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欧米ミステリを中心に読んでいます… |
ちゃんと作者を見ずに不覚にも歴史書だと思って手にとってしまったのだが…ピュリッツァーを二度受賞している偉大な作家が描いたカエサルの晩年が面白くないわけがない。全て書簡で構成されており独裁者とそれに関わる人達の心理というか動きが手紙の形で次々に展開される。ガリアを征服したことで力を持ちすぎたと元老院に警戒されたカエサルは無位無官になって帰国しろ、と命じられる。待っているの死という状況で当時ローマ人にとってタブーだったルビコン川を渡ってローマに逆に攻め込み内乱を制覇、事実上、唯一の指導者となっている。その状況の中で暗殺されるまでの8カ月について架空の人物を交えて書簡の形式でカエサル本人、関係者、政敵などの心の動きが見事に描かれている。登場人物は一部を除き実在の、書簡については殆ど作者の創作、という形式だがさもありなん、と思わせる作者の技量が見事。面白かった。