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自分の読書経験が乏しいからなのか、なかなか頭にすんなりと入ってこない文章だった.でも評価されてる理由はわかった.

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ハードボイルド小説だ。或いはノワール小説的でもある。

ハードボイルドやノワールという物語の成立には都市という舞台は必要不可欠だ。

田園風景の中で、誰もが誰もの家族たりうる社会でハードボイルドもないだろう。

この物語も等しく、都市が舞台であって、さらに、拡大してゆく最中の都市とも言える。

この舞台装置はまったくノワール的と言ったら研究者には笑われてしまうだろうか。

都市において人や事物、そしてそれらに与えられた役割は完全に匿名的で交換可能な価値を持つ。

だからこそ、都市の機能は平等公平で自由である。
しかし、その内実は孤独で冷酷で不平等でもある。

P.293『「ほら、あんなに沢山の人間が、たえまなく何処かに向かって、歩いて行くでしょう・・・みんな、それぞれ、何かしら目的を持っているんだ・・・ものすごい数の目的ですよね・・・くよくよつまらないことを考えていたら、取り残されてしまうぞ。みんながああして、休みもせずに歩き続けているのに、もしも自分に目的がなくなって、他人が歩くのを見ているだけの立場に置かれたりしたら、どうするつもりなんだ・・そう思っただけで、足元がすくんでしまう。なんだか、詫びしい、悲しい気持ちになって・・・どんなつまらない目的のためでもいい、とにかく歩いていられるのは幸福なんだってことを、しみじみと感じちゃうんだな・・・」』

周囲に取り残されてしまうのではないかという恐怖、疎外感と、それを感じさせないための様々な装置、それは自販機だけの飲み屋、バー、屋台やカフェーだ。

しかし、脆弱な人間にこの都市は疎外感、嫉妬を感じさせ、自己愛を傷つける。

Pp313-314『「・・まるで自分が見捨てられてしまったような・・すこし違うな・・ひがみというか・・人生の、とても素晴らしいことが、僕にだけ内緒で、僕だけが、のけものにされて・・」』

疎外感、孤独感は、なにもある個人が脆弱であるからだけでは無く、都市という機能が人をそう感じさせるようだ。

P.353 『「自分が、本当に自分で思っているような具合に、存在しているのかどうか・・それを証明してくれるのは、他人なんだが、その他人が、誰一人ふりむいてくれないというので・・」』

この物語の核心は不明瞭だが、人が都市のなかで「蒸発」する現象として、解離性遁走もあげられる。

記憶が入れ替わり、全く新しい人生をはじめてしまう。

解離性障害の一病態だ。

およそ匿名的で交換可能な都市社会、近代社会においては、失踪し、新しい人生をはじめてしまうということも実はそれほど困難ではなかったのかもしれない。

そして、都市の日常における孤独からの逃避、いや、個人が個人であるための防衛として、遁走は有効な防衛機制だったのかもしれない。

しかし、現代ではどうか。

スマートフォン、SNS、マイナンバー、銀行口座・・

給与も銀行振り込み、納税記録、年金など高度な紐付けがなされている。

そこへきて住民基本台帳(もはや死語だろうが税金の無駄だった)が導入され、マイナンバー制度(最悪なネーミングセンスであり税金の無駄になりつつある)も導入された。

全人格「的」労働ではなく、労働を含めたステータス・バロメータが含まれた「人格」が意図しないうちに形成されていく。

Covid-19のさなかにあって、銀行口座も紐付けられようとしている。

この2020年にあって失踪はかなり困難であって、さらにいえば公私の境界は曖昧だ。

それどころか常に他者のオピニオンが自己に入り込み、もはや対人境界まで曖昧になっているのではないか。

自分の意見は誰かの意見でしかないのではないか。

このアヴァンギャルドな小説を読み、モダン・ポストモダン社会との相違に思いが交錯する。

読者

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安部公房の本

題未定―安部公房初期短編集

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人生で何度目かの読書熱

気に入ったのは虚妄、題未定、鵜沼。 恋人関係寸前の男女が登場人物として出てくることも多い。 しかしどこか片方(特に男性側)は独りよがりで、共感性に乏しく、同時に残酷さ、未成熟な攻撃性さを持っている。 この未成熟な攻撃性や独りよがりさは他の短編の登場人物も然りであって、共感的な他者(家族や女性)を傷付ける。 そして救済はない。

11か月前

けものたちは故郷をめざす

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昔のことはよく覚えていません。

読み終えて、深いため息が勝手に出た。 閉塞感にやられてしまいそうに何度もなった。

1年前

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飢餓同盟

飢餓同盟

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渡辺洋介

神田村経由専門書版元

かつての温泉街花園を舞台に土着の支配者とひもじいと称されるよそ者が結成したアナーキスト同盟たる「飢餓同盟」戦後民主主義を象徴する「読書会」3すくみのわちゃわちゃした対立を哀しくもどこかユーモラスに描く。 招致された医師である森が町につくも一向に病院にたどり着くことができない阿部公房的な不条理たらい回しぐるぐる地獄や人間をいかなる機械よりも精密な機械と化してしまう!ドイツ製の怪しげな薬「ヘクザン」の実験台となった地下探査技師織木、飢餓同盟員に対し「たとえばソロバンを盗んでこい、財務部長らしくなるために、明日までに割り算の九九をおぼえろ。電球を三つ盗んでこい。将来キャラメル工場の煙突塗り替えるために、毎日電柱にのぼる練習をしろ。姉さんの指紋をとってこい。電気コンロを盗んでこい。そして昨日は姉からヴァイオリンを盗んでこいというわけだ」P185と無茶ぶりをするリーダーの花井(ヒロポン中毒)等々奇妙奇天烈な登場人物が繰り広げる人間喜劇。

2年前

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