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夏山のブックキャンプ 木崎湖「ALPS BOOK CAMP 2016」

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森と湖、本に囲まれて過ごす

長野県の北西部、北アルプスの麓に広がる大町市。自然豊かな山岳都市にある「木崎湖キャンプ場」で、8月5日の前夜祭から7日までの3日間、ブックイベント「ALPS BOOK CAMP 2016(アルプスブックキャンプ)」が行われました。長野県に住む私としては気になっていたイベントに早速参加してきました。

アルプスブックキャンプは今夏で3回目を迎えます。来場者は年々増え続け、今年はのべ約1800人が参加しました。湖畔の松林に立ち並ぶ店は書店37軒、雑貨店28軒、飲食店21軒の計80軒以上。イベント期間中のキャンプ場は貸し切りなので、日帰り参加者のほか、テントサイトでキャンプをしながら、またはバンガローにグループで泊まりながら参加する人もいます。

「おかげさまで今年は宿泊の予約を開始して数十分で、テントサイトやバンガローの予約が完売しました。年々イベントの知名度が上がってきているのを感じます」と主催者の菊地徹さんは言います。

比較的こぢんまりとした会場ですが、過ごし方はいろいろです。新刊や古本、少部数のリトルプレスを購入できるのはもちろん、ナチュラルテイストな手作り雑貨を探したり、キッチンカーで多国籍な料理をテイクアウトしたり。会場奥にあるシンプルなステージでは定期的にメローで心地よい音楽のライブや、本にまつわるトークショーが行われています。湖ではSUP(スタンドアップパドルボード)やカヌーなどレイクスポーツも楽しめます。

松林に吹く湖面からの優しい風、ゆったりと流れる開放的な音楽、オーガニックな食べ物に囲まれてキャンプができるのは、本好きならずとも魅力的。プレミアムチケットになる理由が分かります。

インドアとアウトドアを融合

主催者の菊地さんは、静岡県出身の30才。木崎湖から35km南にある中信最大の都市、松本市の中心地で独立系出版物を中心に扱う「栞日(しおりび)」という新刊書店を経営しています。

長野県に移住したきっかけを「なりゆきで就職した会社があったのが、たまたま松本だったから」と話す菊地さん。住んでみて規模が大きすぎない城下町・松本を気に入り、以前から夢見ていた「多様性のある本屋」を開業したいと考えるようになりました。

2013年8月に念願の書店をオープンしました。と同時に次の目標が見えたそうです。それは「栞日」の延長にあるような本のイベントを野外で開催することでした。目指したのは「インドアで楽しむ読書と自然の中で遊ぶアウトドアの融合」です。

「全国各地のブックフェアは主に秋に開催されていますが、涼しい長野の会場なら夏にイベントができると思ったのです」と8月開催の理由を語る菊地さん。松本市周辺で会場を探すうちに木崎湖にあるキャンプ場に行き着き、そのロケーションに惹かれたそうです。菊地さんの「木崎湖の桟橋に立ったとき、イベントをしている風景が自然と想像できました。この心地よさはたくさんの人に好まれるだろうと」の言葉通り、遠くローカル列車の警笛が聞こえてくる会場は靴の裏に土や砂の感触が味わえる自然の真っただ中にあり、透明度の高い美しい湖の向こうに大町市民に愛される小熊山が望め、涼風が吹く木陰でのんびり本を読むのにぴったりです。

出店者はすべて菊地さんが選んでいます。アルプスブックキャンプの雰囲気に合う、自分の大好きな書店や雑貨店、飲食店に声をかけ集めたそうです。いわばこのキャンプ自体が菊地さんのセレクトショップのようです。

「多くの関係者に恵まれ、縁を結んでもらってイベントが実現しています。だからこれからもアルプスブックキャンプを洗練させて、育てていくのが僕の役目です。そして本にまつわる選択肢を増やしていって、たくさんの人の交流の場になれば嬉しいです。それと、イベントを通して長野県の良さを内外に伝えられたらいいな。よく“向こう見ず”だと言われますが、やれば何とかなるものなんです(笑)」。飄々としながら笑顔を絶やさない菊地さん。そのしなやかな雰囲気が、そのままイベントに反映されているように感じました。

個性豊かな書店たち

会場には松本市を中心に、東京、鎌倉、新潟、石川、大阪、岐阜など全国の店が出店しています。どの本屋も店主のこだわりがにじみ出ている選書と店構えです。例えば主催者菊地さんの書店「栞日」、「空間作りを大切にしています」と空色のバンで本と450㎞旅してきた移動式書店「BOOK TRUCK」、“これからの本屋”を模索する東京赤坂・蔵前の書店「双子のライオン堂」、長野県上田市で毎日イベントを行う古書店「NABO」(今回のテーマはズバリ「縄文」!)などなど。

「出展者も楽しめるのが嬉しい」と店主同士いろんなブースに顔を出し合って、情報交換していました。またリトルプレスの版元とその本を販売する方が、立ち話をしながら商談をまとめている風景にも出会いました。「ここで会いたかった店、人に会えて、良い刺激を受けられます」と、なんとも創造性豊かな空間です。

参加者は思い思いに本を手に取り、本について一家言持つ個性豊かな店主と言葉を交わし、次の店へと向かいます。みな穏やかな表情で、心からこの空間を楽しんでいるのが伝わってきます。 「初回から毎年参加しています」という松本から来た「栞日」ファンの30代女性、「こういうブックイベントをずっと続けてほしい」と話す地元大町市の50代女性、東京から「旅行ついでに遊びに来た」という40代のご夫婦、「ピクニックに来てるみたいでワクワクする」とカフェ巡りが趣味という学生カップル……。本と自然を愛する人たちばかりでした。

雑貨店もバラエティに富んでいます。山関連のオリジナルイラストのグッズを販売する「HIGASHI ALPS」、長野県小谷村で山仕事からリトルプレスまで行う集団「くらして」、大町市在住の草木染め作家「solosolo」など。ロハスで趣味の良い雑貨が集まっていて、思わず手に取りたくなります。

つい本や雑貨探しに夢中になってしまいますが、歩き疲れたら休憩も兼ねて飲食ブースへ。 自家製野菜のピザが美味しい大町市の「ぽらーの」、地元食材を使った玄米ごはんとベジタブルカレーの「青空フーズ」、白馬からは100%ビーフのハンバーガーショップ「TracksBar」、広島から参加したレモネードとコーヒーと焼き菓子の店「u-shed」などなど、魅力的な店ばかりで目移りしてしまいました。各地の地ビールもそろっていて、飲み比べもできます。

日が暮れるまでのんびり過ごし、夜はキャンプファイヤーと弾き語りライブを楽しみます。満天の星の下、テントやバンガローでゆっくり本を読んで眠りにつく人もいます。

この夏は信州の湖畔で心地よいひとときを過ごせました。また来年もアルプスブックキャンプは木崎湖キャンプ場で行われる予定です。早くも次の夏が楽しみです。

撮影・テキスト構成 ORYZA編集工房 稲澤博

ALPS BOOK CAMP

長野県大町市平森 木崎湖キャンプ場

http://alpsbookcamp.jp/