亜紀書房の本

女たちのアンダーグラウンド

女たちのアンダーグラウンド 山崎洋子

横浜は港町という特性から古くから様々なルーツを持つ人々を受け入れてきた。いや受け入れてはいないそこには差別を含む哀しい歴史もあった。その状況でも一歩一歩進んでいくこの町を本書は書いている。 黄金町ガード下に存在していた違法風俗「ちょんの間」は2000年代前半に行われた浄化作戦によって壊滅してその跡地をアートの街として再生を図っているが2019年現在、全く静かすぎる活気のない一帯となってしまった。行政がお膳立てしその意向に沿うものだけを認める官製アートの限界が如実に表れている。批評なき芸術は果たして芸術と言えるのか。もちろんプロパガンダ作品にも優れたものがあるとはいえそんなことを問いかけてくるハマの黄金町ガード下を今日もぶらりと通過。 補足すると地元の人もアートが最適解とは考えておらず 過渡期的状況とは捉えているよう。

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詩集 燃える水滴

詩集 燃える水滴 若松英輔

若松英輔の三冊めの詩集。 読むたびにコトバが心の中に染み込んでくる。 そして考えるのではなく感じることに集中できる 詩集。

SPQR ローマ帝国史II――皇帝の時代

SPQR ローマ帝国史II――皇帝の時代 メアリー・ビアード

イギリスではかなり有名な古典学者が書いたローマ史ということで英国圏ではかなり売れたらしい。上下二巻で共和国編の方が人気があるらしく図書館の順番が回ってこないので下巻の帝国編を読んでみた。初代皇帝のアウグストゥスから帝国内の全ての自由民に市民権を与えたカラカラまで、が作者の思うローマ帝国でそれから後は実質的には異なる国、ということらしい。我が国では塩野七生さんの長大な労作があって、それも自分は楽しく読んだのだが、これはローマ帝国の長い歴史を俯瞰で見たうえでコンパクトにまとめられており、どちらかというと庶民の苦しい暮らしであるとか格差問題とか暗い側面によりスポットライトが当てられている印象。それだから面白くなかったかと問われるとこれが凄く楽しい作品であった。平易な表現とどこかユーモアのある語り口で飽きずに楽しく読めた。共和制編も凄く楽しみ。

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ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと

ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと 奥野克巳

・反省しない(今を生きているから) ・時間の観念が薄い(でも腕時計は大好き。ファッションとして笑) ・所有欲を捨て等しく分け与える(だから人のものは自分のもの。勝手に使う笑) ・アナキズム以前のアナキズム(森に生きて森に学ぶから、学校はいらない。国家政府への反発というわけではない!) などなど ボルネオ島プナンの人々を知ることで、固定観念を手放して頭をリセットしよう!

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生き物を殺して食べる

生き物を殺して食べる ルイーズ・グレイ

筆者は環境ジャーナリストで普段はほぼヴェジタリアンなのだが肉食について、自らの手で殺し処理したものだけを食べる生活を実験的に行ってみようと決意し実行した記録。釣りや狩猟を行い、屠畜場をも訪れて生き物がいかに殺され食肉になるかをも目の当たりにする。そこから得られた結論として、現代の大量生産的な食肉や漁業のあり方に疑問を呈し、より人道的な畜産や漁業へのシフトを提案し、肉や魚を減らした食事への転換を提案する、という内容。特に食肉生産の具体的なやり方やハラルの問題などは非常に興味深かった。現代では動物は電気やガスで気絶させられてから絶命させられるのだけど、ハラルについては祈りが耳に届かないという理由で今でも生きたまま殺すべき、という一派がいたり、西欧では知らない間にハラルを食べさせられている、といったムスリム以外からのクレームもあったりするのだそうだ。全体として非常に興味深いし勉強にもなるし、ご説ごもっとも、という感じではあるのだけど、一方でどうしても金持ちの道楽だろ、という思いや上から目線を感じてしまって感情移入が難しい、という感じもした。意識高い農場でのびのび暮らす豚を世話する女性にいつもいいもの食べられていいね、と言って、自分はこの農場の製品は手が出ないのでスーパマーケットのベーコンしか食べられない、と返されるシーンが描かれているのでそれなりに筆者自身も認識はしているようなのだけどそこは消化不良のまま終わってしまったな、という感じ。

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おれと戦争と音楽と

おれと戦争と音楽と ミッキー・カーチス

この本は、戦後の日本の、大衆音楽史でもある。 戦争も、音楽も、人を熱狂させる。 熱狂が死に繋がることもある。 しかし、音楽には傷ついた心を癒やし、再生する力がある。 戦争にそれはない。 著者を、ただロックな爺さん、と見ていてはいけない。 それにしても、左とん平の名曲、「とん平のヘイ・ユー・ブルース」が、著者のプロデュースだと知って驚いた。

人喰い

人喰い カール・ホフマン/古屋 美登里

カニバリズムの話とかほんとに嫌なんだけどなぜか手が出てしまう…ということで手に取った本作。アメリカの大富豪ロックフェラーの御曹司がパプアニューギニアで行方不明になった、という有名な話に魅せられた筆者が一体何があったのか、を追求した作品。タイトルもそうだけど冒頭の数章でエンジン故障した舟で漂流していることに耐えられなくなった御曹司が助けを求めて陸地まで泳ぎ着いたもののそこで原住民たちに殺され食べられてしまった、という作者の説が示される。本作では当時オランダの植民地であったことから宣教師や植民地の役人たちの残した文書の当たるとともに現地に赴き現地人たちと生活を共にしながら、何故、彼らが白人を殺して食べるに至ったか、ということを追求していく内容。少々記述がくどいところがあるものの説得力はじゅうぶん。植民地行政が上手くいってると思わせたいオランダの意向もあって公式には溺死とされている事件だけどもこれ以外には考えられないという説が提示されている。迫力もあってかなり読み応えのある作品。面白かった。

