私はかなり好きな作家さんの一人でもある舞城さんの短編集です。かなり好きな作家さんなのですが、残念です、舞城さんには私は評価が甘くなる方だと思いますが、それでもこの短編集は少し行き過ぎかと。最近新作もほとんど出版されなくなってしまっていますが、心配です。
舞城作品の中では福井県の西暁(ニシアカツキという地名、実在するか不明)の作品か、東京の調布市の作品かのほとんどどちらかを舞台にした作品ですが、今回は少し長めの表題作「みんな元気。」と、とても短いけれどこの短編集の中では私のベスト「Dead for Good」が調布作品で、いまひとつ掴みどころの無い短い作品「矢を止める五羽の梔鳥」が西暁作品です。
どの作品も舞城作品にふさわしい擬態語に溢れていて特徴あるものの、作品の中で語られるスピードが非常に速く、また速くするために説明を、描写を、省いている感じが否めません。省くことでヒロガリを持たせる事も出来るタイプの文体もありますが、舞城さんのものは私個人は違うと思ってます。ですから、彼の語りたい内容やセリフに今までの作品にはチカラを感じていたものが、非常にムナシク響きやすくなってしまっていると思います。
一見舞城作品の特徴として大きいのが、擬態語や文体なのですが(それ以外にも本当の特色として、物語の長さや、スピード、そしてキメのセリフなり、登場人物の思考のリアルさ、リアルさから醸し出される虚しさ、空虚感【村上春樹作品にも共通する高度資本主義社会に生きる事からくるどうしようもない、逃れられない閉塞感】、そしてその空虚さを認識しながらも、軽く飛び出す事の出来る身軽さを伴った覚悟など)、絶妙のバランスで成り立っていた説得力の様なモノが無くなってしまって感じました。ただ残虐さのリアリティだけでは無い何かが失われてしまって感じました。語りたいスケールはとても大きくて、しかも割合ベタなモノであるのに、ベタからくる恥ずかしさからも逃れる事の出来ていた今までの作品と比較(どうしても期待が大きいと失望も大きく、それゆえ比較せずにはいられない)してどうしてもチグハグで、スケールと物理的なページ数の少なさにも不満を感じます。テーマと長さもあまりにも無配慮ですし、少し現実離れにもチカラの無さを感じてしまう作品になってしまっていると思います。
だからこそ、残念。
それでも、短くはありますが、チカラ強い短編「Dead for Good」は一読の価値有り。
2007年 7月