河出書房新社の本

なぜ人を殺してはいけないのか?

なぜ人を殺してはいけないのか? 小泉義之

P27 自分のことだけを考えているはずなのに、なぜ隣人を殺さなければいけないのか。絶対「?」が打たれるはずでしょう。つまり、殺すというときに、ある種の社会性が入っているんですよ。

ヨコハマメリー:かつて白化粧の老娼婦がいた

ヨコハマメリー:かつて白化粧の老娼婦がいた 中村高寛

30代以上の横浜市民であればおそらく記憶に残っているであろう白塗りの老娼婦メリーさん。彼女を題材とした傑作ドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」から10年を経て監督である中村高寛が書籍化。映画からは窺い知ることのできなかった製作中の自問自答悪戦苦闘の日々、公開当時はいまいちその必然性が解らなかったかったもう一人の主役というべきゲイのシャンソン歌手「元次郎」の存在など書籍化によって腑に落ちることも多かった。 メリーさんが姿を消した1995年前後は横浜の町が大きく変容していく時期でもあった。 1989年横浜ベイブリッジ開通 1993年横浜ランドマークタワー開業 1996年クイーンズスクエア開業 2002年赤レンガ倉庫再整備 一連の流れによって良くも悪くもどこか薄暗い横浜から イメージとして明るく洒落た横浜へ移り変わっていった。 最近TVKで再放送が始まった「あぶない刑事」1986年放映 の荒れた港湾部や小汚い町並みが漂泊される前の最後の横浜の姿を映している。

怪物学抄

怪物学抄 山村浩二

山村浩二さんの短編アニメーションが劇場公開されていたので観てきました。「怪物学抄」も映像上映された作品の一つ。書きためていた何でもない言葉に命を与えられ、不思議な生き物たちになった怪物学抄。絵本も素敵ですが映像はもっと素敵です。ぽつりぽつりと語られるように進む映像。アニメーションの画面に文字を入れるというのは、山村さんが意識的に行なっていることだとか。そのあたりも、絵本になった時との共通性みたいな部分が出てくるのかもしれないですね。文字も含めて一つの絵になっている感じも魅力的です。映画館で帰りに購入した一冊でした。

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見たのは誰だ

見たのは誰だ 大下宇陀児

2017年3月10日初版。文章から感じられる昔の時代設定や言葉のチョイス。導入部分はちょっと読みづらいと思ったけど、途中から物語が一気に面白くなり、引き込まれました。改めて奥付けを見ると、1959年7月刊になっている。この時代にこんな面白い作品があったとは!と、驚いています。

子午線の祀り

子午線の祀り 木下順二

知盛も義経も、平氏も源氏も、それぞれがそれぞれを生きていて、もがきながら前に進もうとしているリアルと、今日もまた、その海では潮があの時のように流れているリアルを重ねると、平氏と源氏のこの古い物語はどこに在るのだろうと不思議な気持ちになる…遠いのにすごく細部まで見える景色のような不思議さ。

きょうの日は、さようなら

きょうの日は、さようなら 石田香織

なんてステキに切なくて、シュワっと爽やかな物語! 登場人物はみな、絵に描いたような転落人生を送っているように見えますが、誰も悲観してないし、誰のことも恨んでない。たぶん、ここが大事で、物語のイメージを決定づけている気がします。 生きてさえいれば、いつかまた、運命が交わることがあるのかもしれない。朝焼けのシーンがとても印象的でした。 これがデビュー作とのこと。今後が楽しみです。

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ハイファに戻って/太陽の男たち

ハイファに戻って/太陽の男たち ガッサーン・カナファーニー

ついに文庫化! パレスチナ人の心の叫びを屈指の世界文学へと昇華した不滅の傑作。ニュースでは決して伝わらない過酷な真実を、収録7つの「物語」を通してひとりでも多くの人に知って欲しい。 ‪「人間の犯し得る罪の中で最も大きな罪は、たとえ瞬時といえども、他人の弱さや過ちが彼等の犠牲によって自分の存在の権利を構成し、自分の間違いと自分の罪とを正当化すると考えることなのです。」__「ハイファに戻って」より

