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鉄道開発を背景に、日本に流れた百年の時間を描いた著者最高傑作! 橋を架け山を切り開き、四六時中ひっきりなしに電車を走らせよう。そうすればこの国の人間たちも... 続き

コメント

とにかく読んでいる間はずっと面白い、密度の濃い小説。登場人物に固有名詞はなく、会話も最小限で、かといって土地を主人公にした歴史小説と言えるほど土地の変化に密着しておらず、あくまで人物に訪れる感情が、それもただ感情が豊かに描かれているのではなく、テキストが触媒となって読み手から引き出される感情が、ほとんどなんでも書けるんじゃないかという多様な舞台で広げられていく。

明治から平成まで車窓風景のように流れながら物語っている。

「いったんある方向に転がり始めてしまったら、途中で立ち止まる勇気がないゆえに、ただ判断保留がゆえに、(中略)人間は死ぬまで転がり続けてしまう。」

予想外のディテールから次のディテールへとじわじわ分け入っていき、さらにそこから別のディテールへと枝分かれしながら連綿と展開していくさまは、さながらフラクタル図形のよう。この感じは、佐藤哲也の日本ファンタジー大賞受賞作『イラハイ』(新潮文庫)に通ずるものがある。小説の楽しみは「プロット」ではないのだ(『百年の孤独』のあらすじを問うことに何の意味があるのか)。「読むことに淫する」、まさにその喜びを味わわせてくれる小説。

実で虚を語り、虚で実を語る凄い小説。文庫化されましたが、その解説にある、この小説の「要約」(がいかに意味がないかを示すための)が秀逸。小田急や東急、阪急、阪神などの私鉄郊外住宅地の社会史は、ほぼこの通りの疾走を経たのではないか。ただ、大正新教育の創始者たちは、あまり「彼」のような人はいなかったはず。でも、ルソー的な、(洞窟に住んでるような)高貴な野蛮人(としての子ども中心主義)の比喩だとすれば、大変納得。

読者

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磯崎憲一郎の本

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帯に「語りの力で、何者にもなりえ、何処へでも行ける。小説の可能性を極限まで追い求める、最大級の野心作。」とあるけど、この本の刊行記念で紀伊國屋で開催した円城塔さんとのトークイベント行った時に、最後の質疑応答で、「私は鳥獣戯画が大好きで、あなたが誰なのかも、この本が小説とも知らなくて買って、来ました」というおじさんがいて笑ったんだけど、まさにそういう展開ですらすら時空も因果も超えて、かつ全てを内包したような複数の「私」小説。後半の「私」の高校から浪人、大学一年の夏までの恋愛を描い部分は、エモい青春小説としても読める。読後感最高です。

7か月前

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機関車の件が、ビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」のそれを思い起こさせる。 同時収録されている「絵画」は磯崎作品の中で1番好きかもしれないです。

3年前