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本屋と様々な人を繋ぐ 雑誌「HAB」

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たった一人で作っている話題の本

本屋が好きな人や出版関係者たちが大注目している手のひらサイズの雑誌があります。「HAB Human And Bookstore(HAB)」という個人出版の本です。新しく本屋になりたい人へ向けて書かれた、本屋に対する愛に溢れている雑誌です。全国の書店で注文することができます。

2014年2月発売の第1弾は「人」と「本屋」のインタビューが掲載されており、本屋を続けるためにはどのようなことか必要か、書店員さんやローカルマガジンの関係者ら様々な人の意見を取り上げています。

2016年5月発売の第2弾は「本」と「流通」をテーマに、取次や直販など本の流通について一から解説しています。 この雑誌をたったひとりで作っている編集者の松井祐輔さんに話を聞きました。

「よくある雑誌の本屋特集だけではワンフレーズの紹介になってしまう。本屋に関わる人にちゃんと話を聞いて、全部文字にして残すということをやりたかった」

雑誌「HAB」を作るきっかけをこのように語る松井さんは、以前は取次(出版社が作る本を仕入れ書店に売る流通業)に勤めていたそうです。取次にいたころに本屋への興味を強めた松井さんは、1冊のミニコミ誌に出会います。

メディアやコンテンツを開発しているKAI-YOUが出版していた「ミニコミ2.0」、メディアやコミュニケーションの変化について論じた本です。濃厚な内容ながら、手作り感あふれるミニコミ誌を見て「これならぼくにも雑誌をつくることができるかもしれない」と思うようになったそうです。そして、勤務先の取次を退職し、1年ほど後に「HAB」を出版しました。

「本屋が次々につぶれて悲しいと嘆いている人がたくさんいたけれど、そんなことより、ちゃんと活動をしている小さな本屋がたくさんあって、その取り組みについて紹介したかった」

そのような松井さんの思いで作られたのが「人」と「本屋」のインタビューを載せた「HAB」の第1弾。地域の本屋の試みとして新潟の店を中心に取り上げました。

次の第2弾「HAB 本と流通」では、新しく本屋を始めたい人に向けて、一般の人に知られていない再販制度など本の流通について取り上げようと考えたそうです。

取材を通じて本を売るという仕事に更に関心を高めた松井さんは新しい挑戦を始めます。

週末だけの本屋さん

「僕が本屋さんに興味を持った当時、新しい本屋さんを始めるのは難しいと言われていた、できないと言われるとやりたくなった」

松井さんは雑誌「HAB」の第1段を出版した後、2014年4月に小屋BOOKSという小さな本屋さんをスタートさせます。きっかけは、虎ノ門の「リトルトーキョー」というコミュニティースペースのスタートアップで手伝いをしていたこと。

「この小屋で本屋さんをやりませんか?」

松井さんの提案を「リトルトーキョー」のオーナーは快諾し、2坪の本屋さんを始めることになりました。運営会社が求人情報を扱う会社だったので、「働き方の総合書店」をコンセプトに仕事に関する本を中心に本棚をつくりました。

「本屋さんをやるのは難しいという人たちに、こうすればやれるよ、と提案したかった」という松井さんは、他の仕事をしながら併設するカフェに会計をお願いする形の、兼業本屋さんとして小屋BOOKSを始めました。

オープンから1年半後、「リトルトーキョー」が引っ越しをすることになり、間借りしていた場所で書店を続けられなくなりました。

「自分の店がなくなるというのは世の中から本屋が一つ減るということ、そんなことをするわけにはいかない」

そう考えた松井さんは新しい書店を開くことを決めました。そして、昨年11月にオープンさせたのがH.A.Bookstoreです。小屋BOOKSは出張版として赤坂「双子のライオン堂書店」の一角にスペースを借りて残しつつ、仕事場に近い台東区蔵前に新しく書店をスタートさせました。

本屋さんが好きな全ての人のために

「目当ての本を手にして、次に手に取る2冊目が大事。取り扱う本がユルくなりすぎないように文芸などを積極的に取り入れ、リトルプレスも充実させたい」

H.A.Bookstoreの本棚の構成は「総合書店」、様々なジャンルの本を扱います。来てくれるお客さんに合わせて取り扱う本を変化させようと考えているそうです。松井さんのハンドメイドの、すのこのような独特な本棚が壁一面に広がっています。「九州・熊本の本や出版社」特集などインパクトのあるコーナーもあり、「長い時間をかけて売っていきたい」と松井さんは語ります。

松井さんはここでも兼業本屋さんの形を取りました。土・日曜と祝日を中心にH.A.Bookstoreを営業し、平日は下北沢の新刊書店「本屋B&B」の経営などを行っているNUMABOOKSで働いています。

「本屋だけで生きていくということはカッコイイと思っていた。でもいまは、それ以外の選択肢をもった人たちが増えて、週末だけ営業している本屋とか、仲間で集まって営業しているとか、多様なカタチで本が売れる環境ができればいいと思うようになった」

雑誌「HAB」を作って本屋さんの様々なありかたについて知る中で、専業本屋以外の選択肢を示し、本屋さんを始めるハードルを下げるための活動をしていきたいと思うようになったそうです。

その活動の一環として、松井さんは取次も行っています。

「大きな取次とのネットワークがない、小さな本屋さんにあらゆる本を届けるシステムをつくりたい。今作っているHABやこれから僕が出す本を一緒に送ってしまえば、流通コストを抑えることができる」

本屋さんを始めるための最初のハードルは、本を仕入れることです。大きな書店に届けられるような本、発売前から期待されている本や話題のコミック・書籍を望んだ量手に入れるためにはネットワークやコストが必要です。小さな書店と出版物を繋ぎ、それらのコストを引き下げるための工夫を松井さんは考えているそうです。

「僕の雑誌を読んで、これなら自分にもできるじゃん、と思ってほしい。自分で本を作ったり、本屋さんをやってみたり、本に関することを始める人に様々な情報や取り組みやすい環境を届けたい。良い本が売れて、新しい良い本が作られて、たくさんの人の手に良い本が届くように新しい本屋が生まれていく、こういうサイクルをつくっていきたい」

企画中の「HAB」第3弾は今日的なテーマを選ぶとのこと。本と本屋に関係する全ての人を応援する松井さんの活動から目が離せません。

H.A.Bookstore

台東区蔵前4-20-10 宮内ビル4階

http://www.habookstore.com/

営業:土日祝 12:00~17:00 ※不定期営業あり