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綾部蓮という青年は、私たちにとって遠い国の王様のような存在だった。神の贈り物と呼ぶべき肉体と才能に恵まれ、水泳の世界では栄冠を手中に収め、それでいていつも... 続き

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容姿端麗で水泳の天才、神の贈り物と呼ばれた若者、綾部蓮。
彼は誰にも何も告げず、一人湖中に沈み亡くなった。
彼に焦がれていた者も、反発していた者も、目標としていた者も、みんな置いてきぼりで、けれどそれぞれに綾部蓮のいない世界で居場所を見つけ生き続ける。
そんな綾部蓮に遺された人々の物語を集めた短編集。

読了後、大勢の人に慕われ囲まれながら、本当に彼の哀しみを理解し得た者はなく、亡くなる前から地上には彼の居場所はなかったのだと思い知らされる。
金子みすずが「大漁」でいわしの弔いを描き、アンデルセンが「人魚姫」で人魚や魔女のドラマを描いたように、海や湖に張る水の膜の下には地上とは別の世界が広がっているような気がする。
きっと綾部蓮はそこで初めて淋しさを癒すことができるのかもしれないと思う。

読者

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