作品社の本

生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から

生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から アミーナ・カーン

ひっつき虫(オナモミ?でしたっけ?)をヒントに生まれたマジックテープとか、カモメの羽の形状を真似て作られた扇風機の羽根とか、自然界から学んだ技術やデザイン、そういうのを生物模倣というらしい。バイオミミクリーとかバイオインスピレーションとも言うのだけど、経済的にも環境的にも期待がもてる分野で、いま飛躍的に研究者が増えてもいるそうだ。 もちろんその分野は一括りにできるものではなく、イカの発色からシロアリの蟻塚、光合成を行う葉っぱなど広大で多岐にわたる。そうしたバイオミミクリーの世界の現在をルポしたのが本書。 生物は環境といわばうまくやっている。そうしたうまくいってるワザを模倣することはたしかに効率的でもあるだろうけど、そうしたいわば「夢の技術」と現実は異なることも明確にしているのがやはりきちんとしたサイエンスライターらしい目配りの良さ。 バイオミミクリーの難しさは実際そこにある。何をどこまで真似るのか、全く同じようにか、ちょっとひねってか? しかし生物の環境適応の解決法の要点はミクロなレベルにあるのか、マクロなレベルにあるのかもわからないし、そもそも生物はうまくやってるわけではなくて、なんとかやっているだけなのだった。それを模倣するだけではもちろん足りない。 そんな基礎的なこともきちんと分からせてくれるのはありがたい本。

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台湾セクシュアル・マイノリティ文学[2]中・短篇集――紀大偉作品集『膜』

台湾セクシュアル・マイノリティ文学[2]中・短篇集――紀大偉作品集『膜』 紀大偉

表題作の『膜』はサイエンスフィクション作品として十分スリリングで面白いですが、加えてジェンダー、人間の身体、記憶や感覚に対して既成の概念を揺さぶり、この作品をより個性的なものにしています。タイトルにセクシュアル・マイノリティ文学と掲げられているものの、性別の境界だけでなく身体や人間の記憶の境界までをも曖昧にして「生」ってなんだろ、というところまで考えさせられる佳作です。性別って二項対立ではなくもっと入り組んでいて、その他の要素と相対化される可能性もあるのだっていう立場をとると「セクシュアル」マイノリティという言葉の響き方が変わるのかもしれないなあと思った次第。こういう相対化にはSFという舞台装置は有効なフォーマットであることにも改めて気づきました。ただ、細やかな筆致を再現している翻訳も読みやいのでSFが得意でない人にもおすすめです。

愛情省

愛情省 見沢知廉

新右翼の鈴木 邦男さんの本の中に出てきた方で初めて読む方です。 3つの短編で出来た本です。ザラリとした読後感はちょっとくせになる方も多いのではないでしょうか? ある男が革命を目指し逮捕された事で体験する凄まじい獄中と、心神喪失にされた事で無罪ながらも治療というさらなる異常な拘束を受ける男の、革命を起こさなければならないという信念と精神病や拘置所の一種独特な知識を織り交ぜ語られる表題作「愛情省」、看護士である50過ぎの女を通して描かれるここ日本の現状を様々な底辺に置かれた人々から俯瞰させてみせ、さらにさまざま陰謀説と革命と右翼と左翼について語る「ニッポン」、そして獄中で書かれたという『天皇』という言葉と意味とその存在に関する不思議な、私は考えてもみなかった視点に立たせてくれる「天皇ごっこ」の短編版です。 そしてその作品のどれからも、とても複雑でヒリヒリした憔悴感と、どうしようもなくつき動かされる様な焦り、鋭い意味を求める飢餓感や、不思議な透明度を持ちつつでも熱も持つ自身の思想感がにじみ出ていて、読みやすいのに癖になる作家さんです。 思想的な立ち位置などよく分からないのですが、作品としてたしかに面白いです、特に「ニッポン」はかなりの衝撃度が私にはありました。三島に深く傾倒していると思われます。あるいは叶いそうで叶わないことに対するロマンティシズムなのかも知れませんが。 不思議なちょっと他に無い感覚の、しかし読みにくいわけでもなく、文体さえ目新しいものでもないのに、普通の小説とは明らかに違う文章による思想や精神病に関する知識をちりばめながら語られる切羽詰った感じの小説です。三島作品が好きな方に、鈴木 邦男作品が好きな方に、または知らない知識を吸収する喜びを求めている方に、オススメ致します。 2008年 7月

