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小学生のときに初めて読んでから、何度も何度も読み返している本。今までもこれからも私にとって大切な本。

11才の男の子が立ち向かう現代の現実を、生きにくいであろうと中年の男からも容易に想像できる重い現実を、いかに乗り越えるか?がこの物語の主題です。そして、タイトルが、その答えです。

答えなんですが、そのありきたりな答えにいかに説得力を持たせ、言葉に出来ない想いを読者に与えるか。また、その答えを実行させうる力として、ただの答えじゃなく、解決への手がかかりとするか。この難問に宮部みゆきがファンタジーで挑みます。

ファンタジーで現代の子供の問題を解く事には大人として日々を暮らしている皆さんにはちょっと、あるいは子供の問題なんて…、という疑問は浮かぶとは思いますが、私は一読の価値あり!とオススメ致します。ちゃんと大人の都合の問題だから大丈夫です、ある意味哲学的問いであると言えます。そして日本のファンタジー侮りがたし!

結構長い物語で、途中少し私には長く感じましたが(宝玉は5つでなく、3つでも良かったとも思うが、この小説の主たる対象年齢を考えると仕方ないとも思えます)、素晴らしいと言って良い出来です。ハリーポッター(私は映画の最初の作品しか観てないし、本も読んでないけど、断言できる)なんかより、ずっと深みがあり、完成度として高いです。主人公が特別に選ばれた存在ではない事という1点だけでも、ハリーポッターよりまし。

!!ネタバレあります!!

私にはお父さんの立場も解る、もう若くなく、この時期を逸すると後悔する、だからこそ周りの人に迷惑がかかっても自身の想いを貫きたい。解る。お母さんも解る。それでも家族を続けたい、子供もいる。解る。だからこそ、悲しい現実を試行錯誤しながらも受け入れなければならない。受け入れがたい理不尽な事であっても、相手がいる以上、起こりうる出来事で、その困難な出来事をどう解決するかが、受け入れるための試行錯誤なのであって自身の考えなり意見なりを少しも妥協させない、相手をねじ伏せる為の試行錯誤ではないと思う。亘(ワタル、現実世界では漢字表記、幻界ではカタカナ表記とします)とお父さんとの公園のベンチでの最後の話し合いの場面は良かった。このお父さんはズルイが正直であり、またそれを認めている。だからこそ最後に亘は仕方が無く、ある意味赦す事が出来る様になる予感を持つ事が出来るのだと思う。そして、その後にでてくる通りすがりのオジサン、オバサンの全く相手の事を考えていないなぐさめ方に(これはもう親切でもない、その事も解らないオトナがたくさんいる事を出す宮部さんの観察眼は鋭い)ただあきれるし、出てくる場面が最高に良いです。

最終に至る前に、いわゆる友情や正義、あるいは仲間の死等のいわゆる乗り越えなければならない試練を簡単に乗り越えさせず、1度ならず2度、3度、と立ち止まって考えさせる、その結果それぞれの立場における見方、正義対悪でなく、正義対正義の争い事の解決は無いという事を理解させる手法は、この年齢の特に男の子には必要な事だと思う。実際私達(あえて 達 をつけたい)が子供だった頃にも感じていた事だったが、その頃はまだお子様向け小説にも、マンガにも、テレビ(これが1番解りやすいけど、ウルトラマンと怪獣では必ず最終的にはウルトラマン正義が怪獣悪に勝ちます)にも、正義対正義の構図はそれほど現れてなかったと思う。必ず正義対悪の構図からは逃れられなかった。

その正義対正義の構図をローティーンの子供に向けて教える事が私には(子育ての経験は無いし、今後も恐らく無いのだが)重要だと思う。確実に世界は複雑になっているのだ。

しかし、だからこそ、ありきたりの正義、勝利、という気持ちの良さだけで立場を選ばせるのでなく、試行錯誤があっていいと思う。失敗さえも包み込めるものが子供には必要なのだと思う。

仲間との信頼、ハイランダーとしての自身の誓いを守る事、〝幻界〟の見ず知らずの人々に危害を加えたくない事、仲間との別れ(サヨナラでなく元気でね!を選べる事)等等、いわゆる少年少女ものの必須要素を簡単に手放さない事の重要性も良かった。割り切る事がオトナへの歩みでもあるが、割り切り過ぎる事を要求する事の頻度が高くなり、だんだん慣れる事で思考停止が起こってくると思うので、『青さ』はこの主要対象年齢ではあって良い。またそれが後々に意味を持ってくる事が出来る。最初から効率よくする事だけではその『青さ』の意味が違ってきてその重要性がもう伝わらない年齢になってしまっている可能性が高くなってしまう。

ワタルとミツルとのそれぞれのブレイブストーリーであったはずなので、ワタルの側から見たミツルは自身の分身に負けてしまうのだが、ミツルの側からみたブレイブストーリーでは、最後に共に(ミツルだけが勝つのでない)ミツルとワタルの勝利であったと個人的には思っている、それぞれのブレイブストーリーであるはずの、〝現世〟では両者が交わらない結末なのであるのだから。

最後に私のこの物語に対する不満は『神』の扱いです。

神様という自身を超越している者を持ってくる事で解決できる問題は非常に大きく、また使い勝手が良い。この物語の受けてを考えるならばファンタジーで正解なのだと思うし、実際成功しているのだけれど、この物語を書いた宮部さんならば、もうひとつ、この神の問題をまた解決する物語を書かなければいけない時が来ると思う。

この〝幻界〟を治める女神はワタルの想像力を元にした神であるのだから。そしてその事に気づいた時に人はオトナになってゆく努力を日々繰り返す事に(オトナはある線を越えた人でなく、その状態を維持する事を続けられる努力を払える人だと私は思う)めげずに進める準備が整ったのだと私は理解しています。

神様から自身を引き受ける事ができるように。

2007年 2月

読者

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