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コメント

私の読書の師匠イチオシの矢作さんの小説です、読んでみてイチオシなの深く納得致しました、ご紹介ありがとうございました!

矢作さんはハードボイルドな作家さんだと私は勝手に思ってましたが、この作品は凄いの一言です。ハードボイルドであり、偽史パラレルワールドであり、推理小説であり、パロディであり、皮肉たっぷりの批評小説でもあり、エンターテイメントでもあり、無いモノがありません!ってくらいのてんこ盛りです、ボリュームももちろんありますが、かなり引き込まれる物語です!

よく描かれる第2次世界大戦後の「日本は負けなかった」とか「地下にもぐってのゲリラを繰り広げる」とかいう展開ではなく、なんと日本が真っ二つに分断統治されて、富士山は原子爆弾の投下により噴火、現在の富士山とは全く違ったものとなり、東側は共産圏、西側が自由民主主義という昔のベルリンのような状態になっているところへ、父親の影響から日本語を学び、日本の文化を勉強した黒人の「私」が西側のCNN特派員として東側に残って活動する大物・田中角栄にインタビューするために日本を訪れるところからはじまります。もうこれだけでもツカミとして素晴らしく惹かれる展開を、さらに軽快な文体で、しかも異端者(黒人である「私」)が日本を訪れることで感じられる違和感をズレとして笑わせます。当然西側に首都があるわけですから大阪が首都で共通語が関西弁、東京弁は東京官語と言われて東側の言葉になっています。このギャップがまた可笑しい。

恐らく今までの矢作作品の中で(私はまだまだにわかファンですが)1番近いのは「気分はもう戦争」なのだと思いますが、それを遥かに凌駕するボリュームと構造と密度です!!パロディであり、パラレルワールドであり、批評と皮肉の効いた見事な小説です。そのうえいつもの矢作さんのキメ台詞も、上手い比喩も、ハードボイルドもありなのですから、まさに総合小説と言っても良い完成度です。言葉を選ぶセンスも相変わらず素晴らしく(誰が『ダイハツ サイデッカー』というネーミングを考え付くでしょうか?)最高です。ちょっとだけネタバレになってしまいますが、私は2章のこのセリフ(主人公の私とヒロインの会話)は大好きです。

「失礼でないとはじめられない。上手でないと終わる資格がない」
「それって何のこと?」
「もちろん人生のことさ」

ハードボイルドで、パロディで、上手いです。

私が1番面白いと思ったのは、矢作 俊彦さんという作家が今までの作品から感じられる矢作作品を通してのイメージを利用した上で様々なものを「これはフィクションですから」という顔をして極めて鋭い考察の上に批評(皮肉たっぷり)しているところがある、という事です。しかも多重構造のようになっていてどうとでも読めてしまいます。ただ単に面白おかしくも読めて、フィクションの世界の出来事なのに非常に良く知っている名前を混ぜ、中にはちょっと調べてみたりしないと分からない事や、臭わせる程度の不確かなものを入れる事でその人物の傾向のようなイメージを上手く醸し出し、それを利用した上で皮肉ってみたり、立場を気が付かせてみたり、ともう自由自在にたくさんの登場人物を描き、動かしひとつの世界を成り立たせています。しかもその世界を見た後では、今のこの世界をどこか視点をずらして可笑しくしてくれます、もしくは気が付かせてくれます。

アテンション・プリーズ!ちょっと複雑だけれど、ゼッタイにハマれる笑える小説、たくさんのトピックや元ネタが分からなくても楽しめるそんな小説ですから、笑いをもとめる方に、笑いだけじゃないエンターテイメントを求めているちょっと大人な方にオススメいたします!

