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本の宇宙でひと休み 仙台「火星の庭」

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仙台初のブックカフェ

仙台名物の青葉祭りや光のページェントが行われる定禅寺通りの端っこで、今日も静かに営業しているブックカフェ「火星の庭」を訪ねました。ちょっと変わった店名は、経営者の前野さん夫妻がひらめきで付けたそうです。

店の前の不思議な形のオブジェが目印です。店内でまず目に入るのは壁に沿った本棚に天井までぎっしり並べられた古本。ミント色の本棚の裏のカフェスペースにはコーヒーの香りが漂い、時間がゆっくりと流れています。本屋、というよりアンティークショップのような雰囲気を感じさせます。

「仙台にブックカフェがあったら、火星の庭はなかったでしょう。誰もやらないから自分でやるという思いでした」

そう話す前野さんが初めてブックカフェと出会ったのは26年前、和食レストランの調理師としてドイツ・フランクフルトで働いていたときでした。近所でたまたま見つけたその店は、本を買って、お茶をしながら読書ができ、お客さん同士が親しげに話している様子を見て、新鮮さと居心地の良さを感じたそうです。この店のイメージが16年前の仙台初のブックカフェのオープンへとつながりました。

地元ではない仙台での開店を決めた理由は仙台の気候風土、街の景色がどことなくドイツに似ていたからだそうです。身近に例がないため最初はカフェと古本屋の両立に苦労したそうですが、今では常連客も多い名物店です。

「家庭と職場の次にくるもう一つの居場所として火星の庭を提供したい。静かに本を読める場所でありたい」と前野さんは言います。

これからの自分との出会いの場所

前野さんは、本屋にカフェスペースがある理由を「本を読めば、コーヒーも飲みたくなります。本を読む横にコーヒーがあるのはごく自然なこと」と言います。調理師経験がある前野さんのこだわりはカフェにも表れています。「自分が食べたいものを提供したいから」と、添加物、電子レンジ、冷凍食品は使わず、オーガニックなものを提供しています。人気はレンズ豆、ひよこ豆が入ったセイロンカリー750円。ケーキやスコーンはパン工房麦さんのもので、天然酵母パンや焼き菓子もあります。

店内の本はお客さんから買い取ったもの。文学、美術、建築、洋書など少しだけ専門性の高い書籍を中心に、中には絶版文庫や昭和の雑誌、戦前のとても古い本まで並びます。ベストセラー本はほぼ見つかりません。「新しい世界との出会いや趣味のきっかけになったら」との思いで選ばれた古本たちは、一度持ち主を離れた後も再生されて次の人に引き継がれてゆきます。

不定期で開催する店内イベントも、古本と同じように「新しい世界との出会いや趣味のきっかけにしてほしい」という思いが込められています。台湾レコード鑑賞会など音楽を扱うものから安保caféなど社会問題をテーマにするものまで内容はさまざまです。コンセプトは「誰もやらないけど、やったらおもしろそうなこと、社会がもっとよくなること」。イベントの日は立ち見が出るほど店内にぎっしりお客さんが入ります。

「本をたくさん読むことで、視野が広がり、行き詰った時に多方向から考えられると思うんです。多くの本との出会いが人生を豊かにするはず。イベントもその人の人生を豊かにするきっかけになったら」と前野さん。

11月2日には前野さんが共著者として参加した「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」(朝日出版社)が発売されました。前野さんを含む全国の22名の書店員がそれぞれ思い描く夢のような本屋を案内しています。まだ誰も知らない本屋に足を踏み入れてはいかがでしょうか。

火星の庭

宮城県仙台市青葉区本町1-14-30-1F

11:00 - 19:00 火・水曜休