性的不能の文化史

性的不能の文化史 アンガス・マクラレン

タイトルから面白半分で手にとったのだけどこれはかなり真面目な著作。現在ですら頭の悪い政治家なんかが元気な男はレイプくらいはしないと、みたいなこと言うのにマチズモの支配する圧倒的に長いこの世界の歴史において性的な部分で男が男らしくない状態をいかにバレないようにしようとしていたか、がテーマ。涙ぐましくもありユーモラスでもあり(笑) 凄く面白かったから再読したいけど分厚いうえに外で読みにくいのが難点。

黄泉の河にて

黄泉の河にて ピーター・マシーセン

元CIA、ナチュラリスト、冒険家、僧侶という面白い経歴の持ち主、ピーター・マシーセン短編集。 全体的に読後の後味が悪い話が多かった。 『流れ人』、『アギラの狼』、『馬捨の緯度』、『薄墨色の夜明け』が好き。

夜はやさし

夜はやさし F・スコット・フィッツジェラルド

「グレート・ギャッツビー」と並ぶフィッツジェラルドの長篇作。若い資産家で、ヨーロッパ各地を転々とする精神科医とその妻の暮らし、華やかながら暗い予感の差した男女の運命が書かれる。リヴィエラ、パリ、チューリッヒなどの街を移り住む、富裕階層ながらあてどないアメリカ人の遍歴の物語。

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1989 世界を変えた年

1989 世界を変えた年 マイケル・マイヤー

面白い…! ベルリンの壁がどうして崩れたかなんて、考えたことも無かった。 分断された国、共産主義民主主義、冷戦…ドイツだけに留まらず、ハンガリーやポーランドでもこんなに改革がなされていたなんて恥ずかしながら知りませんでした。 自分がいま住んでいる世界はずっと昔から継続されているわけではないのね。 読了には時間がかかりそうだけど読み進めたいな

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羊の十字架

羊の十字架 黒須紀一郎

戦後の東京を舞台にしつつも、日本人のルーツはどこかを探す物語。 秦氏はどこから来たのか?景教との関わりは?飛礫の起源はユダヤ教? 等、ユーラシア大陸~日本への文化や人類の移動について、主人公のルーツを辿りながら魅せてくれる作品。

外の世界

外の世界 ホルヘ・フランコ

誘拐された大富豪と誘拐犯、若き日の大富豪が巡り会う妻との恋、そして見えないものを感じながら自由奔放に生きる大富豪の娘、その娘に恋い焦がれるのちの誘拐犯と思しき男の子。 巧みに錯綜しながら進む物語は、コロンビアという、暴力が大手を振って歩いていた国、金持ちと貧乏人の間の格差があまりにも激しい国の事件ならではの、ヒリヒリするような焦燥感と疾走感に満ちていて冷や汗をかきながら読んだ。 誘拐犯には身代金を払わないという家族との取り決めなど、実際に起きた大富豪誘拐事件を参考に描いたものだそうだけど、哲学小説にも通じる思弁的な風味の大富豪と誘拐犯の対話、幻想文学を思わせる大富豪の娘イソルダのふるまいなど、味わい方もたくさん詰め込まれた小説。

