ティムール・ヴェルメシュ/森内 薫の本

空腹ねずみと満腹ねずみ 上

空腹ねずみと満腹ねずみ 上 ティムール・ヴェルメシュ/森内 薫

ヒトラーが現在に蘇るのだがコメディアンとしか受け取られず...というかなりブラックな前作が面白かったので手にとってみた本作のテーマは難民、ということで前作も本作もドイツでよく出せたな、という驚きがまずあった。一時期メルケルが難民の移民を受け入れたものの社会不安が起き世論に押される形で受け入れを停止しアフリカ諸国に資金援助を行うことで難民キャンプに移民を足止めにするという方針に変換しているドイツ。本作では既に首相はメルケルではなくなっているのだが方針は変わっていない。その難民キャンプを到底社会派とはいえないセクシータレントが取材に訪れるのだが…いろんな要素が噛み合わさった結果、15万人の難民がドイツに向けて歩き出す、という話。砂漠を越えてアフリカからドイツまで徒歩で、という一見荒唐無稽な設定なのだけどその辺はよく考えられていてもしかしたら実行できるかも、というところがなんとも上手い。ドイツ側のマスコミや政治家の動きもデフォルメされているんだろうけどかなり上手く描き込まれている。通過していく国の対応や最終的に30万人に膨れ上がった行進をどう始末つけるのか興味深く読んでいくとまさかのラスト。風刺というのはこういう風にやるんだよ、という見本のような作品。面白かった。

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