたしてそれが美保純に何をもたらすのか。そもそもその対象は、美保純なのか、美保純のお尻なのか。思い出すことと伝えること。愛の理論と実践。 だーかーらー、と言って美保純は、私にビールの缶を投げつけてきた。理論でも実践でもないの。空き缶は私の顔の横をすりぬけて背後の柱にぶつかって畳の上を転がった。話をすり替えない。ただもうお尻でいいのよ。理論も実践も捨てちゃって、お尻お尻。お尻だけ。」 p.87 「スクリーンで観たことが本当に見たことになるのなら、日本中が美保純の尻を見ていた。尻など、直接見なければ何も見たことにならない。複雑な機能を有せぬ無為の厚みと量感、そこに働く重力と張力、尻の絶えざる静かな運動と、尻を目の前にした自分の絶えざる動揺と冷静の満ち引き。」P.88~89

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死んでいない者

死んでいない者 滝口悠生

ああ、こういうのが芥川賞なんだ 歴代の芥川賞作品を読んでいるわけではないのですが、そんな感想を持ちました お葬式での一夜の物語 一定の年齢以上の方なら何度も経験し、よくある風景が目に浮かぶはず そんな身近なテーマにもかかわらず 情景の空気感や奥行き、湿度の様なものまで感じさせる表現力 なかなか新鮮な感覚を得られました 満足な読後感でした

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