落語―哲学

落語―哲学 中村昇

中野翠は「落語は幻の町に連れて行ってくれる芸」と表現したという。その幻の町に対峙するとき、哲学は「ピントをあわせる」学びなのでは、と思わせてくれる。自分も4、5歳の頃、右掌をぐーぱーさせて「なぜ思い通りに動かせるのだろうか」と不思議に思ったくちで、誰にも聞くことがなかったろうし、いつしか考えなくなっていた。 落語で語られる登場人物の見せる生き様は生も死も笑いとともに連れてくる。無性に落語に触れたくなった(来週、講談とともに聞きに行く予定)。

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種まく人

種まく人 若松英輔

かなしみ、悲しみ、哀しみ、愛しみ、 そして、美(かな)しみに昇華する。 志村ふくみ、石牟礼道子、半崎美子にも。

SPQR ローマ帝国史I――共和政の時代

SPQR ローマ帝国史I――共和政の時代 メアリー・ビアード

イギリスの歴史学者がまとめたローマの歴史。上下二冊の邦訳になっていて共和制と帝政の二分冊になっている。図書館で予約して読んだのだけど圧倒的にこの共和制のほうが人気があって帝政はすぐ読めたのだけどこちらはほぼ二ヶ月待ちにてようやく。共和制を代表する政治家キケロを中心として時代を追っていくわけではない形式で何の変哲もない都市王国として成立したローマという小国が50年と少しで地中海世界を支配するに至ったのか、についての考察を述べている。学者の作品ではあるがエッセイと呼ぶにふさわしく割と主観的な意見が述べられていて明らかにローマは好戦的な国家だった、という意見が垣間見えるしカエサルを始めとして共和制を終わらせた人物には否定的であることが分かる。それ自体は意見として自由だけどもいかにも歴史書、のように世に出すのはちょっと違うのではないかな、とも思った。個人的にはローマの躍進の原動力は他者に寛容な多様性にあると思っていてキリスト教国となり排他的になったときから弱体化が始まった、と思っているのだけども。

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コンクリンさん、 大江戸を食べつくす

コンクリンさん、 大江戸を食べつくす デヴィッド・コンクリン

日本文化にはまったガイジンさんのお話。ちょいちょいこの手のは出てくるけども本作に興味を持ったのは作者が個人的に馴染み深い人形町在住ということ。読んでみてびっくりしたのは作者が最初に暮らしたのが我が郷里の奈良県で、そのあと住んだのが人形町ということで、自分の生活圏とけっこうかぶってるところかな。知ってる街やお店が出てきて楽しかった。

ニューヨークで考え中

ニューヨークで考え中 近藤聡乃

本屋で、一冊丸ごと立ち読み可能になってたので読んでみたら気に入って買ってしまった。 個人的漫画ランキングでも上位に入る作品。こういうことがあるからあそこのあゆみBOOKSが大好きだった。 2015.10

いかもの喰い―犬・土・人の食と信仰

いかもの喰い―犬・土・人の食と信仰 山田仁史

これはタイトルに惹かれて。「いかもの」とは「ゲテモノ」に近い感じで人が普通食べないものを食べてしまう文化や背景についてを気鋭の学者さんがまとめたもの。大きく、犬食い、土食い、人食いについて信仰や文化といった背景を掘り下げたもの。近接した地域なのに犬を食うところと食わないところがあるとか、それは何故かとかそういう話。犬食い、人食いはあるの知ってたけど土食い、が広く世界中で行われているとは知らなかった。五反田に土のコースを出すレストランがあるということで作者も行ってるが果たしてどうなんだろう。大きく三つのテーマのうち人食いについてだけは先達の研究をまとめた感じで作者自身の掘り下げが浅い感じだったかな。食にまつわる話って面白いなと改めて思った。

性表現規制の文化史

性表現規制の文化史 白田秀彰

えっちなことはいけません。 えっちなことを奨励する人より、「禁止せよ」って人の方がなんだか、道徳的に優れている気がするもんな。 けれど、どうしてダメなんだろう。 どうして昔からこんなことが議論され続けているんだろう。 人と性的な表現の関わりは複雑で、時代の流れが反映されている。この議論に終わりはないだろう。けれども、まぁ、なんだかんだみんな好きなんだ。 ちなみに表紙では「規制」の言葉で見えない乳首が、カバーの折り返しではしっかりと描かれている。そんなシャレた作りもいいね!

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間取りと妄想

間取りと妄想 大竹昭子

一つの間取りに一つのお話。話の最初のページには、それぞれ間取り図が描かれている。 本に間取り図なんて、推理小説ぐらいしかお目にかかったことはない。しかし、この本では探偵が主人公ではなく間取りが主人公なのだ。よって、付録も間取りが冊子になっている。 これは、よくよく間取りを頭に入れてから読み始めろという事なのだろうと思い、いつもなら、文章を読みながら頭の中で構築する作業を、図面を見ながら自分が玄関からお邪魔する、というシュミレーションをする。そして、自分がそこに住むというシュミレーションまでしてしまう。だから時々「ここは、住みにくいなぁ」とか「暗いんじゃないの?」なんて、賃貸する気になってる、自分に笑ってから、その部屋にまつわる別のストーリーを読み始める。 私も案外マドリストだった。笑

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