文芸

八月の光

八月の光 ウィリアム・フォークナー

逃走を続けるクリスマスに訪れる夜明けの夜と朝でもない空白の時間の一瞬をとらえたこの場面に救いを見た。「今まさに夜が明けようとする。鳥たちが一羽また一羽と眼醒めてのどかに囀りはじめる灰色の寂しい静止の時間。吸い込む空気は泉の水のようだ。彼は深くゆっくりと呼吸し、ひと息ごとに自分が曖昧な灰色の中に溶け込み、怒りや絶望とは全く無縁な静かな寂寥とひとつになっていくように感じる。『俺が欲しかったのはこれだけだ』と彼は静かで穏やかな驚きとともに思う。『三〇年間、欲しかったのはこれだけなんだ。三〇年かけてこれだけなら、そんなに贅沢とは言えないだろう』」p.476

一秒の言葉

一秒の言葉 小泉吉宏

何年も前に読んでみたいとメモしておいた本。たまたま読む機会に出会った。完読して気が付いた。以前読んだ「ブッタとシッタカブッタ」と同じ著者ということに。縁なんだなー、きっと。

東京23話

東京23話 山内マリコ

東京の23区、街自らがその土地で起きた出来事を語るという体のショートショート。 東京に関する豆知識がたくさんあって、楽しいっちゃ楽しいけれど、それだけにもっと一つ一つの区を掘り下げて長く書いてほしかったな、と思った。 もっとたくさんのことが知りたかったし、物語的展開が欲しいところ。。。

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鼻

鼻 ニコライ・ゴーゴリ

奇妙な事を真面目にまるで当たり前かのように淡々と語る所が好き。 鼻に意思を持たせるなんて誰も想像しなかっただろうな。

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火花

火花 又吉直樹

又吉直樹の言葉の使い方が好きだ。

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惑いの森 ~50ストーリーズ~

惑いの森 ~50ストーリーズ~ 中村文則

初めて本にマーカーを引きたくなった。手元で大切にしたい本に出会うことは幸福だ。ただ暇を潰すだけの読書とは違う、ストンと自分の中に落ち着くそんな言葉に出会えた。この本に出会えただけで、私は幸せです。そう言える一冊だった。

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ハックルベリー・フィンの冒けん

ハックルベリー・フィンの冒けん マーク・トウェイン

もう文句なしの名作で大昔に読んだことがあるけども好きな翻訳者の新訳ということで手にとってみた。なんとなく「トム・ソーヤー」がテレビアニメでやってたこともあってか子供向けの作品、という先入観があって読んでなかったのだけどヘミングウェイだったと思うがそういう自分が気に入ってる作家が褒めてたので試しに読んでみたらあまりの内容にひっくり返りそうになった記憶がある。その意味では「トム・ソーヤー」よりも本作のほうがより過激だという記憶があっての再読。まずやはり柴田さんの訳が素晴らしい。俺は英語ができないからあれだけどあとがきによると元々の原作は頭はいいけどまともな教育を受けていないハックルベリー・フィンが書いた、という体を取っているので文法や綴がめちゃくちゃで、喋り言葉そのままの感じなのか、でもリズムは良い、というものらしい。これを翻訳でどうにか再現しようとした結果がタイトルの「冒けん」にも現れている。ざっと見た感じ、ひらがなだらけでこれは読みにくいかも...と思ったけどもいざ読んでみるとするするいけてしまう、こういうところが名翻訳者たる所以なんだろうなと改めて感心した。昔読んだのはたぶん端正な翻訳になっていたと思うのだけどこちらのほうがなんというか文章に躍動感とリアリティがあって楽しく読めたと思う。ストーリーには今更触れる必要はないと思うけども大河を筏で進む様子や自然描写が改めて素晴らしいと思ったのと、貧乏白人、ペテン師やリンチなど今日にも通じる問題提起が実にうまく為されているなという印象。凄まじく悲しいシーンや思わず声を出して笑ってしまいそうな場面など何度読んでも素晴らしい作品。しかし時代背景から差別用語や差別的な内容がてんこ盛りで~もちろん作者は問題提起としてそうしているわけだけども~現代のアメリカ人、特に白人が読んでどう思うのだろうか、とも思った。

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ゼロ時間へ

ゼロ時間へ アガサ・クリスティー

ゼロ時間とは殺人事件が起きる時の事。事件が起きる前から始まり、解決までのストーリー。事件前の話に張られた伏線がきれいに回収されて気持ちいい。長さもちょうどよくて、小説を一気に読んだのは久しぶりだった。

風神の手

風神の手 道尾秀介

一粒の砂の話が全てだろう。 優しい人達のミステリー、10年以上掛けてとけてくる謎。謎を想像しながら読んでいる自分の上を行く登場人物に驚かされた。 最初の風はどこから吹いてくるのか?私に触れる風は、どうして私の元に届いたのか?この風に触れるためにここにいる私は、人生の綾をたぐらなくてはいけない。普段は考えない。 「歩実」は、その綾の先端を偶然見つけた。すべては、風と共に。

6月19日の花嫁

6月19日の花嫁 乃南アサ

乃南アサさんの小説には、人間のどうしようもない部分が隠すことなく書かれています。 主人公は記憶喪失となり思い出を失いますが、過去ほどあやふやなものはないと改めて気づかされました。 記憶はないけれども、肌で誰かの温かいぬくもりを感じ、どこかに自分について話したい人がいる。記憶を失い、思い出を忘れ去ったとしても、自身を形成している断片は、現在の自分自身で証明されるということなのかなと思います。 何より、大切な人が信じて待ってくれている、それだけで女性は強くなれる気がします。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷 恩田陸

現代小説の中で、一番惹かれた作品。一瞬躊躇うくらい分厚いのに、気付いたらぐんぐん読んでた。 日本って楽器をやる人が少ないけど、他人の心を動かして、魂を揺さぶるような音を作り出すってやっぱ難しいんだなと。騙されたと思って読んで欲しい。かつて音楽に関わっていた人もぜひ。

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