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毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦-「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明... 続き

コメント

簡潔で、分かりやすい文体。

登場人物の日常と、心理の微妙な移り変わりを優しく描き出す描写。

インド文化を知らなくても間違いなく楽しめる暖かな一冊。

すーっと染み込む短編集。切ない処方箋

久々に心震わされた小説。混沌としたインドが近くて遠い目で描かれた良作。

本書は両親ともにカルカッタ出身のベンガル人で、自身はロンドンに生まれアメリカで育った著者によるデビュー短編集。
大きな事件が起こるわけではないけれど、なぜか心揺さぶられる9つの作品。
日常生活の中で遭遇する小さな発見、他者との出会いやふれあいで起こる化学反応のような変化。それらを積み重ねて、人は昨日の自分から今日の自分へと少しずつ変わっていくのだ。

これはインド系の作者が最年少しかも処女作、しかも短篇集でピュリッツァー賞を受賞した作品。
登場人物はインド系が殆どですが舞台は1作を除きアメリカで作者自身も生まれはカルカッタだがアメリカ育ちということ。
そのため民族系のコクはあまり無く欧米の優れた作家の短編、という感触がします。
なんとなくなんでもないけど何度か繰り返し読みたくなる、そんな話が9編。
なかなかでした。

★4 最初の『停電の夜に』は新鮮な驚きがあったけれど、全体的に淡々としていると感じた。別れ、終わり、すれ違いといったテーマが多いので、読む人を選ぶと思う。

同じ作者の『低地』はすごく面白かった。あちらは長編でこちらは短編集。個人的には『低地』がオススメかな。

ピュリツァー賞をはじめ、多数の文学賞を総なめしたインド系アメリカ人女流作家が描く短編集。

登場人物は、インド系アメリカ人や白人、バングラデシュ人、ベンガル語を話すインド人など人種は様々だ。

短編の中で物語が2/3を過ぎると、視点が軽やかに変わり、ラストに読者をいい意味で裏切るオチが待っている。まるで手持ちのiPhoneや小型カメラで自由に映像を切り替えているかのように、鮮やかに舞台が変わるのが面白い。

作者は子供の頃から、観察に観察を重ねていたのだろう。例えば、表題作の「停電の夜に」。30歳過ぎて、校正者の嫁に食わせてもらっている夫は、嫁に罪悪感を感じているのだが、罪悪感に相当する言葉はなく、徹底した観察と夫の様子から彼の罪悪感や心のありようが浮かび上がってくる。

緻密な描写と時間の流れが一定しているのが素晴らしい。読者が安心してストレスなく読める。ストーリーテラーとしての物語の推進力も持ち合わせている。

個人的には、インド系アメリカ人男性から、夫婦、息子を含めた家族、そしてこれから海を渡り他国で活躍するであろう未来の若手インド人へと視点の広がりが素晴らしい「三度目で最後の大陸」が好きだ。

短編の中で唯一、インド近辺の政治について書いたのが、「ピルザダさんが食事に来たころ」。
東パキスタンからバングラデシュが独立する際、故国(バングラデシュ側)に大家族を残したまま、アメリカで研究者を続けるピルザダさんを家に招くインド系アメリカ人一家を娘の視点から描いている。ラストの娘の行動が切ない。

一番笑ったのが、「セクシー」。ジュンパ・ラヒリの良いのは、人の眼差しの優しさと人のおかしみを掬うのが上手いところだ。
インド系アメリカ人女性が、デパートの化粧品売り場で身なりのよい男性にナンパされ、映画のようなうっとりするデートを重ねてセックスをするようになるのだが、男性の嫁が海外から自宅に帰ってくると、あれほど身なりの良かった男が、毎週土曜、嫁にジョギングに行ってくると言っては、短パンのジョギング姿で、まるでコンビニのようにササっと彼女の家でセックスして戻っていくようになる。この男の落差に失望した女性の心のありようが、この後、意外な展開を生む。

コンビニ感溢れるお手軽セックスの様子にげんなりする女の描写に、もう失礼ながら、電車の中で笑ってしまった。

人のおかしさ、哀しさ、嬉しさ、恥ずかしさの描写の塩梅がいい。喜怒哀楽のどの描写が強くて、どれかが弱いということがない。やはり引きの視点からの観察眼に優れた作家だと思う。

読者

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ジュンパ・ラヒリの本

その名にちなんで

その名にちなんで

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kasa

旅行や食に関する本、 海外文学、…

好きな女性作家No.1かもしれない。そう確信させるような本だった。

2年前

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低地

低地

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AI_TANIGUCHI

編集者。主に文芸ジャンルです。

今年読んだ海外文学のなかで、いまのところナンバーワンの作品 (2014年刊ですが)

約3年前

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