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コメント

司馬遼太郎の作品は印象的な書き出しが多いと思いますが、一番好きなのは「坂の上の雲」です。
「まことに小さな国が開化期を迎えようとしている」
明治維新後のちっぽけな日本が近代的国家として歩み始めた時代を、この短い文章は簡潔に表現しています。

吉村昭さんが描く「ニコライ遭難」は、この時代、明治24年に起きた大津事件に戦慄する日本人の姿です。大津事件は車夫がロシアの皇太子ニコライに軽傷を負わせた事件。圧倒的な軍事力をもって極東進出を目論むロシアに対して日本は「七五三のお祝いに軍服を着た幼児」。事件をきっかけに天皇を始め日本中が震撼します。当時の刑法では犯人津田三蔵は懲役刑。しかし、武力報復を恐れる政府有力者は処刑を主張。対して、司法関係者は公正に津田を裁こうと政府に挑みます。この小説の最大の読みどころは、近代的法治国家の将来を見つめた司法対政府の手に汗握るギリギリの戦いです。この事件により、日本の三権分立の意識は高まったといいます。

それと、この小説の魅力は前半のニコライへの歓待の風景。長崎、京都、大津と日本の威信を賭けて歓待する官民の姿が詳細に活き活きと描かれます。特に、ロシア帝国最後の皇帝となるニコライが入墨を自らに彫らせたり、番傘に興味を示したりと人間らしい愛嬌を持っていたことは意外でした。

他にも、津田の死の真相、ニコライを助けたことにより多額の賞金を得た2人の車夫の運命、西郷隆盛生存説など読みどころはたくさんありますが、この小説の最大の魅力は、大津事件の歴史的重大性と開化期の日本人の特性が理解できることです。
久しぶりの★★★★★。是非、是非、お読みください。

読者

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吉村昭の本

海の祭礼

海の祭礼

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hikumahika

森山栄之助の出世物語とラナルド・マクドナルドの人生を描いた歴史記録文学。英米などの開国要求により英語通詞の必要性が高まったが、マクドナルドの日本上陸と蘭語通詞森山が邂逅する奇跡がペリーやハリスらとの交渉に大きく貢献する。

8日前

海馬

海馬

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渡辺洋介

神田村経由専門書版元

副題に動物小説集とあるように人と動物が関わることで起きる物語の短編集だが、対象はあくまで人間だ。マタギのような宗教性こそ帯びていないがストイックな姿の老猟師が魅力的な「銃を置く」、長年愛用していた銃を警察に引き渡すとき「長い間おれの身を守ってくれてありがとう、と、胸の中でつぶやいた」p.203 この場面が特にイイ。この短編は「熊嵐」からの時間軸でのつながりもある。 ただ、映画「うなぎ」の原作にもなった「闇にひらめく」、(「仮釈放」も一部原作になっていると思う)を筆頭に女性観がふた昔まえというかそんなに男性に都合のいい話があるかな?と感じるのも事実。ただ小説が書かれたのは今から30年~40年前なので当時の視点はそうだったのだろう。

3か月前

史実を歩く

史実を歩く

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土川

よろしくお願いします。

丁寧な取材と資料の調査に感心しました。

1年前

プリズンの満月

プリズンの満月

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kuwa

小学生を相手に、日々働いています…

実在した森田石蔵という元刑務官の話や、彼が作ったという年表をもとにして書かれた小説。完全にフィクション。 ドラマのような感動や、物語の起伏はない。むしろ時間軸場所軸が前触れなく変わるから、吉村昭に慣れない人には読みづらい印象。 それでもやはり、あとがきにも書かれていたけど「共苦」の感情を作品の基底においてあるところが、日本人たる自分の心を揺さぶる。 戦争責任なんて、個人はおろか、国単位で考えてももしかしたら存在しないんじゃないかと思った。

1年前