2008年 7月

その他のコメント

矢作俊彦が描くもうひとつの戦後日本。

読者

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矢作俊彦の本

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マンハッタン・オプIII 矢作俊彦

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昔の記録に

マンハッタンを舞台にした私立探偵「私」の活躍を描く連作ハードボイルド短編集の第3弾! 今回も季節に、題名に(名曲の曲名を題にした短編なのです)則った素晴らしい短編集で、これで3弾目だというのにクオリティも落ちずにカッコイイとはどういうことかを教えてくれます。 私の気に入った短編は依頼を失敗してしまう「WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS」、素敵な女との騙しあい「SATIN DOLL」、依頼主の秘密とゆすりとロマンティック「STAR DUST」、マンハッタンのクリスマスと完璧なボクサーのウィークポイントの関係「BACK IN YOUR OWN BACK YARD」、ニューイヤーオークションに出されるラブレターの競り落とす価値「MEMORIES OF YOU」、不思議な依頼主の女の子と探偵と陰謀「SOMEDAY MY PRINCE WILL COME」、いけ好かない老婦人と身代金をめぐる「YOU DO SOMETHING TO ME」、完全密室殺人と友人と酒を飲める年齢「AFTER YOU'VE GONE」です。 どれも素晴らしい出来栄えで惚れ惚れ。とてもサラリと読んでしまうのがもったいないので、お酒飲みつつ、気分の良い時に少しづつ読むことにしてたらちょっと時間かかってしまいました(あ!という事は気分良い日が少ないってことだ!!)。 お酒のお供を探してる方にオススメ致します。 2008年 7月

5か月前

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真夜中へもう一歩 矢作俊彦

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昔の記録に

二村永爾シリーズの第2弾!警察に属しながらも、フリーの立場の(休暇中の警官)二村が大学病院内の遺体安置所から消えた遺体を探す出だしさる事ながら、また素晴らしい文体です、リズムです、スタイルです。 カッコイイとはこういう事なのだと、気付かせてくれる大人の小説です、カッコイイのにこっぱ恥ずかしくない、そんな小説です。キメセリフも、臭くなくて、必要以上に飾らないし、直接的表現を控え、比喩がまた絶妙、そんな小説です。 今回も様々なものに関与があり、それぞれの思惑なり動機があるのですが、中でも私は医学生田沼が気に入りました。彼の彼なりのスタイルが私には共感できました。今回のストーリーと本の分量を考えると、もう少しコンパクトに出来たかな?とも考えますが、それでもよかったです。 また、私の好きな作家の高橋 源一郎さんの解説が良かった。いつも通りのただの感想レベルの私事なのですが、芸になっていて私は好きです、彼の小説は最初の何作かで終わってしまったのでしょうけれど、こいうった解説や書評エッセイみたいなものがくだらなくて好きなのです。その源一郎さんと矢作さんとのこういった繋がりがまた不思議です。 「リンゴォ・キッドの休日」が好きだった方には是非オススメ致します。 2008年 6月

