文芸

キャプテンマークと銭湯と

キャプテンマークと銭湯と 佐藤 いつ子/佐藤 真紀子

スポーツもの普段全然読まない…と思いながら読み始めたけどすごく良かった。 うまくいかない悔しさ、不甲斐なさ、他人への伝わらなさ、いろいろなものを抱えながら進んでいくんだけど自分にとって大切な場所が明確なことが大事なんだなと思わされる。

響野怪談

響野怪談 織守きょうや

春希の周りでは怪奇現象が日常茶飯事だけれど、恐怖より兄達とのほのぼのとした関係の方に気持ちが持っていかれる。 この家族は、不思議な怪しいものを感じとる一家だ。 冬理兄は、ほんと不思議だし。。。 次々と語られる怪談話にのめり込み、ズブズブとあやかしの世界に踏み入れたのではないかと、不安になる。 その不安が恐怖に直結することを、つい忘れて、油断してしまう。これでは、春希と一緒じゃん。怖い怖い。 次回作待ってます。

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キンモクセイ

キンモクセイ 今野敏

警察小説は実働隊がメインになることが多いが、今回は官僚達が大活躍だ。事件の内容も難しい。守っているモノも大きい。しかし、根っこは変わらない人間とその生き様が問われることになる。日本の国は私が思っているより数倍危ういのではないかと、不安になった。官僚隼瀬には出世してもらって、日本が間違わないように目を光らせてほしいものだ。

ミナトホテルの裏庭には

ミナトホテルの裏庭には 寺地はるな

咲くのは花だけではないし、大切なものはちゃんと手の中にある ミナトホテル、そこはわけありのお客だけを泊める変わったホテル そのホテルの裏庭で前オーナーの一周忌をすることになったのだが、肝心の裏庭の鍵が行方不明 主人公、芯は裏庭の鍵探しを祖父に頼まれたのだが、ミナトホテルのフロントのバイト、行方不明の猫探しまで引き受けることに⁉︎ 心温まる物語です

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ひと

ひと 小野寺史宜

題名から重苦しい物を想像していたが、人は悪い人ばかりでないと思えるハートフルなものだった。 突然世の中に放り出された柏木の実情は、厳しく苦しいものだったが、何かを恨むということは無かったのだ。 辛い中、淡々と緩やかに誠実に生きることは、大切だと思った。

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拳銃使いの娘

拳銃使いの娘 ジョーダン・ハーパー

どの賞がどうとかは言わないけど日本と違って欧米の文学賞にはハズレがない。それはたぶん出版社お手盛りじゃないからだと思うんだが、というわけでこの肩書きを見かけると必ず手に取るアメリカ探偵作家クラブ賞で最優秀新人賞を取った作品。作者は元々テレビの人それもかなりの売れっ子らしくこの作品もそれだからかスピーディーな展開が見事。主人公はどちらかというと物静かなスクールカーストでは下位の地味な女の子。ある日、刑務所から出てきた父親が学校に迎えに来たことからその生活が一変する。刑務所で白人ギャングの首領から妻子共に死刑宣告が出されたことを知り、しかも元妻が既に殺されていたことから娘を守りに来た父親。結局、父親と二人で逃避行をするうちに…という話。語り手をスピーディーに切り換えながら進むストーリーがスリルに富んでいる上に主人公の変化の描写も素晴らしい。作者はレオンや子連れ狼のような子供が出てくるサスペンスが書きたかったそうでそれは素晴らしく成功している。面白かった。

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新装版 祇園女御 上

新装版 祇園女御 上 瀬戸内寂聴

上巻はまだ祇園女御その人を描いているわけではない。その前の世代の妃たちの話であり、その周囲の人々の話。 後の白河帝になる東宮の妃になった道子は、東宮より11歳も年上。美しく聡明でしかし表に感情を出さないお人形さんのような道子。幼少期から意図せず男を惑わしてきた道子は、東宮にも寵愛されるが、東宮の寵愛が賢子に移ってからは翻弄される側に回る。 道子のそばに仕えた侍女あかねは、物語序盤で女主人を裏切って屋敷を追われてからは転落生活かと思いきや、転落し運命に翻弄されながらも自らの力で泳いでいく強かさを見せる。 対照的な女性たちの物語は、あかねと因縁深い少女たまきに主人公移す気配を見せつつ下巻に続く。

