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そして本棚は往来へと続く 雑司が谷「古書往来座」

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何かに会えるような予感

JR池袋東口から明治通りを雑司が谷方面に10分ほど歩みを進めると、街に馴染む、えんじ色の看板が目に入ります。野球ボールが突き刺さったガラス戸が、「古書往来座」の入り口です。

店内は古本屋のイメージを覆すようにキレイに整頓され、奥から国内外の文学、小説から演劇、写真集、映画、戯曲、ポスター、雑貨と広く深くの品揃えで何度訪れても新たな発見があります。それでいて常に「いらっしゃいませ」と、どこか懐かしんで受け入れてくれる雰囲気をまずは味わって欲しいと思います。

今回お話をお伺いしたのは、優しそうな印象の瀬戸店主と、エプロン姿でテキパキとレジ対応をこなす、のむみちさん。
お二人は、かつて東京芸術劇場の建物内にあった「古本大學」で長年経験を積み、ともに往来座を立ち上げた旧知の仲でもいらっしゃいます。

少し変わった店名の由来について尋ねると、瀬戸店長はまず劇場にあったから劇団みたいな「座」をつけたんだとはにかんで、「往来」は恩師の言葉に感銘を受けたんだと話してくださいました。

誰にでも教室は開かれている、という意味合いで大学の教授はこうおっしゃったそうです。「クラスは廊下の続き。廊下は校庭の続き。校庭は往来の続き」と。
その精神を受け継ぎたかった瀬戸店長は「本棚は本屋の続き、本屋は往来の続き」とコンセプト掲げ、オープン当初はホームページのトップに文言を入れていたのだとか。

横で懐かしそうに頷くのむみちさんを見て、以前から感じていた店内に漂う居心地の良い雰囲気は、常連さんたちとの長い年月で築かれたものなのだと感じました。

縁がつながる「名画座かんぺ」と「名画座手帳2017」

ここ最近は、都内の名画座ファンが欲しがるフリーペーパー「名画座かんぺ」の発行人・のむみちさんが働くお店としても広く知られています。

「名画座かんぺ」とは毎月、名画座各所の上映スケジュールを手書きで紙面にまとめたポケットサイズの便利アイテム。ファミリーカレンダーに着想を得て2012年に発行してからは、店内の映画本陳列も意識するようになったと言います。

そもそものむみちさん自身も、旧作邦画ファンになったきっかけが「お店の常連さんから成瀬巳喜男監督作品を勧められたから」と経緯があると伺いました。

古本と映画と人と、それぞれが良い影響を与えあう店内。終始明るいトーンのお話を続けていると、往来を行き交って、またふらりと立ち寄って名画座の原作本(絶版本でも!)を探しに訪れたくなります。

そして、レジ近くの特集棚には、「かんぺ」のスケジュールをより楽しく書き込みできる「名画座手帳」(2017年1月始まり)が一押しされていました。これからの名画座ファンにとっても必携のアイテム間違いなしですね。

本が見栄を切る

そんな刺激を受け合いながら、時代とともにお店が大きく変わったのは、本の量。以前は床まで使った圧縮陳列から半分の量まで減ったと瀬戸店長はいいます。

「お客さんも僕も変わりましたね。以前より、人間は凝らさなくなったと思います。手、目、気持ちを凝らさない」。

先日も常連さんが5年前に変えた内装にようやく気がついたと、冗談交じりに続け、壁一面の棚を指しながら、「歌舞伎でいう見栄を切る場所って、ありますね。店をやっていると、グダグダってなる時がどうしてもあるんです。でも、ここで売るぞっていう触り方をすると不思議とその場所がぴって張るんです」。
何気なく見ているとわからないものですね。みなさまも訪れたときは本が見栄を切ってるか、要チェックです。

さらには、「ホンドラ」(本のゴンドラ)という瀬戸店長渾身の手作り本棚もじっくり拝見しました。お店同様、進化し続け、現在第9シリーズまで制作しています。
瀬戸店長の意気込みを眺めながら、のむみちさんも「(ホンドラは話し出すと)1時間はかかるから」と楽しそうに笑っていました。

人とのつながりを大切にする雑司が谷「古書往来座」、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

古書往来座

東京都豊島区南池袋3-8-1-1F / 03-5951-3939

12:00頃〜22時 月曜は18時まで 年末年始以外原則無休
(臨時変更、臨時休業あり。詳細はブログにて)

ウェブサイト

kosho.ne.jp/~ouraiza

ブログ「往来座地下」

ouraiza.exblog.jp

「名画座手帳」(トマソン社特設ページ)

tomasonsha.com/meigaza