5か月前

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マンハッタン・オプII 矢作俊彦

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昔の記録に

マンハッタンに1人で私立探偵事務所を構える『私』の様々な事件を連作短編で綴った作品集の2作目です。今回も短編なのに!伏線をはり、直接語り掛けないで醸し出す雰囲気がまた素敵にハードボイルドしていて、安心して読めます。ハードボイルドは気をつけないと安心して読めない、つい気になって酔えない作品が結構多い世界だと思うので。それを短編でやる技術は相変わらず素晴らしいです。全短編でハズレなし、常に高いハードルをひいていて、全く手抜きなしです、当たり前の事ですが、そのクオリティの高さに脱帽です。 また、例えとして良いかどうか分かりませんが、ビートルズの全アルバムの中で1番好きなアルバム(もちろん強引に一つに絞るからこその、葛藤と逡巡の結果)をあげる事でなんとなくその人の傾向が分かったりなんかして、ちょっと恥ずかしいのですが、同じ様にこの短編集から最も好む短編を挙げる事でも、同じ様な事が分かってしまいそうです。私の場合はビートルズなら「Abbey Road」です。 この「マンハッタン・オプⅡ」の好きな短編は、息子を探す依頼から女の復讐にまつわる話しの「ALL THE THINGS YOU ARE」、私が誰だか調べて欲しいというシュールな書き出しから摑んで離さない「IN A SENTIMENTAL MOOD」、ただの車の代行運転が死体まで運ぶことになる巻き込まれ型の典型なのに素晴らしいクオリティの「TEA FOR TWO」、私にこの後結局長編をどうしても読まなければならなくなった(h@kumeiさんご推薦ありがとうございました)きっかけになった消化不良だけれどもチカラ強い「I'LL REMEMBER APRIL」、など、様々ありますが、中でも1つに絞るなら、私の少ない聴いたことあるJAZZの中でもトビキリ好きな曲Art Pepperの「Meets The Rhythm Section」の中の1曲「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」は最高に好きな短編です。 何故にこんなに矢作さんの作品が素晴らしいのか?を真剣に感想として纏めるためにも、読んでみたくなったためにも、次回の感想「リンゴォ・キッドの休日」で是非。 音楽が好きな方にも、ハードボイルドが好きな方にも、規範を考えてみたくなった方にも、是非ともオススメ致します。 2008年 6月

5か月前

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マンハッタン・オプI 矢作俊彦

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cobo

昔の記録に

矢作さんも初めて読む作家さんです、友人の姐さんにご紹介していただきました。 マンハッタンを舞台にした私立探偵「私」のハードボイルド連作短編です。で、正直ここまでとは思ってなかったです。 ハードボイルドにはきっとそれなりに皆さん好みがあると思いますし、それで良いのですが、ここまで短編でやるとは!!!本当にびっくりです、とてもクオリティ高いです。 『ハードボイルドする』のは、簡単そうに見えてかなりの高度なテクニックが必要です。ただの1人よがりの1人称では到底醸し出せない、直接語らない重要な何かを読者に響かせなくてはハードボイルドできないからです。そのため、どうしても情報量として分量が多くなります。ですから有名なハードボイルドは長い小説が多いと私は思ってます、トリックも、伏線も、背負う傷も、最初の巻き込まれ方、「私」のスタイルも、酒も、様々な手垢がついているとしても、そうする事でしかなかなか『ハードボイルドする』のは難しいからです。 つまり、その世界に、『読者』を巻き込める、読ませるチカラが無い限り、客観性が『ハードボイルド』させてくれなくなってしまうのです。 それを、短編で!やるなんて、相当技術がないと出来ないと思いますが、もう見事です。 ご紹介していただいた方いわく、 「ハードボイルドは、オトコの優しさと情けなさとやせ我慢だ。」 スカして、イカして、上出来じゃないオトコの背中を是非! という事でしたが、まさにその通りです。(本当の情けないではない)情けなさや、(理由のある)やせ我慢を短編で分からせるチカラは凄いです。タイトルも上手いのです。 たしか、(うる覚えに人の名前を使うのは良くないのですが)斎藤美奈子さん(かなり私の好きな文芸評論家です、「妊娠小説」や「趣味は読書」など、良書だと思いますし、切り口が鋭くて好き)が「ハードボイルドは男のハーレクイーンロマンスだ」と言っていたことがあったと思うのですが、ええ、その通りな部分もありますが、必要な人、必要な時があります、男でも、女でも、ハードボイルドでも、ハーレクイーンロマンスでも。それでも読ませるからプロなんじゃないかと。 私の好きな短編は「KISS OF FIRE」、「ANGEL EYES」、「I CAN'T GET STARTED」です。どれも最高です。これを最高と言ってしまう私もちょっと恥ずかしいけれど。ちょっとタイトルから期待しすぎて残念だったのは「AS TIME GOES BY」、「MISTY」です、どっちも大好きな曲だったから。それでもとても楽しめました、ハードボイルド好きな方にはもちろん、そうでなくとも、短編が好きな方にも是非オススメ致します。 2008年 5月

5か月前