「南海ホークスがあったころ」からの再読。「だから、そこは、日本中でたった一ヵ所だけ、野球場のなかに家が建っている場所なんだって。」p.328
本書は「家」を保有することそしてそれに伴う「借金」が大きな悲劇を生むのだが
次作「理由」でも「家」にまつわる物語の構造は同じだ。
戦後日本は「持ち家政策」及び「家」を保有するためのシステム「住宅ローン」を推し進め成長していった。「家」の為もしくは「住宅ローン」の為に働く、国民奴隷化計画といっても過言ではないこのシステムは実にうまく各産業を回していた。そのために起こる悲劇は見ない事なかったことにしてもだ。
政府が各々のライフスタイルに合わせた家賃の安い良質な公営住宅を供給する方向に舵を取っていれば、「家」の為に死ぬまで働くなんてこともなくなるしブラックな会社に我慢して居続けることもないとは考えはするけど、そうさせない為の「持ち家政策」でもあるんだろうな。やはり国民奴隷化計画だ。2020年都内新築マンションの平均価格は7,000万円を突破した。
話を戻すと、凶悪な犯罪者であるのは間違いない新城喬子を逃げ切ってほしい、そしてどこかで幸せになってほしいと願ってしまうのは誰もが彼女になってしまう可能性をもっているからこその共感なのではないだろうか。
弁護士のモデルは宇都宮健児さん。