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液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男…失われた妻の愛をとりもどすために"他人の顔"をプラスチック製の仮... 続き

コメント

マスクをしていないと、奇異な目を向けられる昨今において。

主人公はもはや妄想観念的な執着心でもって仮面を作り出そうとする。

しかし、この執着心やら孤独感とはどこに源泉があるのだろう。

顔、なのだろうか。

P.74『怪物の顔が、孤独を呼び、その孤独が、怪物の心えおつくり出す。』

こだわりの強さ、情緒交流の乏しさ。
そこに、恐るべきボディイメージの歪みと疎外感が加わる。

P.80『流行と呼ばれる、大量生産された今日の符牒だ。そいつはいったい、制服の否定なのか、それも、新しい制服の一種にすぎないのか』

これは昨今でもまったく同じ現象を容易に思い浮かべられる。量産型女子大生とか男子大生とか、就活スーツ、或いはカジュアルオフィス、クールビズ等々。

そこに根底に流れる疎外感と自尊心の欠如がさらに妄想分裂的心的態勢へ退行させる。

P.82『ぼくに必要なのは、蛭の障害を取り除き、他人との通路を回復することなのに、能面の方はむしろ生にむすびつくすべてを拒否しようとして、やっきになっているようでさえある』

このジレンマはマスクをすることで、他者と交流を試みて、しかしマスクという符牒がなければ交流できないという現在の我々のもどかしさとも重なるようだ。

次第に、人格が徐々に交代する。
しかし、これはマスクへ投影された自己像であって、そもそも欲求の投影をはじめから試みていた事もわかる。

それは妻への攻撃であり、この主人公の性的欲求と攻撃性が未分化な未熟な人格構造の投影でもある。

この物語が読みにくいのは当然でもある。

妄想性障害。

奇妙な数式と論理。訂正不能な認知がこの病理を想起させる。

もっと詳しく生育歴を調べたいものだが、二重の父性など元来から葛藤深い人格構造のようでもある。

そして、彼の知能は抽象的思考優位のようでいてその実具体的思考の域を出られていない事も妄想的思考たらしめている。

数学のような体裁であるが、しかし実際は算数の域を出ていない、というべきだろうか。

いずれにしても、読みにくく了解不可能な物語である。

解説(大江健三郎)のアンバランスさ、とはまさに。

自我、わたしは誰だという問い。

終始不気味な空気が流れ続けているのは、顔を失ったことで世間から遮断されてしまった主人公の居心地の悪さの追体験か。
しかし都会で生活していると、他人は自分にとって単なる鏡に成り下がりがちだと思う。

言いたいことは大体、解説で大江健三郎が言及してくれていた。

映画版の武満徹による劇伴が素晴らしい。

周囲の目線、行動でどれだけ人間の内部が揺さぶられるか。

妻の置き手紙
「仮面は、仮面であることを、相手に分からせてこそ、かぶった意味も出てくるのではないでしょうか。」
妻がどんな状況でもブレずに、主人公への気遣い、微笑みを絶やさなかった信念がみえる。

読者

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10か月前

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昔のことはよく覚えていません。

読み終えて、深いため息が勝手に出た。 閉塞感にやられてしまいそうに何度もなった。

1年前

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飢餓同盟

飢餓同盟

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渡辺洋介

神田村経由専門書版元

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約2年前

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