中央公論社の本

夢を走る

夢を走る 日野啓三

薦められて読む。 とても読みやすくて面白く、不思議な静けさがある。知れて良かった作家。日常の切れ目はそこかしこにある。異世界へ通じる穴だったり、妖しく咲く鉱物の庭だったり、ネコのみる夢だったり。一見、これといった関係のない七つの短編は、どこか深いところで共鳴している。『夢を走る』の中で夢みる(夢みられた)茶色い小動物は言う、「夢は現実、現実は夢」。幻想的な物語と言うより、世界を透徹した目で見た姿を、精緻に描写した散文といった方がいいかもしれない。衒学めいたところや冗長さが全くないので、すっと話に入り込める。

雨森芳洲―元禄享保の国際人

雨森芳洲―元禄享保の国際人 上垣外憲一

対馬藩にいた、江戸時代の国際人。国の尊い卑しいは立派な人が多いか少ないか、国民の道徳の水準で決まる、また今栄えているからといって、いつ没落するかわからない。納得です。

真昼のプリニウス

真昼のプリニウス 池澤夏樹

生きる、という感覚と他者 生の実感を持てないものは 持つものに憧れる それを愛だ恋だと錯覚する 物語ることへの疑問 消費社会への根本的な嫌悪感と 人間の生のように熱い火山たち そして恋人 欠けていたピースが徐々に揃う 結末は書いてないけれど。

雪片曲線論

雪片曲線論 中沢新一

P39 太極拳がシミュレートしようとするタオの動きにも、メヴラーナ・ルーミーの霊感を受けて旋回しつづけるスーフィたちの舞いの動きにも、私たちは生成にせまろうとする流体的思考の現われを見つけることができる。

ライダーズ・ハイ

ライダーズ・ハイ 山川健一

夏の陽ざしや、いきなり影の中に入った時の感覚や、雨の匂いや、湖におちる青い月の光や海の香り、夕焼けに染まった空や、なによりもタイヤが路面をたぐりよせる感覚や傾いて見える世界がおれを再び温かく迎えてくれた。

バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉

バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉 村上春樹

昔から好きな作家だし訳者だし、ほぼ全部読んでるはずだし再読するか、と思って手にとってみたらこれが未読の〜正確にいうと短編5編のうちいくつかが読んだ記憶のないもの〜作品集でなんか得した気分。短編と訳者である春樹さんのエッセイ、それに作者の「再発見」に貢献した文芸評論家の序文が収められている。「不躾なくらいに気前よく才能を撒き散らす作家」と訳者が言うとおり今読んでも古さを感じない作品ばかり。特にタイトル作は何度読んでも味わい深く素晴らしい。