早川書房の本

パリ警視庁迷宮捜査班

パリ警視庁迷宮捜査班 ソフィー・エナフ/山本 知子

パリ警視庁の37歳の女性警視正、アンナ・カペスタン。 スピード昇進のチャンピオン、同世代の星と言われた彼女は過剰発砲で停職6か月を言い渡され、私生活では離婚の憂き目に合う。 彼女は、パリ一区にあるオンボロのアパルトマンの一室で迷宮入りとなった事件の捜査を行う「特別班」の責任者として復職することになったのだが、そこに配属されたのはいわゆるはみ出し者の警察官ばかりで…。 お堅い警察物かと思いきや、皮肉やユーモアに溢れた会話や次々に起こる予想外のトラブルにただただ楽しくページをめくる。 この特別班に集まった刑事たちの「はみ出し」理由がそれぞれ個性的で、バディを組んだ相手が次々に不慮の事故に遭い誰も組みたがらない別名「死神」とか、人気警察小説を執筆している刑事とか、ハンドルを握る時だけ心が安らぐというスピード狂の刑事とか…。 いいなと思ったのは、カペスタンが彼らの特殊事情や背景を拒絶することなくとにかく受け入れる姿勢(そうせざるを得ないとは言え)。 どんな人間であろうと、心温まる交流はなくとも、とりあえず受け入れてもらえる「居場所」があるというのは大切なんだと改めて感じる。 こんな肝の太い上司の下で生き生きと働く変わり者たちの物語、面白くないわけがないのだ。

宿命の宝冠

宿命の宝冠 宵野ゆめ/天狼プロダクション

レンティア第一王女アウロラの初登場巻。 時期的にはグインが黒竜将軍になったあたり、アルミナの嫁入り前とも書かれているから、正伝の40巻ちょいくらいの頃かな。 沿海州会議の際にアンダヌスとセットでヨオ・イロナが出てきたくらいで、正伝ではまともに描かれたことがなかったレンティア本国が今回の舞台。 外伝作品かつ、新人のデビュー作と考えれば、こういう「空白地帯」のお話の方が書きやすいのかもしれないね。 本作は、宵野ゆめにとってデビュー作。最初の作品ということもあってか、相当にぎごちない。描写がまわりくどく、話が分かりにくいのは難点かな。 逆に考えると正伝132巻の『サイロンの挽歌』はそれほど違和感を覚えなかったので、この間に相当な研鑽をつまれたであろうことは想像に難くない。 最近は、病気療養モードに入ってしまっているけど、復活を待ちたいところ。

アイル・ビー・ゴーン

アイル・ビー・ゴーン エイドリアン・マッキンティ/武藤 陽生

テロが一番激しかった頃の北アイルランドを舞台にした警察小説の第三弾。かなり面白いシリーズと思っていたけども立て続けに邦訳が出るということはけっこう売れたんだな。良いことだ。本作だけども前作でやり過ぎた結果、刑事から制服警官に降格されて一番厳しいアイルランドとの国境警備に回された主人公。しかも物語の早い段階で警察を辞めさせられてしまう。そんな主人公の元にイギリスの諜報機関MI5がやってくる。脱獄したIRAの大物テロリストの捜査に加わるのであれば警察に暫定的に復帰させる、というのだ。大物テロリストとは幼馴染であった主人公はその機会を逃さず警察に復帰し幼馴染の行方を追う。その過程で別の密室殺人をどうしても解決する必要に迫られ…という話。荒々しい舞台設定の物語だし主人公も時にやり過ぎるけども諦めない地道な捜査が特徴、みたいなこのシリーズに上手く本格推理の密室殺人の謎解きが盛り込まれていて感心した。これはかなり完成度が高く面白い作品だった。

夜のアポロン

夜のアポロン 皆川博子

死や退廃、耽美さを感じさせるような、妖しい短編集。 著者の初期の作品も含まれるという事で、戦中の描写やヒッピーなど、時代を映した作品もちらほら。 1930年に生まれ、激動の時代を生きてきた著者だからこそ描ける作品達に魅了された。

