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遠方の息子に会うため老夫婦は村を出た。戦士、少年、老騎士……様々な人々に出会いながら、ふたりは謎の霧に満ちた大地を旅する 続き

コメント

記憶と忘却。記憶も忘却も私、貴方、彼、彼女による日常の営みであり、その記憶、各々の主観により様々に変容するそれら記憶は「事実」を「史実」に変える。
アーサー王という実在、不在が未だ解き明かされてはいない伝説の人物が亡くなってしばしの物語。
この物語、歴史の主観は誰のものなのか。語り部は?アクセル、ベアトリス、ガウェイン、ウィスタン、エドウィン、常に三人称の登場人物。最後の最後、唐突に現れる一人称。その存在。その役割。
示唆的な登場人物達と彼らの会話、行動は一読だけでは読み取れない意味が散りばめられている。いつかの再読必須。読み終えた誰かと語り合いたくなる一冊。

忘却の霧が愛の本質を温めあえるのだとわかっていても、人間は残酷な記憶の真実を求めようとする。

物語はファンタジーというメタファーではない。

時代が求めればアーサー王は英雄だが、虐げられた者にとっては残虐な敗北者に過ぎない。

そのような背景をひた歩く老父婦の姿はあたかもジャコメッティの彫刻のように。

日々の暮らしの中で読むので、
6世紀頃のブリテンと21世紀の日本行き来に苦労しました。

互いを思いながら旅する老夫婦に羨ましい気持ちになります。荒涼とした大地の中をあんなに恐ろしい思いをしながら進むのは私たちには難しいだろうな。いや無理だ。

記憶が薄れるからこそ思いやれるのでしょうね。
***
読後3時間経過。

本の世界から抜けきれなくて色々考えてると、どんな事も忘却できれば人は善人でいられるのかもしれないのかしら?

一不幸な事も受け止めて根にもたずの心が保てたらいいのだけど、そんなにできた人はあまりいない。

じゃあ忘れる事が出来れば人々は幸いな関係を築けるのかな?
と思う

舞台はアーサー王の死去からそれ程年月の建っていないブリテン島。鬼や竜が出てくるのでファンタジーの部類ですが、丁寧な風景の描写によりスルスルと古代のブリテンに引き込まれます。

国が、個人が閉じたコミュニティに向かい過去の清算を望むなら、忘れられた巨人を揺り起こすのかもしれません。そんな時この老夫婦の様に互いを受け入れ愛するには何が大事なのか、ヒントを貰った気がします。

昔の事、今の事
憎しみの連鎖、忘却の産む怒りと癒し。

こんなにも遠回しに世相を表す
虐げられた人々
虐げる人々

異国の友達の記憶を
隣人の記憶を
忘れないでおこう
私も

読者

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カズオ・イシグロの本

充たされざる者

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さそり座

本当にずっと充たされない。 邪魔が入ったり他のこと思い出したりして何にも先に進まない。眠れないし食べられない、気持ちは焦るばかり。 初対面と思っていたら知り合いだったり、遠いはずの場所と場所が繋がっていたりするところが夢の中の話のよう。 聞こえるように嫌味を言われたり、自分だけが把握していないことがあったりして窮地に立たされる悪夢を見続けている感じ。 充たされそうな場面で終わるが、それもちょっとあやしい。 元気な時に、なるべく広く日当たりのいい場所で読むのが良いかもしれない。

4か月前

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浮世の画家

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Jun

一年のうちに何回か読書ブームがや…

今話題のカズオ イシグロさんの本ということで手に取りました。浮世絵が好きなこともあり。 淡々とした文体が苦手な私としては読書の途中で解説を読み、ようやく読み進めることができました。 いくつかのエピソードが、少しずつずれながら重なり合い、独特のリズムから浮遊感を感じました。 主人公の言動も浮世を漂う感じがあり、浮世絵(=floating world、正確には浮世絵画家ではないけれど)と、浮世を生きる画家を意味するタイトルに妙に納得しました。

6か月前

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わたしたちが孤児だったころ

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Ryuji

楽器メーカーで、音楽関係の仕事を…

ミステリーと幼年期の淡いノスタルジアが並列で描かれ、最後に現実と直面する。現実に放り出されてからの人生(親から離れ孤児になること)が本当のスタートなのだ。

1年前

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遠い山なみの光

遠い山なみの光

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あなご

教育と心理の仕事。1987生

読後感さらり。池澤夏樹解説にあるように、カズオイシグロは自分の気配を消せる作家だなあと。会話のすれ違いは腹立たしくなる程に見事だった。

2年前

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