クリストファー・プリーストの本

夢幻諸島から

夢幻諸島から クリストファー・プリースト

時空の歪みのせいで地図が作成できない多島海。そこに混在する数千の島々のガイドブック、という体の本書。 何々島の風土はどうで、通貨はこうで、と、初めは不思議な島のるるぶ(笑)を読んでいるような感覚が心地よい眠気を誘いますが、1/3程読み進めると、ある一つの事件と、その真相が浮かび上がるという作りになっています。 大枠としてはSFですが、難解な科学用語はなく、むしろミステリに近いかと。

双生児(上)

双生児(上) クリストファー・プリースト

本書はなかなか手強い作品で、全5部の第2部を読んだところでいったんは納得しかかるのだか、直後に物語はガラリと違う貌を見せる。 まるでぐにゃりと力任せに風景を歪ませたように。 可能性に次ぐ可能性。 主人公たちが瓜二つの双生児であることで、歴史はまるでそれ自体が意志を持っているかのように、似て非なるさまざまなパターンを持った枝道をたどる…。 戦争中の描写がやたらと詳しく細かいので、ふむふむと読み進んでいくと「え?どこからフィクションだった?!」と声に出してしまう。 あとがきによると、本書を書くために彼が目を通した参考文献はおよそ120冊。 虚と実が絶妙にブレンドされているので、複雑でありながら違和感なく最後まで読めてしまう、これこそがプリーストの罠なのだ。