415theonzsl

コメント

ここのところ、夏目 漱石先生にはまっています。「行人」、「門」と読んできまして、そのつどいろいろな方に教えていただいた中の一つ、「それから」です。順番としては「三四郎」「それから」「門」と続く3部作なのですが、私は後ろから順に読んでしまったわけです。が、とても面白かったです。

30歳にもなって職を持たず、実業家(ちょっと怪しい)である父から生活費を貰って暮らしている代助は友人夫婦である平岡夫妻が帰郷したことで様々な事柄と向き合うことになります。自身を責任ある立場に置かないことで成り立っていた生活と心の基盤を揺るがすのは...というのが始まりです。またまた当然文章が上手いです、説明し尽くされることに慣れてしまっている現代の小説家の文章よりもずっとセンスある、隙間を生かし、全てを説明しないでも伝えるテクニックがとても心地よいです(私は昔吹奏楽部に在籍していたのですが、『1拍を上手く表現するためには、1拍の長さでキチンと音を切ることが非常に重要だ』という教えを思い出し、それに通じる隙間の生かし方だと思いますし、いかに説明し尽くされることに慣れてしまったのか?を考えさせられました。説明し尽くすことは受けての考えるチカラを日常的に奪い、そしてそれをお金に換える話しにも繋がる話しですけれど。ただ、上手い人は当然全てを説明しないでも伝えてきますね!)。そして、展開も、描写も来ます、迫ってきます。哲学的問いかけ、生活者としてのその時の風情もあり、それでいて愛情についても語られる、昔からあったであろう西洋小説の王道です。しかし、その西洋の王道が日本的なものになって漱石先生の手にかかると、メランコリーで回ります。そこがとても日本的だと、ある意味美しいとさえ感じました。

内容に言及しています!

代助の無意識の内に平岡に自分の好きだった三千代を斡旋する努力を行ったことはおそらく『妻を娶る』という責任を回避するためのものであったであろうと私は解釈しました。だからこそ、その後その自分でした事の事実お大きさに悩み苦しみ、そして運命という言葉を出して自身を納得させる部分はたしかに誉められた行為ではありませんが、ドラマとして必要な部分でさえあると私は思いますし、自分で蒔いた種を刈ることの悲劇性が強くなって小説としてよかったと思います。その辺や相対する平岡を徐々にどんな人物に変わっていってしまったかを描くことで感情移入させやすくしていますし、より小説世界に入り込んで楽しめました。なんだかんだと理由をつけ、その理由が正しいか誤っているかではなく、今どうなのだ?という現実に即する事が出来ないあたりが私個人的には村上 春樹さん的にも感じられ(もちろん漱石先生が先ですが)面白かったです。やはり周りをとりまく人々の(父の、兄の、嫂の、そして平岡や寺尾、もちろん三千代まで当然!)凡庸なるまともさと神経質なまでの考えに固着する代助の頭の回り方が対比美しく良かったです。三千代が代助の告白を聞き入れる度胸の大きさと覚悟の見事さに比べてのある意味滑稽でもあり、そして何故だか哀しくもある代助の態度がまた印象的でした。

その上ところどころで挟まれる描写の美しいことがまた盛り上げたり、引いて見せてくれたり、まさに自在に私の感情をぐりぐりと動かされた感じでした。特に描写では、嫂に自分の好きな女が出来た事を告白した帰りに見る梅雨時に珍しい夕陽と車の輪との描写はとてもヒロガリを感じますし、まさに衝撃的な場面の後でよりいっそう余韻に浸りました。また代助が三千代を好きだと自覚する場面での「三千代」を繰り返す文章が非常に代助の心を描写する意味では上手いと思いました。

不倫小説、とは言いすぎな部分もあるかと思いますが、現代でも同じ題材として繰り返されるモチーフのひとつでありながら、その他とはあきらかにレベルが違って感じる小説、再読だろうと充分に耐えられる芯の太い小説だと思います。

私は最後に代助の至った狂気への道筋にも見える部分こそ、本当の、現実への扉を開け、責任を負うことへの代助から見たものをそのままに描写したものだと思います。狂気を感じさせつつリアルであるという踏みとどまりを感じました。