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無敗の王者 評伝ロッキー・マルシアノ

無敗の王者 評伝ロッキー・マルシアノ マイク・スタントン/樋口 武志

名前だけはなんとなく知っていたヘビー級チャンピオンの生涯をジャーナリストが綿密に調査しまとめ上げた評伝。1947から1955にかけてプロボクサーとして活動する中で49戦無敗という未だ破られていない偉大な記録を持つボクサーは名前で分かる通りイタリア系移民としてマサチューセッツの工業地帯の産まれ。ボクシングをまともに始めたのは兵役に就いていた24の時、ということに驚かされた。180cm、85Kg前後という現在ならクルーザー級で当時としてもあまり恵まれていない体格、しかも足も遅く到底プロボクサーとして大成しないと誰もが思っていた男は凄まじい破壊力を持った右フックと打たれ強さを持っていた。ボクシングというスポーツは本来は相手のパンチを巧くかわし、適度に有効打を入れれば勝てるはずなのだがそれでは人気が出ず、足を止めての殴り合いが好まれる。いかに巧くても人気が出なければ良い対戦が組まれず上位も狙えない。その意味ではまさにこのスポーツにうってつけの素質を持っていたことが分かる。作者はジャーナリストらしくかなり綿密な調査を行なって偉大なチャンピオンの人生とそれを取り巻く人たちを丹念に描いている。ただの礼賛本ではなく暗い側面のこともあからさまににしており迫力があった。チャンピオンと母親の関係など泣かせる要素もふんだんにあって今のところ本年読んだ中では最高の作品だった。非常に面白かった。

浮世の画家

浮世の画家 カズオ・イシグロ

私の読解力が足りないのか、訳者が違うせいなのか、画家な話なのに絵が見られないからか、日の名残りに比べるともう一つよく小説の世界を楽しめませんでした。

テロル

テロル ヤスミナ・カドラ

主人公はイスラエルに住むアラブ人。イスラムの信仰も薄く、イスラエルの国民であることを選択し外科医として成功してテルアビブの高級住宅街で妻と暮らしている。ある日、自爆テロの被害者の手当てに追われ疲れ果てて帰宅した彼は自爆テロの実行者が自分の妻だと告げられる。全くなんの兆候も感じられなかったことにショックを受け自爆に至る理由を探るのだが…という話。こんなに救いのない話も珍しい。作者は自爆テロに批判的でこういう作品を書いたのだろうけそれが故に生まれ育ったアルジェリアに住めなくなったのだとしたらやはり問題は根深いな、と思った。アラブ特有なのか時折入る美文調は鼻につくものの良い作品でした。

黄金の盾

黄金の盾 円城寺忍

栗本薫の死後に刊行された四作の外伝。その最後の一作。 クム出身の踊り子という程度にしかなかったヴァルーサの設定を大胆に膨らませて、正伝の隙間を綺麗に埋めてみせた。 クムの大闘王ガンダルの物語と絡ませることで、いい感じにヴァルーサのキャラがハマった印象。 ガンダルにグインのキャラクターを被せてくる仕掛けも、最後にシッカリ機能して、上手く書いたなと感心。これ一作しか書いてないのはもったいないないなあ。

三体

三体 劉 慈欣/大森 望

‪一気に読了。しかしなんとまあ、壮大な物語。どうやってこれを畳むのやら。それにつけても史強兄貴の格好良さ!第2部が早く読みたい。‬

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水晶宮の影

水晶宮の影 五代 ゆう/天狼プロダクション

グインサーガ40周年。栗本薫没後10年。続篇15巻目と、節目の一冊。 栗本薫時代から続いていたヤガ編がようやく終了。こんなに引っ張るような話だったかは正直微妙。。 ザザの黄昏の国経由ワープが便利過ぎるような。ほとんどどこでもドア的に使われている感じ。 グインはふたたびクリスタルに潜入。ようやく「あのお方」と対面するのかな?アウロラちゃんは今ひとつ、なんでついてきてるのかよくわからん。 今のクリスタルは素人が来てどうにかなるところじゃないと思うんだけど。

拳銃使いの娘

拳銃使いの娘 ジョーダン・ハーパー

映画「レオン」っぽい、というのが素直な感想。アウトローな男が幼い少女を連れてやむを得ず戦う、というところが近く感じた。 といっても「レオン」のただの模倣とは違い、アメリカとメキシコの麻薬マフィアの抗争など、ハードボイルドな闇社会を描写していてなかなか面白かった。 やっぱり悪徳警官はあかんなぁ。

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