51icswgqahl

飛行機で移動しつつ銀製の捕虫網でアイデアをすくい上げる実業家と、飛行機の上だけで読まれる小説を書く作家の冒険。芥川賞受賞作。 続き

コメント

わたしというよりも、「口」にお喋りの主導権を渡してしまい、なんだか御されておるぞ、考えてないことがぽかぽかでてきおる、というような状況はだれしも経験したことがあるのではないか。このとき初めて、自分の中に他者を認識するような、へんな心地がするのかと思う。

書くも話すという行為の親戚みたいなもので、文字によって、ひらがな、カタカタ、漢字、アルファベットを、どう開くかが想起するイメージを変えていく。「手が書いておる」という感覚そのものが、実は人間がことばであふれている証だと思う。

円城塔『道化師の蝶』は、物語というか、文字に操られてたどり着いた種々の痕跡をみせられているかのような小説だ。『オブ・ザ・ベースボール』においても言葉に操られている雰囲気があったが、まだまだわたしごころというか、私性や物語性もあった。今回の『道化師の蝶』はそのことばたちが蠢きあい、なにか新種の生き物のように、そこにいる。

物語が全くといっていいほど残らないのは物語性が乏しいからというよりむしろ、この小説そのものが物語そのものではなく、物語の書き方にまつわる、ひいては書くことにまつわる小説だからだと、確信している。

「架空の蝶」をめぐる想起、「友幸友幸」という名付けるという行為を無に帰すような主人公の名前、「無活用ラテン語」が示す言葉の偶然性ーー。言葉への興味が円城塔という作家の根源的なモチベーションなのだと、確信に至らせた小説だった。

読者

Fa2f46de 09b8 4291 8d2c 025044e17ae2Cbc9f112 a296 4a3a 8e9a a66254f3d0c7Icon user placeholderCbe668ff bf8e 4314 915b 5a089a854466Dbb8f88f 405c 45e1 babd a664f14a104f38e6da79 d16f 446c 84d6 13b9464b1823Ce6676dd 05fe 4fe1 bd60 44f7b05f9af39a5ec021 5ffd 46ff 8967 4ef7527b1566 9人

円城塔の本

オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール

Fa2f46de 09b8 4291 8d2c 025044e17ae2

Kenny

読むこと、書くことが好きな人

物事には理由があるというのはぼくの上司の口癖で、事あるごとにほら見たことかという調子でペン回ししながらしたり顔になるわけだけど(したり顔というのはほんとうに、したり、という音がする)、理由というか、物理的な説明に支えられた必然性なんてないんじゃないか、と未だにオフィス机の引き出しに潜んだビスコの少年の顔を思い出しながら考えている。 ユニフォームを着てバットを持っているから白球を打つ必然性は、物理的には説明できず、それはどこともしれない宇宙から落ちてくる人間を打ち返すことだって構わないじゃないか。そうであるからそうなんです、としか言えない自己循環論法。それで人間は人間らしくやっと振る舞える。 円城塔『オブ・ザ・ベースボール』は、意味がないのに、いや、意味がないからいっしょうけんめいに生きるひとが描かれている作品で、彼が物理的な素養を駆使すれば駆使するほど、その差異ははっきりしてくる。 読みながら、彼は、言葉に操られた経験を持っていて、それを自覚している作家なのかなと思った。それはきっと『文字渦』にもつながっているみたい。まだ読んでないけれど。

7か月前

F42c9bc6 3205 4a7f a4d0 18cd6f5ef93530243de1 f698 405e 9c60 78331041b23c2e2bd5c2 bf6a 45ad a814 e566bbb5f7f5 11