漱石先生の作品が好きな方に、何時の時代もある不変的悩みに興味ある方に、村上 春樹さんの初期の頃作品が好きな方にオススメ致します。

2008年 12月

その他のコメント

明日から朝日新聞で連載します。
この作品が漱石作品の中でいちばんすきなのでたくさんの方に読んでほほしいです。
漱石はダメな男子みたいな主人公が多いけど、
『それから』の代助はベストオブダメ男子だと思います。
友達の奥さんを好きになっちゃうんです。ダメでしょ。
でもなぜかそんな代助がすきです。
百合の花のシーンとか文学史に残る名告白シーン。
併せて『三四郎』→『それから』→『門』と読むと漱石の結婚観がわかります。
映画『ゴーンガール』なんかよりリアルな結婚や人間の描写に脱帽!

人生を変えられてしまった。この話に影響を受けてしまうような種が自分の中にあるという驚きと共に。

読者

5dbe0e4b bc3f 440a b73e c5fedd4f340f534be5e6 2dc9 4113 9ecf a65b448dbc8dF5acdf0a 9d26 4489 be07 ea75c418152fE1d3b3d9 066a 4a53 9b0e 0dc30ac7ad45106286a2 3df1 4bbe a0b1 310523deccbdB87d5eed c442 4bc4 acba 3b4fc707bf18D2c5fcb0 0448 4e7d af7e 92dd913953b4B9a062fa aa35 4cc3 b4c9 5eb4649a43f6 15人

夏目漱石の本

酒呑みに与ふる書

酒呑みに与ふる書

721ff227 6404 486e a136 194741a375b4

付喪神

基本、何でも読みます

2019/04/06 読了 〜あるいは酒でいっぱいの海〜 松尾芭蕉から夏目漱石。江戸川乱歩に折口信夫。角田光代や村上春樹。内田樹と鷲田清一も。 酒の肴にちょうどいい。ちびちびやりながら楽しく読みました。日本酒の話がもっとあったらもっと良かったのになぁ。 装丁が素敵ですね。 〜すべての酒呑みに捧ぐ〜

6か月前

9ac9871f 33f3 4bb3 b203 9133cb38cc652d3893ff 7bc4 4c12 af6d 249f655eb6daIcon user placeholder 25
吾輩は猫である

吾輩は猫である

3e223e12 b768 4f8d 9a12 56e647614378

REO

趣味:読書、カメラ

いつか読んでみたいと思ってたけど読めていなかった一冊。 なるほど文学的で、終盤の論理展開など特に読みごたえがあった。 語らうことが娯楽であった時代、素敵だなと感じた。本当に読んで良かった。 Kindleで青空文庫が読めるのはめちゃくちゃ良い。

10か月前

71f22d9c d011 4388 a625 6db6f0305377Bda1741c f392 4bc0 8d28 e1e8336ba5d324f5da42 5c23 4de6 97ae 0205c56eccd6 10
夢十夜

夢十夜

774af42e 30e9 462d a3c0 2639c09025a8

takeharu

主に漫画についての記録を投稿しま…

フランスでも出版決定とのニュースをみて再読。夏目漱石と近藤ようこの才能が絶妙に融合し昇華されています。不思議な清涼感のあるうつくしい漫画。

1年前

Dbea8975 e92c 4a59 8a07 cbd61456d18100a6cf1a c5e2 4331 ad04 f26bd088f920705a3186 26f6 4491 b78f 518c621045c5
三四郎

三四郎

C7ff48ab 6db1 475c a7a8 2c64c59e5911

三日月

乙女です

5年くらい前に、漱石の「坊っちゃん」を読みましたが、面白さが全くわかりませんでした。 なので、漱石は苦手だというイメージかあったんですが、「三四郎」は最初からすっと物語に入っていけました。 田舎から出てきたはかりの学生と東京育ちのお嬢さんのなんとももどかしい恋。 三四郎の不器用さに時には吹き出し、時には「めんどくさっ」と思いながら読みました。

約2年前

406f1245 066b 423b 87eb 22a797955e97Ba196229 fef9 490a 9c9d 9c64c96e6a5634f0746a 6f52 4dff 8c03 f66cf8dff33e 18