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隠居の落ち着き 上海「大隠書局」

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ようやく涼しくなった上海で素敵な書店に出会いました。

「大隠書局」は淮海中路という上海でも大きな道路に面しています。車やバイクが途切れることなく行き交い、クラクションの音が響く、そんないつもの大通り。

少しうんざりしつつ、店内へ。

足を踏み込むと、ひんやりとした空気。そして一歩遅れて紙とインクと木の香りが鼻腔をくすぐります。本好きならすぐにこの空間のとりこになってしまうでしょう。

人はいるのに静かな空間、程良く効いた冷房、明るすぎず落ち着く照明。静かではあるものの、図書館のような緊張感はまったくありません。整然とした雰囲気をわざとくずして、ちょっとだけ雑然とさせる。本だけでなく、筆や硯など中国らしい雑貨があったり、苔を育てている鉢があったり。

随所に施された工夫が落ち着く空間を見事につくり出しています。

書店としてはそれほど広くない空間は、社長自ら厳選したという書籍で埋め尽くされています。ジャンルは、人文、街造り、歴史、料理、そして世界中の有名な作家が書いた文学など多岐に渡ります。東野圭吾や渡辺淳一、夏目漱石など日本人作家の本も多数ありました。骨董品ともいえる古い漫画本も。

中国は日本に比べると本が安く、例えば、ハードカバーの松本清張「砂の器」は35元。ちょっとしたカフェなら珈琲1杯の価格です。そのためか、まだまだ紙の本が人気なんです。

お茶を飲みながら本を読んだりゆっくりできるスペースもあります。

お茶は日本の緑茶に近く優しい味です。ここでも店内の本を自由に読むことができます。

この書店のコンセプトを店長さんに尋ねてみました。

「騒がしい上海で、まるで隠居するように過ごしてほしいんです」

隠居… 確かに店名にも「隠」の字が入っていますね。

「隠居っていうと山や田舎にこもるイメージがあますよね?」

はい、そういうイメージでした。

「でも本来隠居とは、騒がしいなかでも心の穏やかさを保つことなんです」

なるほど、上海の中心にいながらにして隠居できるんですね。

「そうです。ここで少しでもみなさまに心穏やかな時間を過ごしてほしい。それがスタッフの思いです」

適度なほの暗さ、小さくかかるBGMは中国の古い音楽、そして香り。

そしてスタッフの制服も素敵。ふんわりとした黒いリネンのロングワンピースで主張しすぎず自然です。それでいて、ジーンズにエプロンのような「普通の本屋さん」のユニフォームとは全く違い、空間の雰囲気にとてもよくなじんでいます。

まるで隠居の手助けをする老師(先生)のようにも見えます。

外部の喧騒から想像がつかないほど、落ち着いた雰囲気の書店「大隠書局」。おそらく多くの日本人がイメージする「中国」を覆す、静かで凛とした空間でした。

大隠書局

上海市徐匯区淮海中路1834号-1

10:00 - 22:00