春秋社の本

文化人類学の冒険

文化人類学の冒険 塚田健一

狩人が何の獲物も捕れずに村に帰ってくると、なんの躊躇いもなくほかの狩人から食料をもらってくる。食料を少しでも相手に分けてあげることは彼らの重要なモラルのひとつ。翌日は自分がそうなるかもしれないから。極限に近い状況では、困った時に互いに助け合う習慣がうまれる。だますことも盗むこともわるいに決まっているが、我々が自分たちの道徳律でら想像するほど、彼らに罪悪感は無いはずだ。サバンナの生活感覚からすれば、むしろ富者が貧者に施さない方が悪いという感覚。

ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」

ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」 ステファン・W・ポージェス

心理を理解する上でこの考えは画期的だと思う。心が望むものは【安全】と【社会的なつながり】これは、発達心理学でもよく言われるところであるが、身体論として語られることがなく、科学ではなく、統計と主観によるものだった。 この著者は、それを自律神経主に迷走神経にスポットを当て、内分泌系に働く作用を検証し、情動の変化を科学的に評価した。これは、人と人のコミュニケーションとしての根幹であり、このような事実を小さい頃から学ぶ機会があれば、もっと温かみのある社会が築ける可能性を感じる。

エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える

エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える 三浦俊彦

原作も読んでないし、アニメも見てないけれども、アニメ史上まれに見る実験魂が炸裂して、それが大滑りしたという話は聞いていた。それを大真面目に分析哲学の手法で解読したのがこれ。 やっぱ俺がやらなきゃ始まらんのか?という著者らしい動機から繰り出される犀利な分析はさすが。原作の各巻を踏まえた章タイトルに、もちろんタイトルに見合う分析を加えてはさらなる考察を積み重ねて、最後にはアニメ同様に循環させてしまうという仕掛けもいつも通りの周到さというか遊び心というか、サブカルをまじめに分析し尽くせばきちんと学問になり得るし(そうなの?)、重箱の隅をつつくようなディテールの集積にこそ神が宿るのだなあと半ば呆れつつ半ば感動しつつ。

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最後の親鸞

最後の親鸞 吉本隆明

P56 眼もみえなくなった、何ごともみな忘れてしまった、と親鸞がいうとき、老もうして痴愚になってしまったじぶんの老いぼれた姿を、そのまま知らせたかったにちがいない。だが、読むものは、本願他力の思想を果てまで歩いていった思想の恐ろしさと逆接を、こういう言葉にみてしまうのをどうすることもできない。

「結婚式教会」の誕生

「結婚式教会」の誕生 五十嵐太郎

結婚式専用の大規模な教会についての調査と考察。 そういえばキリスト教徒でもないのになんでチャペルで結婚式するんだっけと脳裏をかすった人に読んでほしい。 話は開国直後に建てられた古い教会(デザインが結婚式教会と同じく割と適当)や日本人の結婚式の歴史と経緯にまで及んでてクッソ面白い。

なぜふつうに食べられないのか: 拒食と過食の文化人類学

なぜふつうに食べられないのか: 拒食と過食の文化人類学 磯野真穂

お友達が推薦してたので読んでみました。タイトルから分かる通り、拒食や過食に陥った六人の女性のインタビューを踏まえて、何故そういう事態に陥ってしまうのか、について医学じゃなくて文化人類学?からのアプローチで迫っていこうというもの。(と理解した。) とにかくインタビュー内容がキツくて、こんなことになってしまう人がいるとは俄かに信じられないくらい。痩せてたほうが確かにいいことが多い世の中どけど拒食とか、過食と嘔吐とかもう読んでるのが辛いくらい。 インタビューの合間の解題の部分についてしっかりと理解できた自信は無いけどもだいたいにおいて「痩せたい」だけでそこまでは陥らなくて親との関係がおかしいとかそういう理由があるように見受けられた。自分がまともというか普通の家庭で育てられたことに感謝するし周囲にもここまで異常な状態の人がいないことが幸せだなと思った…なんか小さい感想だな、我ながら(笑)

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法句経のこころ

法句経のこころ 福島慶道

p24 プロとしての生き方とは何かと言えば、一つの行為、自分が成さねばならないこと、自分は何をなすべきかということを知って、そのなさねばならないことを、迷いなく一途にやっていくということができてはじめて、プロの生き方だということであります。 p197 人を誹るというようなとは、自分を見める眼が厳しければ、まず誹れないと思います。人を誹るのは、自分に対する観察、反省が足りない人だと思います。 p205 禅における「坐禅」の修行は「止まる姿勢」の典型です。実は法句経の「長閑なる所に坐して」という一句は、現代のわれわれに「止まる姿勢」を教えていると受け取りたいのであります。

労働者のための漫画の描き方教室

労働者のための漫画の描き方教室 川崎昌平

冒頭の「怒り、そして許せ」あたりは良かったのだが「原発反対」「原発賛成」のあたりからあれ?と思い始める。「クソな現実」をキャラに言わせたあたりで、地金は結局そのあたりか。バロン吉元先生もネームを切らないとの話を美術館で見てきたが、絵が描きたいの延長線上からの漫画が俺は好きだな。「む!」とかキャラクターに言わせる表現は使いたくないよ。

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リチャード・カールソンの楽天主義セラピー

リチャード・カールソンの楽天主義セラピー リチャード・カールソン

つらく苦しい感情や憂鬱な気分を乗り越える為にはどうすれば良いのか?この本の主張はすごくシンプルです。その事について考えなければ良い❗ あまりにもシンプルであるため受け入れ難い主張ですが、読み終わる頃には考えも変わると思います。 人生は現実であっても、人生の諸問題は思考が作り上げる「幻影」に過ぎない(本文より引用)

生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来

生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来 アンディ・クラーク

人間は生まれながらのサイボーグであり、道具は私たちである、というのが著者の主張。過激な表現であるが、人間は身体という道具に加え、身体外部の存在をも取り込みながら「拡張した心」に従って人間存在を拡張していくという意味でのことであり、一般に想像されるそれとは違う。 とはいえ人間の脳は、他の動物と異なり、極めて可塑性に富んでおり、身体にとどまらず非生物的機器や環境を自らの一部として取り込んでいくことで進化してきたとして、例えば外部記憶装置としてのメモやノートに始まる多数の証拠をあげながら、人間が生得的に「サイボーグ」であり、今後はテクノロジーの進化でさらにそれが進んでいくことを示唆する。 人間とは身体にとどまらず、自らが直接的にコントロールできる諸部分の総和であるというデネットによる人間の定義を数多くの議論から説得的に論じている。 原著は2003年の発行なので、ネット社会の発展やスマホなどの普及については述べられていないが、かえって著者の描くかなり楽天的な未来像と現状のギャップが見えて来るという意味では有用であるかもしれない。