新潮社の本

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私はかなり好きな作家さんの一人でもある舞城さんの短編集です。かなり好きな作家さんなのですが、残念です、舞城さんには私は評価が甘くなる方だと思いますが、それでもこの短編集は少し行き過ぎかと。最近新作もほとんど出版されなくなってしまっていますが、心配です。 舞城作品の中では福井県の西暁(ニシアカツキという地名、実在するか不明)の作品か、東京の調布市の作品かのほとんどどちらかを舞台にした作品ですが、今回は少し長めの表題作「みんな元気。」と、とても短いけれどこの短編集の中では私のベスト「Dead for Good」が調布作品で、いまひとつ掴みどころの無い短い作品「矢を止める五羽の梔鳥」が西暁作品です。 どの作品も舞城作品にふさわしい擬態語に溢れていて特徴あるものの、作品の中で語られるスピードが非常に速く、また速くするために説明を、描写を、省いている感じが否めません。省くことでヒロガリを持たせる事も出来るタイプの文体もありますが、舞城さんのものは私個人は違うと思ってます。ですから、彼の語りたい内容やセリフに今までの作品にはチカラを感じていたものが、非常にムナシク響きやすくなってしまっていると思います。 一見舞城作品の特徴として大きいのが、擬態語や文体なのですが(それ以外にも本当の特色として、物語の長さや、スピード、そしてキメのセリフなり、登場人物の思考のリアルさ、リアルさから醸し出される虚しさ、空虚感【村上春樹作品にも共通する高度資本主義社会に生きる事からくるどうしようもない、逃れられない閉塞感】、そしてその空虚さを認識しながらも、軽く飛び出す事の出来る身軽さを伴った覚悟など)、絶妙のバランスで成り立っていた説得力の様なモノが無くなってしまって感じました。ただ残虐さのリアリティだけでは無い何かが失われてしまって感じました。語りたいスケールはとても大きくて、しかも割合ベタなモノであるのに、ベタからくる恥ずかしさからも逃れる事の出来ていた今までの作品と比較(どうしても期待が大きいと失望も大きく、それゆえ比較せずにはいられない)してどうしてもチグハグで、スケールと物理的なページ数の少なさにも不満を感じます。テーマと長さもあまりにも無配慮ですし、少し現実離れにもチカラの無さを感じてしまう作品になってしまっていると思います。 だからこそ、残念。 それでも、短くはありますが、チカラ強い短編「Dead for Good」は一読の価値有り。 2007年 7月

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江戸時代末期の蘭学者(江戸時代は鎖国制度があったため外国のモノとしては長崎の出島でオランダと中国以外の交易は無かった為に洋学としてはオランダ語しかなく、その勉強をした者を『蘭学者』と呼びます。普通の方は知ってる、学校で習った事実みたいですが私は理系だったし、歴史に30歳ぐらいまで全く知識と興味が無かったモノで。)高野 長英の話しです。 歴史小説は基本的にその場を見た人はいません、事実であろう資料をもとに作者が想い描いたあくまでも小説です。 それにもかかわらず、この吉村さんの描く高野 長英は魅力的人物です。若くして故郷を離れて、親族に不義理を重ねて、またその事を軽く流してみたり、勉学に才能があり、またその事を鼻にかけたり、とワガママで身勝手な側面を持ちながらも、知識を身につけた為に自国の置かれている状況を憂いて、例え牢屋の中にいる身分であってかまわないから洋書を和解(和訳する事を昔は和解《ワゲ》と言うそうです、これも私は最近知った)させてくれと頼んでみたり。矛盾に満ちているようで人間味を感じさせる人物です。その長英の牢屋への入牢から脱獄を経て死までの逃走を追う小説です。 長英の人物としての魅力があり、またその時代における不条理にめげない信念を持った姿が良かったです。そしてそれにもまして、その逃亡する長英を助ける数多くの私意の人達が魅力あふれています。長英を助ける事はすなわち自分の身を危険にさらす事で、その危険は非常に大きく、また、取り返しの付かない事なのに、助ける人達。その人達の葛藤と想いが良かった。 しかし、私がもし全くの知識も興味も歴史に対して持っていなかった頃なら、きっと難しくて読めなかったと思います。 私が歴史に興味を持ったキッカケは三谷幸喜さんです。三谷さんのドラマ「古畑任三郎」が面白かったからいろいろ観る様になって、彼が歴史ギャグマンガ「風雲児たち」を強く勧めているのを何かで読んでから探して読みました、「風雲児たち」。 ハマリマシタ。これを読んでなかったら今までと同じく歴史に全く興味なかったと思います。おかげで今では歴史小説まで少し読む様になりました。 「風雲児たち」を読んでみて、気になった人物がこの高野長英と江川太郎左衛門英龍です。 「長英逃亡」読んで良かったです。「風雲児たち」が面白かった人達にはオススメです。 2006年 12月

