東京創元社の本

奇商クラブ

奇商クラブ G・K・チェスタトン/南條竹則

2019 3月課題本 新訳で出たのと、例会の間隔が短いので選書。 奇妙な商売で生計を立てる人しか入れないクラブという意味です。 そこに絞って書かれておらず、昔のロンドンの幻想小説に近い初期作品六編。 ブラウン神父は出ておりません。 チェスタトン…子供の頃、面白かったけど記憶が怪しく、大人になって読んだら読みにくい…そんな覚えです。新訳でかなり読みやすかったですが、くどい点は変わりません。 第一篇目の、ブラウン少佐の途方もない冒険がクリスティのパーカーパインそっくりで驚き。 クリスティが後作なのですが、商売という点に絞って進むシリーズなのでこちらはブレてないし、やはりクリスティは面白い。 他五篇の感想? 皆さんおっしゃいましたが、感想ありません(笑)

悪しき狼

悪しき狼 ネレ・ノイハウス

邦訳が出ると必ず読むシリーズの一つであるドイツの警察ミステリ。 貴族階級出身の刑事とその相棒の女性警官が主人公という設定だけ見るとスタイリッシュな作風かと思われるのだがナチスや環境問題などのテーマに挑んでおり毎作けっこう重厚な内容になっているところが特徴。 凄まじい虐待を受けた跡のある少女の死体を巡る捜査と、以前はドイツでも有数の刑事弁護士で羽振りの良かった男の落ちぶれた生活、扇情的な報道番組で敵の多い美貌のジャーナリストが暴行された事件、の大雑把に三つの話が並行して進み…やがてそれが収斂して、という形式。主人公達や各々のストーリーの登場人物の人間模様も丹念に描きながら醜く凶悪な事件の真相が暴かれる結末に見事にまとめ上げている。ディーバーばりのどんでん返しも盛り込みつつのそれはかなりの芸当だなと感心しました。素晴らしかった。 作品と関係無いのだが…旦那さんがソーセージ職人で旦那の店の片隅に自主出版で置いていた小説が評判になってデビューした、というこの作家のエピソードがけっこう好きだ。

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夢館

夢館 佐々木丸美

佐々木丸美の「館」シリーズ三部作の掉尾を飾る作品。このシリーズ、三部作すべて読まないと、評価が難しい作品。 本格ミステリ的なテイストは完全に身を潜めて、幻想的な、内面に潜っていくような物語に。 ミステリ作品として読むと、特にこの巻はきついかも。 通してすべて読むと、凝った構成と、ヒロインたちの想いの深さが、ココロに深々と沁みてくる。美しい恋愛小説として、見事に結実している。 別名「孤児」シリーズ外伝、とも言えそう。懐かしい名前がチラホラ出てくる。

魔眼の匣の殺人

魔眼の匣の殺人 今村昌弘

通常ではありえないシチュエーションを設定することで、本格ミステリの可能性を拡張することに成功した、大ヒット作『屍人荘の殺人 』の続編。 W県(和歌山県?)の奥深く、真雁と呼ばれる集落に人知れず建てられた、研究施設「魔眼の匣」をめぐる事件の顛末を描く。 タイトルに「匣」という漢字が使われていると、テンションが(期待値も)上がってしまうのはミステリファンとしては仕方のないところか。 ありえない舞台設定であるが故の、独自ルールをどれだけ納得して読めるかが肝だと思うのだけど、前作程の直接的な脅威は感じられなかっただけに、「そこまでするかな」という疑問はどうしても残る。 あとから出てきた「物語」も後付け感あるけど、それも踏まえた「魔眼」の恐ろしさってことなのかな。

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夜は千の目を持つ

夜は千の目を持つ ウイリアム・アイリッシュ

2018 12月 課題本 前半の物語と後半の警察介入で話が代わり、どう展開していくのか見ものでしたが、最後はなんだ…という印象です。 目に見えないものへの恐怖は今よりももっと大きかったことを考えると、仕方ないのかも。 全般通して私の感想は ロマンチックだなぁ~(笑) だって~タイトルカッコイイよね!