この嘘がばれないうちに

この嘘がばれないうちに 川口俊和

シリーズ二作目。複雑な(笑)条件をクリアして初めて、望んだ時間にタイムスリップできる喫茶店のお話。 一度だけ大切な人に再会出来るなら、あなたは何を伝えますか? 制約が厳しすぎるので、似たような話になりがちなのだけど、今回は「嘘」をテーマに様々な別離の姿を描いていく。 大切な人の死。でもその人は決してあなたの不幸で、あり続ける事を望んでいない。残されたものが幸福になってこそ、初めて死者も救われる。 全編を通じて解き明かされていく数ちゃんの秘密が切ない。間接的にしか数ちゃんの話を書かないのはもどかしいけど上手いなと思った。今回も手堅いウェルメイドな出来栄えでした。

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オリーブ―Girls & Boys

オリーブ―Girls & Boys 吉川トリコ

恋の病、という表現がありますよね。 本人の意思に関わらず突然陥り、治すすべもなく、熱が冷めるまでは苦しむしか無い。そんな所が確かに病気っぽいようです。 そんな病に冒された4人の男女が、取り繕った分別をなくして四苦八苦する。その様を俯瞰してにやにやしながら読めるのが、この作品です。 恋は病なので、相手だって選びません。理性では分かっていても、やめられない止まらない。 はたから見れば愚かにすら見える事も、本人達には真面目な事。恋って変。

思わず考えちゃう

思わず考えちゃう ヨシタケ・シンスケ

『りんごかもしれない』 の絵本作家、ヨシタケさんのイラストエッセイ。 ニンマリ笑いあり、ほっこりあり、悩みの深みありと、 「めっちゃヨシタケさんやんんん」ってなる一冊でした。 こういう瞬間を表現して、人に伝えられる人でいたいなあと思いました。

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超短編を含む短編集 枝付き干し葡萄とワイングラス

超短編を含む短編集 枝付き干し葡萄とワイングラス 椰月美智子

主に家庭や夫婦生活に焦点を当てた短編集。 産婦人科の待合室で、何かの縮図のような人間模様を見たり。 若い夫婦二人が夜のドライブで取り留めもない話をしたり。 何年もぶつかり合い、ついには互いの事を「平面」のようにしか感じなくなった夫婦が離婚届を出しに行ったり。 ちっぽけな私達の日々の出来事、ささやかな揺らぎを丁寧に描写した一冊。

とめどなく囁く

とめどなく囁く 桐野夏生

父親より年上の資産家と再婚した塩崎早樹はかつて海釣りに出かけたまま失踪した夫がいた過去があった。 ある日元義母よりその夫を目撃したとの情報が入る。 死亡認定も出し、新たな人生を歩み始めた早樹であったが、区切りをつけたはずの過去が迫ってくる。そして新たな事実が次々と判明し失踪の謎に肉薄していく。 知っているようで実は全く知らない夫婦という赤の他人の恐ろしさ、地獄の淵から甦る「人間失格」的な独白に底なしの救いのなさと哀しみを感じた。 舞台となる逗子の母衣山はおそらく披露山をモデルにしたのであろう。

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鯖

鯖 赤松利市

62歳無職、住所不定の作者のデビュー作、しかもこの装丁にこのタイトル、ということでかなりの期待と共に手に立ってみた。 本当にそんなものがあるのかは知らないが紀州には固定した港を持たず全国を渡り歩く一本釣り漁師の一団がいてその末裔というか成れの果ての一団が主人公。海の雑賀衆と言われた漁師弾も今ではトラウマや異常性を抱えた5人だけとなり日本海の無人島の小屋に雑魚寝、その日暮らしでなんとか生きている。彼らの作るヘシコの存在に目をつけたIT長者とそのビジネスパートナーの中国人女性が彼らへの投資とアジア市場への展開を申し出たことから生活が一変し…という話。正直なところ作者の背景とタイトルなどから中上健次のような重厚な作品と思い込んでいたので生臭く現代的な展開は意外だった。どちらかというと桐野夏生的な作風かな。嫌いとかダメとかではなく勝手な期待と違っていたので個人的にはダメだったけどよく出来た作品だとは思います。

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新装版 祇園女御 下

新装版 祇園女御 下 瀬戸内寂聴

あかね、たまき、ゆり、ちどり。 縁のある四人の女性たちは、それぞれ違った選択をし、それぞれの幸福を抱いている。 物語が終わったとき、ああこの小説で描かれていたのは女性たちの生き様だけではなかった、と知らされる。 大きな川をたゆたうような物語だった。

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