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コメント

高校生の頃、辻村深月には何度も救われた。そんな気持ちはもう味わえないと思っていた。

でも、この本は大人のために書かれた、間違いなく大人のための青春小説だった。

一番心強かったのは、主人公が周りの言葉に流されないこと。勿論、人の言葉に揺らいでいたが、人の評価は所詮あてにならないということを示してもいた。

その他のコメント

何が正しい「傲慢」なのか、確かに傲慢だけれど。
プラスな言葉であるはずの「善良」の持つ意味。
この本の登場人物で一番嫌いな人と一番好きな人を選んでください。
そういう、質問があったらあなたは誰を選びますか?
誰の「傲慢」を許す事が出来て、
誰の「善良」を疎ましくおもいますか?
多分誰もが、いくつかの何かを思い出し、心が痛くなる作品です。

確かに恋愛小説だった。

日本的感情表出型家庭。

「隣のナントカさん家のホニャララちゃんはこうなのに・・」「親戚のあの子は大きい会社に就職して・・」「小学校の時のナントカちゃん、もう結婚して子供もいるんだって・・」

これは決して珍しいものではなく、実際にはよく見受けられる日本的家族コミュニケーションのカタチでもある。

このコミュニケーションの形は増えてもいないし減ってもいない。

しかし、終身雇用も年功序列型の昇給もなくなり、年金制度も概ね崩壊している替わり(?)に、FacebookやInstagramが存在する現代において、この家族神話だけは神聖にして不可侵であるようだ。

この神話の中で『普通に恋愛』(p.289)できなかった人たちは、『在庫処分のセールワゴン』(p.212)で自分にピッタリあう商品を探しているつもりが実際は長所と短所だの、履歴書(身上書)だのを作りつつ、浮かないようにと服装と髪色を周囲に合わせ、個性を出すべきか没個性を出すべきか悩んでいる間に自分が在庫処分ワゴンに載せられている。「増税前にどうぞ」なんて札もマジックで書かれてたりして。

そしてワゴンにいる事が恥ずかしいような、手にとってみて欲しいような、そもそもワゴン漁る客はこっちだったはずなのに・・なんて哀しくなる。

この哀しさはきっとアップデートされない神話によるものだろうし、この神話に生きる人たちは皆、『「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。』(p.109)ということだろう。

アップデートされない神話のことを神々の黄昏と呼ぶとカッコイイよとワーグナーが昔言ったとか言わないとか。

いずれにしても傲慢さ、とは自己愛のことだろうし、善良さは愚鈍さのことで、どちらも日本人の性質である。

かつて土井健朗は、日本人のパーソナリティについて「甘えの構造」があると分析した。

結婚によって、『親に代わる依存先』(p.407)となる別の「イエ」に入るという事も「甘え」の力動によるものが大きかったのだろう。

しかし、それぞれがそれぞれの強固な家族神話を有し、『「自分の物語が強い』(p.136)と、少しづつ、コミュニケーションに、大切にしたい事、されたい事にズレが生じる。

主観と主観の狭間、間主観を共有できず、互いに知覚されている事実にズレがうまれ、なんで結婚したいのか、「70%の相手」でいいのかと考え始める。

この『傲慢と善良』の時代になぜ結婚するのか。

神話を再現するためか、先に結婚して孫ができたナントカちゃんをこれみよがしに羨ましがった両親をはじめとした周囲への仕返しのためだろうか。

『長い長い、人生で。出会いなんてなくて。この先、自分が一生一人かもしれないと不安に思って。周りから結婚していないことで何か思われていそうだと思って、どうにか、一人じゃなくなりたいと、結婚したい、人と付き合いたい、恋人がほしいと思っていたんだとしたら。
私のように。
ありえない、と蓋をする前に、ほんの少し、考えてみても、よかったんじゃないのか。』(p.381)

物語の最後の段階でようやく、主人公たちは「自分の意志」を示しはじめる。ここでようやく自己愛を乗り越え、他者と自分を理解し、赦し、『次の場所』(p.375)へ進む事ができたのだろう。

確かにこの物語は”恋愛”小説だった。

こんな事ばっかり考えてるから自分はいつまでも結婚できないんだろうな、と思うのは傲慢だろうか。

読者

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ホラーというより、身近に潜む小さな謎のような怪異の短編集。 永遠に真実が分からないまま日常に埋もれていってしまうようなちょっと不思議な出来事たち。いつか子供の頃放課後に友達と噂をしてキャーキャーと騒いだ思い出とふと重なるような小さな怪談はどこか懐かしい。

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