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自選短編で、自分自身の作品解説付き!かなりいろいろなタイプの短編が入っています。 個人的に良かったのは好きな短編は、「翼」、「離宮の松」、「雨のなかの噴水」です。逆にこれは?と思ったものは「煙草」でした。 「翼」の相手の心に触れそうで触れられないもどかしさと、最後の悲劇に急に現実的な一言を入れる事によって急に作品全体感覚がかわってしまう所が好きです。また、「雨のなかの噴水」の少年少女のそれぞれの可愛らしさ(たぶんそれぞれの相手にはまだきちんとは伝わらないであろう可愛らしさ)、良かったです。 全体的に当たり前かも知れませんが文章がうまい!広がりと色彩に対する視線の移ろい、その順序等たいへん、美しい という事です。そして叶わないロマンティシズムと叶ってしまうエロティシズムを感じました。 叶わないと分かっているのに願わずにはいられない想い、その感覚の再現がたまりませんし、叶ってしまってはある意味身の破滅にも係わらずその妖しさに惹かれてしまう人の心の動き。 この一冊しか読んでいないのでまだ分かりませんが、気になりますね。しかし私の知識として知っている三島 由紀夫というと割腹自殺なんですけど、なにかイメージが全然繋がりません。どういう事なのでしょうか。もっとマッチョなイメージで敬遠気味だったのですけど。 2006年 6月

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P181 我々は人の言葉に相槌を打ちながら、あるいは考え事をしながら「んー」と声にならない音を出す。これは「イエス」でもない、「ノー」でもない「保留」を意味するものである。 「保留」には「清」や「濁」の区別はない。むしろ、「清」や「濁」を繋ぐ役割をしているように思われる。 「ん」は、平安時代前期に生まれて以来、こうした周縁への広がりとの関わりを受け止める言葉であった。

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「向ふへも左へも右へも、十方八方へ心は動き度きやうに動きながら、卒度も止まらぬ心を不動智と申し候」「すべての悩み事は、そこに心を止めては一層迷いが生じ悩みが深まるばかりで、解決しない」思考し続けるチカラと、物事を多角的に見る柔軟さを鍛えたい。

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スティーブン キング の「アトランティスのこころ」を読みました。今頃なぜ?って感じですが。きっかけは書評家の豊崎さんが良かったって言ってたのをたまたま思い出しただけなんですけどね。それも新潮文庫の棚の前でなかったなら買わなかったかも。 でも、キングっぽくなくて良かったです。例えるならティム オブライエンです。「カチアートを追跡して」よりも「ニュークリア エイジ」のキング版です。オカルト臭はほとんど抜きですから、青春モノに興味ある方で、地方生活経験者の男性にはお勧めします。 私は地方で大学生活と寮生活経験者なので(東京でも寮生活者で、大学にキャンパスがあった方は該当します)かなりはまりました。ある意味9.11後に読むコトにも意味がある気もします。ベトナム戦争ってやはり大きい教訓だったな、と。ただ、その経験が生かせてない感じもしますけど。 ただ、これを映画化するのってどうなんでしょうか?映画の方は見てないんですけど。 2006 5月

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東京都・国分寺市の古書店、まどそら堂にて購入。 少し古い本の、手作りと大量生産の間みたいな風合いが良い。 これからゆっくりと読みます。 どんな話かな。

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まつたけ?

