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コメント

かれこれ20年間「買う、人に貸す、戻ってこない、また買う」を繰り返している本。

安部公房作品で最初に読んではいけないのは確かだw
砂の女から入るのがオススメです(^^;;

覗きに対する本能的な話にとどまらない感じがして、なにを考えるのかを考えることしかしできないし、結論も出ない(^^;;

箱男というアイデアとさりげなく違和感を抱かせる光る文章が良く、ストーリーがよくわからなくても気にしないほうがいい。「ごみ捨て場のやさしさ」という言葉に惹かれた。箱暮らし、うん、悪くないかも。

(新潮文庫 238頁)

誰もその存在を認知も不認知もしない箱の中に暮らす男の話。《箱の製法》材料: ダンボール空箱 一個 ビニール生地(半透明)五十センチ角……。と、特に得体の知れぬ箱ではない。

「見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。見られる傷みに耐えようとして、人は歯をむくのだ。しかし誰もが見るだけの人間になるわけにはいかない。見られた者が見返せば、こんどは見ていた者が、見られる側にまわってしまうのだ。(36頁)」

この物語を読んで感じた異常性は または共感は そのまま現代社会の我々に返ってくる。
変な本です。

安部公房2冊目。
覗く優越感と、覗かれる嫌悪感。
少し共感できる部分も。
SNSに通じるものがあった。

覗く、覗かれる関係について。匿名性の高いネット社会にも通じるテーマな気がする。

箱をかぶって生活する。

社会生活に参加せず、箱の中で生活をする。
いや、箱とともに生活すると言うべきか。

箱男にとって箱はどんな価値を持っていたのか。

衣服とも異なる。衣服は見る・見られると言う相互作用・間主観が生じるものの、箱の場合見るという機能は箱男に与えられ、他者は見られることのみであり見る事は与えられない。

これは平岡解説の言う視点の交換、偽物と本物が入れ替わると言う価値の変化とも言えるかも知れない。

そしてどうやら箱に入ると安心するようでもある。
「すべての光景から棘が抜け落ち、すべすべと丸く見える。(中略)この方が自然で、気も楽だ。」(P.21 )

箱は安心感の器、自分と他者・世界を隔ててくれる枠としての役割になるのかもしれない。

箱と共に生活する箱男、そして箱の持つ機能・役割を考えると、「ひきこもり」という現象を想起させる。

箱の中に避難し、自身の安全を確認する。多くの人は、毎回安心感がある場所に退避せずとも安心感は恒常性を保って外出したり、他者と交流したり、いわゆる社会生活を行う。

しかし箱男は箱から出ることをしない。ライナスのようにブランケットを握り締めるよりもより強固な、安心感が保てるバリアがなければ自分を保つ事ができない。

これはまさにひきこもりと同様の状態ではないか。

「さなぎ」という言葉で箱男の心理が描写されるように、ひきこもりの心理もさなぎと例えられる事が多い。

さなぎは撤退するためではなく羽化するための変態であって、ひきこもりもその人にとっての助走期間、人生の夏休みといえるのかもしれない。

箱男も、若い看護婦と接した事でこの安心感の枠が揺さぶられる事になる。

それは交流とも言えないほど低次元であり、おそらく箱男の妄想的知覚が主ではあると思うけれども彼の世界が大きく揺さぶられる事となった。

やがて箱を捨てられるかもしれないという淡い期待がよぎる。

『彼女との出会いで、もしやその機会をつかめたのかと、密かに期待していたのに・・』(P.64)

箱男は看護婦に対して自分を無条件に助け出してくれて心的にも性的にも受け入れてくれると期待したのかもしれない。

『小型精密機械』(P.122)のように言う事を聞いてくれる、望みを叶えてくれると信じたのだろうけども、病院の窓を覗きみたところで混乱が起きる。

(偽?)医者と看護婦との親密(?)なやりとりを見た途端、医者を贋医者と評価し、贋箱男と認識する。

おそらく、本当は自分(箱男)こそが看護婦を獲得するべきなのに立ちはだかった医者へ投影同一視が起きたのだろうとも考えられる。

これ以降は場面が目まぐるしくかわり、関係念慮、妄想的知覚にエピソード、いわば支離滅裂な病理的な次元へ降りてゆく。

どこで箱男を救えただろうか、などと考えるのは手前勝手ではある。しかし、少なくとも贋箱男と知覚した段階で何かできたのであれば、この後の物語もかわったのかもしれない。

そして、実際のひきこもりも同じようにどこかのタイミングで何かできたのではないか、という局面があったのかもしれない。

それでも、『全国各地にはかなりの数の箱男が身をひそめているらしい痕跡がある。そのくせどこかで箱男が話題にされたという話はまだ聞いたこともない。』(pp.14-15)のである。

(間違っても無理矢理部屋から引き摺り出すのは悪影響しか残さない事をお忘れなく。)

なんとも奇妙ではあるが確信を突いている本だ。
安部公房の作品はどこかジメジメしていて好きだ。

安部公房さんの主人公は執着心があって確固たる熱量がある。これと対比になると思っているのが、三崎亜記さんの主人公たちでこちらはおかしな状況もそういうものとして、淡々と生きていくんだよねー。

読者

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安部公房の本

題未定―安部公房初期短編集

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HSSISOLATED

人生で何度目かの読書熱

気に入ったのは虚妄、題未定、鵜沼。 恋人関係寸前の男女が登場人物として出てくることも多い。 しかしどこか片方(特に男性側)は独りよがりで、共感性に乏しく、同時に残酷さ、未成熟な攻撃性さを持っている。 この未成熟な攻撃性や独りよがりさは他の短編の登場人物も然りであって、共感的な他者(家族や女性)を傷付ける。 そして救済はない。

約1か月前

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飢餓同盟

飢餓同盟

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渡辺洋介

神田村経由専門書版元

かつての温泉街花園を舞台に土着の支配者とひもじいと称されるよそ者が結成したアナーキスト同盟たる「飢餓同盟」戦後民主主義を象徴する「読書会」3すくみのわちゃわちゃした対立を哀しくもどこかユーモラスに描く。 招致された医師である森が町につくも一向に病院にたどり着くことができない阿部公房的な不条理たらい回しぐるぐる地獄や人間をいかなる機械よりも精密な機械と化してしまう!ドイツ製の怪しげな薬「ヘクザン」の実験台となった地下探査技師織木、飢餓同盟員に対し「たとえばソロバンを盗んでこい、財務部長らしくなるために、明日までに割り算の九九をおぼえろ。電球を三つ盗んでこい。将来キャラメル工場の煙突塗り替えるために、毎日電柱にのぼる練習をしろ。姉さんの指紋をとってこい。電気コンロを盗んでこい。そして昨日は姉からヴァイオリンを盗んでこいというわけだ」P185と無茶ぶりをするリーダーの花井(ヒロポン中毒)等々奇妙奇天烈な登場人物が繰り広げる人間喜劇。

1年前

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