ジェリーフィッシュは凍らない

ジェリーフィッシュは凍らない 市川憂人

市川憂人さん初見です。『そして誰もいなくなった』話なので、淡々とクールな描写が多いのですが、マリアと漣の会話が面白くて、楽しめながら読めました。さらに、ミステリーもしてもちゃんと練られてて良かった!

図書館司書と不死の猫

図書館司書と不死の猫 リン・トラス/玉木 亨

ダークな猫達の争いに巻き込まれて深入りしてしまった、引退した図書館司書の話。 図書館司書は、あまり関係がなかったかな。 「猫には違う世界がある」と信じてしまいそう。 血しぶきが飛ぶ内容とは! いくら喋れても可愛い猫ちゃんの話ではない。 でも、猫ってこんな感じでもおかしくない。

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青炎の剣士

青炎の剣士 乾石智子

パーティ9人(蜥蜴も含めて)の大所帯の冒険でした。三部作完結篇。 絡まっていた糸がホロホロと解けていくようなラストのクライマックスでは、傍観者ではいられませんでした。 ファンタジーにありがちな登場人物達なのに、唯一無二を感じさせてくれる。考えてみれば定番なんだけど、なんなんでしょうか?この迫力は! 人間の奥底を抉るような深いことわりを感じます。

水に描かれた館

水に描かれた館 佐々木丸美

佐々木丸美「館」シリーズの第2作。 「孤児」シリーズで凄い男!として、噂だけ出ていた吹原さんが、なんとこの作品で登場。名探偵枠なのかしらん。 前作はかなり、本格仕立てだったけど、今回はかなら佐々木丸美色が出ていて、人間心理の不思議に寄せた内容になっている。 ガチ仕事第一!キツイ女代表の石垣さんが、館の魔力でみるみるうちに、ステキで愛らしい美女に変貌していくのは、やり過ぎな気がしないでもないけど、かわいいから許す。 少女マンガとかだと、メガネ外して、髪下ろしたらメチャ美女!みたいなタイプだと思う。本作のヒロインは彼女で決まり。 本作だけ読むと、未消化な部分が残るけど、このシリーズは三作すべて読んで評価されるべき作品なので、ラストの「夢館」も是非読んで頂きたいところ。

ローマ帽子の謎

ローマ帽子の謎 エラリー・クイーン

新作劇“ピストル騒動”上演中のローマ劇場の客席で、弁護士のフィールド氏が毒殺された。現場から被害者のシルクハットが消えていたことを手がかりに、ニューヨーク市警きっての腕ききリチャード警視と、推理小説作家エラリーのクイーン父子が難事件に挑む!巨匠クイーンのデビュー作にして、“読者への挑戦状”を掲げた“国名シリーズ”第一弾の傑作長編。

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡 オリヴィエ・ゲーズ

アウシュビッツの医者でガス室送りの選別をし、囚人達を生体実験でいわば拷問して殺したナチスの医者ヨーゼフ・メンゲレ。敗戦と共に親ナチスだったペロンのアルゼンチンに逃亡した彼がブラジルの海岸で心臓発作で亡くなるまで、をあくまで小説として描いた作品。同じ南米に逃げた戦犯でもイスラエルに拉致され処刑されたアイヒマンと違って最後まで逃げおおせた逃亡生活が追う者達の立場も押さえながらリアルに描かれていてさながらノンフィクションのようでもある。道を踏み外した医者の生家が今では消滅してしまったものの世界的な農機具メーカーであり比較的潤沢な資金援助が得られたこと、また追う側の中心であったイスラエルも中東戦争などより優先度が高い事案が生じたことなどもありあと一歩まで迫られながらも逃げおおせた逃亡生活は追手に怯えながらの惨めなものであったと描かれているのだけども果たしてそのようないわば同情的な筆致が必要だったのか、ベートーベンを口ずさみながら人の生き死にを決めていたという純然たる悪に対してはもっと過酷な運命があっても良かったのでは、などなど考えさせられる作品でした。読み物としてはかなり面白かった。