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酒にまつわる数々の失敗譚である「記憶が残っていなくても普通に会話し、行動している」のは、「ブラックアウト」らしい。遺伝子多型によるアルコールの分解速度を意識し、楽しむべし。ただし、体調や精神や神経面による酔いの違いもあるのかも。百害あっても九十九利はある、複雑かな深淵なる酒の世界。ああ。

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結婚前に付き合っていた女性『月子』の自己中心的な性格はおそろしいまで。後書きに「男としては一度はこういう女に魅かれる」とあり、そんなものなのかな。この月子と対局的な性格の『裕子』と最終的に暮らすことになり、よかったと思う。海の描写がとても素敵な小説でした。

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久しぶりに読んだサッカー小説。この手の本は、主人公の人間的成長、選手としての成長、チームの躍進と繋がっていくと思いますが、こちらは人間的成長に重点を置いた作品。こういう本をたくさん読みたいですが、なかなか出会えませんね。

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飛びたい。私は夜空を見上げるたびに強く願う。理由はわからない。いや、わかりたくないのかもしれない。ただ言葉にしてしまった途端、それは陳腐でありきたりな何かに変わってしまいそうな気がする。だから私は沈黙する。いつか、それを本当に理解してもらいたい相手に出会うときまで。 この気持ちを、言葉で汚してしまわないように。 なんか、よく分かんないんだけど、共感した。

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刑事のことを『デカ』っていう理由の考察の下りがすんごく面白い これは読まないと分からない面白さだと思う。 でかした、山下!

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P95 それに私は、哲学とはギリシア哲学につきるのであって、それ以降の哲学は、キリスト教と哲学の一体化という、所詮は無為に終るしかない労力のくり返しではなかったか、と思っています。

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「劇場」読了 2作目とか関係なく、いい作品だった。 面白さと悲しさと醜さと希望が織り混ざっている感覚。 沙希を無視して原付乗り回すシーンは「何で私が持ってる1番汚い部分をこうも巧みに言い当てられるんだろう」と思った。私にとっての太宰治は又吉直樹だと思う。

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キャラクターの設定が秀逸です。

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旧石器捏造事件を取り上げたノンフィクション。事件をストレートに取り上げるのではなく、岩宿遺跡に関わった相澤忠洋はじめ各氏の人生を辿ることで、考古学界自体に特定の人物を神様扱いしてしまう傾向が元々あり、それが捏造事件発生の根本にある、と主張されています。気になったことが一つ。事件の中心人物が抱えているとされている障害について嘘と断じ「怪物」とまでお書きになっていますが、こういう言説は当否関係なく、これまで繰り返されてきた障害者差別そのものです。部落問題については熱心な方の著作だけに残念でした。

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更年期と呼ばれる年頃になってから、いろんなことに不寛容になってきた自分がいて、ちょっと嫌だなと思ってました。でも養老先生の本を読んで、腑に落ちてかなりすっきりしたので、感想を書いておきます。 本の終盤で養老先生は「歳をとるにつれて自他の関係が変わる。若いときは自分が大きく他人が小さいが、自分がだんだん小さくなって最後に無くなる。つまり歳をとると、世界を個人から見るのではなく、社会から見るようになる。 社会的な視点を優先すると、世の中は難しいなあ、としみじみ感じる。あちらを立てれば、こちらが立たない。ぼちぼちで釣り合いをとるしかない」と語る。 ああ、だからだ。いつまでも「自分」にとらわれていると、精神的に疲れるのだ。自分の芯がないと不安、という面もあるかもしれないが、結局、社会生活をしていると割り切れないことばかりに直面して、その都度 折り合いをつけようとすればするほど疲れるのだ。 だとすれば、「私はこうでなければ」と頑固に決めてしまうより、その川の流れや海の波にあわせて自由に泳げるような自分でありたいと思う。ただ翻弄されて漂うのではなく。自力で泳ぐ、のだ。そのためのコンパスや体力を備えるようにしよう。 先生曰く 「人生は自分のためじゃない」 だんだんそう思うほうが楽になるに違いない。自分が小さくなり、大きな社会に懐かれるように世界はできているのだろうから。

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「カエサルと女」「カエサルとお金」の二つの章は塩野七生さんならではの視点で興味深い。

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タイトル通りの作品。地方新聞社を辞めて世界一周の旅に出た作者が世界中で食べた変な肉料理紹介するコラム集。こういうバイタリティが自分には無いから感心するとともに実に楽しく読んだ。美大出身ということもあって挿絵も自分で書いてるのだけどかわいらしくてそれも良かった。 食べてるものはこんな感じ〜インドで牛肉、羊の脳みそサンドイッチ、ラクダ、キリン、ダチョウ、ガゼル、インパラ、アルパカ、リャマ、ヨロイナマズ、バッファロー、アルマジロ、イグアナ、雷鳥、トナカイ、ビーバー、ヤギの脳みそ、カエル、カブトガニ、ワニ〜当たり外れあるみたいだけど…まぁようやるわ、という感じで面白かった。