岩波書店の本

アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか

アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか イワン・クラステフ

(要約) ・近年EUが直面した複数の危機のうち、難民危機だけが本質的な危機である。 ・EUには3つのパラドックスがある。すなわち、中欧のパラドックス、西欧のパラドックス、そしてブリュッセルのパラドックスである。中欧の人々はEUが好きだがリベラルは嫌いだ。西欧ではリベラルでコスモポリタン的な若者が政治的な運動を組織するに至っていない(SNSで集まり、一瞬不満を爆発させて終わってしまう)。ブリュッセルの能力主義エリートは、能力が高いが故に国家への忠誠心を疑われ、人々から信用されない。 ・とにかくsurviveすること、それだけがよりよいEUを実現する唯一の方法だ。改革は直線的には成し遂げられない。 (コメント) 何が言いたいのかよく分からない。取り留めもない。処方箋もない。「本書は、これから起こりそうなことについてただ思いめぐらすこと…が目的」だそうなので著者としてはそれでいいのかもしれない。まあ、ヨーロッパで起きていることについてヨーロッパ人が語った本という意味では貴重かもしれない。

武蔵野をよむ

武蔵野をよむ 赤坂憲雄

渋谷のNHK放送センターが建っているあたりはかつて監獄であった。その裏に住んでいた国木田独歩は散策を愛し、『武蔵野』というテキストを遺した。水車がまわり大根畑の広がる120年前の渋谷村。テキストの裏に周到に隠蔽されている、悲恋の相手に対する愛憎。独歩は自宅での独座とともに、渋谷村の雑木林や小道を歩きながらの思索を愛した。赤坂憲雄の筆は彼方此方へのび、小道の様に錯綜する。まとまった解はないが、断りがあるようにこれは試論であり武蔵野学の始まりの書である。読む者も独歩や赤坂と共に迷い道を楽しむのがよさそうだ。

隠者の夕暮・シュタンツだより

隠者の夕暮・シュタンツだより ペスタロッチー

(岩波文庫 204頁) 教育に思いがある方は是非とも御一読を勧める。また、家庭での子育てや 教育の現場など、子どもと関わりながら読み進める事をお勧めする。行動が伴ってこそ初めて読める本である。 また、 「隠者の夕暮」(7〜41頁) 「シュタンツだより」(45〜102頁) と、本編は比較的短い内容だが、 その後の「訳注」「ペスタロッチー略年譜」「解説」(103〜204頁)を読んでこそ より深く理解できるため、読んで心から良かったと思う。 「希望と期待が目標とならねばならない」 子どもはもともと“自然”に従順である。 大人は、“自然”であること、そして厳然たる親であり主であり師であること に命懸けの努力を惜しんではならない。そのために重要なのが信仰である。何度も何度も読み返したい。子どものための名著。

カラー版 書物史への扉

カラー版 書物史への扉 宮下志朗

『図書』2008〜2014年の表紙とその解説がまとめられた本。歴史的な出版物がずらっと展示された美術展の図録のような内容。お気に入りは作者不明『第五の書』の「酒びん詩篇」。線画の酒びんの中に詩が書き込まれていて可愛いです。15Cにパリで出版された『羊飼いの暦』は、彗星が竜のように描かれていたりして、当時の羊飼いの生活が垣間見えます。19Cのエピナール版画「赤ずきんちゃん」組み立てキットは、小学館の雑誌付録みたいに紙でできたお家が作れるようです。もし手に入れることが出来ても、勿体無くて切り抜けなそう。

雑学者の夢

雑学者の夢 多木浩二

1928年生まれの書き手による読書履歴。敗戦後にフランス語で読んだ『方法序説』。ロラン・バルトからソシュールに遡り、その後ヴァルター・ベンヤミンの言語論に接したときの戸惑い。ベンヤミンの『パサージュ論』における「静止状態の弁証法」と、オーギュスト・ブランキ『天体による永遠』で述べられている永劫回帰としての地獄。フーコーから受けた挑発と、著者自身の問題意識。「一人の個人の内的な読書経験をだれが知りたがるだろうか」と謙遜されてますが、思考の積み重ねの中で方法論が形作られてくる一例として興味深く読めました。

日本永代蔵

日本永代蔵 井原西鶴

井原西鶴好きな私の原点。 短編のくせにポンポン話が飛ぶ、また主語が分かりづらいのでなかなか読みづらいですが(笑)、商人たちのシビアな渡世術に笑ったり、呆れたり、感心したり。 そして、いつの世も、傾城に鼻の下を伸ばすとろくなこたァありませんな。

デザインのデザイン Special Edition

デザインのデザイン Special Edition 原研哉

0071 2018/10/06読了 分厚い…。 教科書で読んだのはどれだったんだろう。 内容はどれも面白かった。 愛・地球博の章は気になるなあ。 実現してほしかった。 基礎デの授業はやっぱり楽しそうだ。

俳句世がたり

俳句世がたり 小沢信男

月刊みすずの連載をまとめたもの。2ページほどのエッセイの最初と最後に俳句を並べてあります。取り上げられるのは芭蕉などの有名人からマイナー・ポエットまで幅広いです。でも選者の好みは一貫してますね。東日本大震災に多く触れられていますが、東京大空襲などの記述も多いです。神田駅ホームから見た焼け野原の描写が印象的です。一番気になったのは富田木歩の句。関東大震災の日の橋の上、炎に三方を塞がれた時に友人の背中を押し別れを告げた若者は、何を感じながら火に包まれていったのでしょう。この人の句集は読まないといけないな。

音・ことば・人間

音・ことば・人間 武満徹

1970年代後半『世界』で連載された、文化人類学者と作曲家の公開往復書簡。音やことばが一応のテーマになってはいるものの、まとまりはなく議論が深まらない。日本が経済的に豊かであった頃の連載であり、書簡が書かれた場所はアフリカであったりパリであったりニューヨークであったり。金あるなあ。豊かな資金を背景に海外に飛びながら、辺境である日本から西欧に赴く人類学者・作曲家というねじれに二人とも悩んでいること、日本の音楽やその他の芸術に対する愛憎の念が入り混じっていることが行間から伝わってくる。これが裏テーマか。