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月の輪船

月の輪船 長野まゆみ

0111 2019/04/21読了 お話もイラストも装丁も美しい本。 たまに見返して世界観に浸りたいなという感じ。

愛国者の座標軸

愛国者の座標軸 鈴木邦男

初めて読む方なのですが、やはりとある人からオススメされて、読みました。ちょっときな臭いお話しも多いのですが、かなりビックリな(私が知らないだけなのかもしれませんが)内容でした。 多分その人、個個人による立ち位置によって何が右翼や左翼かは違ってくるのでしょうけれど、またひょっとすると定義的にはただの保守的なものとか、国粋的(=辞書によると「その国の国民性または国土の特徴となる長所や美点。」となっていますが...)な立場を右翼と(1970年生まれの私には、なんとなく暴力団的イメージが、論理よりも行動を!というイメージがあります、もちろん私の偏見だと思いますが)言うのだと思いますが、鈴木さんの立場を新右翼というならばちょっと私の考えていた『右翼』的イメージとはだいぶ異なりました。 新右翼の論客「鈴木 邦男」さんによる2003~2007年のブログを基にした時事問題を扱いながらもどんな事を鈴木さんが考えているのか?を語る感じです。また各章の最後に本にまとめる際の鈴木さんのコメントがのってます。鈴木さんの主張はなかなか面白いです、1番面白いと思ったのは、非合法活動を行って何かを動かすのであればもっと効率よく行わないとイケナイ!と主張するところですね、捕まって刑務所に入る事のリスクとのコストパフォーマンスがあまりに悪いのはいかがなものか?というスタンスはとても気に入りました。だからこそ、合法活動においても、もっと合理的でコストパフォーマンスの良い何かを示してくれたらもっと良かったと思います。 テロに頼らない、言論の上で徹底的に戦う事を新右翼と呼ぶのでしょうか?ちょっと不勉強で分からないのですが、そんな感じを受けました。非合法手段を使わないで保守的な物事の見方を指し示す事はとても有意義に私は感じましたが、鈴木さんの立ち位置は保守派の方々からはあまり受けが良くないのではないか?という疑問もありますが、非合法活動を行ってきた鈴木さんがあえて非合法活動を止めて「愛国」を考えるところも好きです。そしてその覚悟として自宅住所や電話番号まで巻末に乗せてますよ、凄い覚悟です。そういう方が、右翼の論客として言葉を発している事は凄い事だと思います、実際に放火にあわれたりしていますし。また、非合法活動をやってきた者が説く効率の悪さという考え方に面白さを私は感じました。やはり言葉で話し合う事で理解を深めなければ何も進まないですから。たとえどんな立場であろうとも相手を説得させ、また自分の非があるなら認められる度量がないとなかなか話し合いに参加する事さえありませんから。文句と批評は違いますしね。 新右翼に興味がある方にオススメ致します、が考え方はかなり柔軟な方なのではないかと。 2008年 6月

男色の日本史――なぜ世界有数の同性愛文化が栄えたのか

男色の日本史――なぜ世界有数の同性愛文化が栄えたのか ゲイリー・P・リュープ

井原西鶴は『好色五人女』で「男色、女色のへだてはなきもの」と語っているそうだが、江戸期の日本がいかに男色、いわゆる衆道に寛容な社会であったのか、また人々がどれほどまでに両性愛に対する嗜好を持っていたのかを膨大な資料と図版で論証したのが本書。 事の起こりは実際に女性が不足していたためではあったようだが、男女比の不均衡がある程度解消されても男色への嗜好は衰えることはなかったらしい。極めて特異な社会だったんだなあ江戸の日本は。 渡辺京二が『逝きし世の面影』で外国人が残した膨大な資料を用いて活写した性的に放縦な江戸時代を、アメリカの日本文化研究者が日本の資料を元に描く。こうした思わぬ関連から、多面的に物事がふと見えてくるのはとても心地よい経験だ。 しかし渡辺が指摘するように、そうした放縦な社会はどこかへ消えてしまった。そして、あれだけ同性愛に寛容だった社会もいまや新宿の二丁目あたりにわずかに残るばかり。その変化の良し悪しは論ずべきでもなかろうが、いわゆる性的逸脱について、カミングアウトなんぞをして理解してくれと声高に主張しなくてはならない社会は、誰にとってもちと窮屈なんじゃなかろうかね。

でぶ大全

でぶ大全 ロミ

病に倒れた征服王ウィリアムの太鼓腹をフランス王が、奴は病でなく出産だ、とからかった。これに激怒したウィリアムはフランスに攻め込んで…といった古今東西のデブにまつわるエピソードを集めた本。ただそれだけ(笑) なかなか面白くはありました。