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ここから先は何もない

ここから先は何もない 山田正紀

導入部分はとても魅力的な感じでしたが、すぐに漫画的な作品な感じに。軽快でポップとは言えるけど、個人的にはノリについて行けなかったです。作品の雰囲気は好きでした。

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日本のテロ:爆弾の時代 60s-70s

日本のテロ:爆弾の時代 60s-70s 栗原康

正直なところ社会主義や共産主義は必ず全体主義に行き着くため大嫌いなのだが…監修者が著作を読んで感銘を受けた人だったので手に取ってみました。日本の左翼運動の歴史を振り返ってコンパクトにまとめたもの。監修者のスタンスから予想はしていたがやはり左翼系へのシンパシーが滲み出ている内容。日本の革命家列伝などコラムを挟みつつ赤軍や企業爆破など日本にも昔あったテロの時代を網羅している。巻末には時代を知るための文学作品紹介などもあってなかなか興味深い。 本筋とは関係ないけどえてして高学歴の人が左翼にハマるのは計画管理する側に立てるからなんじゃないかと思っていて前衛や大衆の中からの闘争などと言っててもしょせん、とは思った。いろいろ興味深い内容だけど個人的には子供は読んではいけないと思った。危険。

わたしたちはまだ、その場所を知らない

わたしたちはまだ、その場所を知らない 小池昌代

小池昌代さんの詩を一編よんだ後に見た小説 エッセイ的な本や詩の解説などの文章を見ると手書きの直線の様なまっすぐな文と鉛の様に重くズシンとくる言葉を紡いでいる人で、この人は文章を書く人ではなく言葉を書く人なんだとその時感じました。 そんな方が書いた中学校が舞台のこの小説は、文章ではあるけど詩で構成されている文という印象で、身体の外部的な動きは少なく内部的つまり出てくる人々の精神的な部分が色濃く描かれていて場面を想像する時の描写がスローな映像、もしくは写真の様な感覚でした。 描かれている人のまっすぐな気持ちが独特の言葉の表現で表されていて重くのしかかる部分はあるのだけれど身軽な感じで冬景色の様な小説でした。 そう、何故か透明ではなく少し濁った白い雪の様な。

パタゴニア

パタゴニア ブルース・チャトウィン

祝文庫化!で、約20年ぶりに読んだ。すでに「20世紀(後半の)紀行文学の古典」と称されているけど、決してこの記述のスタイルがスタンダードになったわげではなく、むしろ特異点として屹立していることを再認識。でも誰もが一度は読んだほうがいい。池澤夏樹の解説(『世界文学全集』収録時の09年執筆)も興味深いエピソードがいろいろ紹介されていて良い。『ソングライン』や『どうして僕はこんなところに』も読み直したくなった。旅に出て。

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動物になって生きてみた

動物になって生きてみた チャールズ・フォスター

キツネになろうと道端で寝ていたら、警官に起こされて「ちゃんとしてください」と自宅に帰されたそうだ。 ヒトの生活から離れ、街にやってくるキツネとしてゴミ箱を漁り、ヒトの暮らしを観察した著者。それでわかったのは、ヒトは、同じようなものを食べ、同じようなテレビ番組を観て過ごしているが、野生のキツネはまったく違うということ。あらゆるものを食べ、様々な臭いを嗅ぎ、だから個体によって観ているものも様々なのだ。 こういったことは、ヒトが、いろいろな感覚や能力を失った種だということを示唆している。ヒトも動物の一種にすぎないというのに。 目があっても見えず、鼻があっても嗅げず、手があっても感じない。都会に住むヒトはそんな有様だ。 そして、ヒトはキツネや鳥ほどのスピードで動けない。自力で飛びたいのなら、鳥の習慣を身につける必要があるのだ。 己を知れ。ヒトは、地球に住む生物種として、できることをわきまえるべきだ。そのためには、隣に住む他種をよく知る必要があるのだ。

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異形の愛

異形の愛 キャサリン・ダン

移動サーカスを営む風変わりな夫婦と、薬品やら何やらでデザインされいわゆるフリークスとして生まれ、サーカスで見世物となって暮らす子どもたちの、いわばロードノベル。教祖のように託宣を下すアザラシ少年に美しいシャム双生児、アザラシ少年にかしづく小人と、こころ優しい超能力者。そしてガラス瓶のなかの液体に浮いている、生まれなかった異形の兄弟たち。その異形の家族を取り巻く変人奇人たち。タイトルの通り、確かにフツウとは違うけれど、ここに描かれる家族や仲間の愛って、普遍的なものじゃないだろうか。愛しさに憎しみに怒りが渦巻いて一気呵成に破滅に向かって突き進むのは圧巻。むしろ後日譚の歪んだ愛情こそが異形の愛なのかも。 カルト的人気があるそうな。それで再版というか新訂版らしい。合わない人には徹底的に合わないだろうしかなり人を選ぶ本ではある。けど、テリー・ギリアムにハーラン・エリスンの惹句って、そりゃ読むしかないって思っちまうさ。

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