白水社の本

悪魔の布―縞模様の歴史

悪魔の布―縞模様の歴史 ミシェル・パストゥロー

ヨーロッパ世界では古来から、差別と蔑視の象徴であった縞模様。 その迫害のルーツは、旧約聖書レビ記のこの一節、 「二種で織った衣服を身につけてはならない」 に始まっていた。という絶妙の掴みから始める、ストライプを巡る文化論。 この旧約聖書の言葉、必ずしもシマ模様を指しているとは、断じきれない(素材のことかもしれないし)。 でも、迫害のネタにしたい側にとって、聖書に書かれているという事実は圧倒的なアドバンテージだったのであろう。 差別の対象であったシマ模様は、アメリカ独立戦争時に、反イギリスのシンボルとして星条旗が採用されたことで、価値観が揺らぎ始める。 本書では、古代から現代に至るまで。さまざまなシマ模様を巡る事例を紹介して、その意味合いの変遷の歴史を辿っていく。

アウステルリッツ

アウステルリッツ W・G・ゼーバルト

ノーベル賞も確実と言われながら事故で亡くなったドイツ人作家の遺作。 表紙に惹かれたので手にとってみました。 語り手である私が偶然出会ったアウステルリッツという建築史研究者。彼の語りを聴くうちにどんどん悲劇的な歴史が現われてくるという構成。 独特な写真が配置され、小説ともエッセイともつかない独特な作風が面白い。 前半が退屈だったのだがどんどん物語世界に引き込まれてしまった。いい作品でした。

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来福の家

来福の家 温又柔

『台湾生まれ 日本語育ち』の姉妹版のような中編集。2冊合わせて読むのがオススメです。

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ニューヨークの古本屋

ニューヨークの古本屋 常盤新平

図書館でふと目について借りた。有名な本屋の名前が次から次へと出てきて、最初は文章を読むより本屋の名前ばかり追いかけてしまう。洒落た展開で読み物としても面白い。場末のバーのブランデーの味やホテルの朝食のメニューなど1980年代のニューヨークの色や光、そして暗さがしみてくる。

第三帝国

第三帝国 ロベルト・ボラーニョ

第三帝国、かつてのナチス率いるドイツがうごめいた時代のヨーロッパを舞台にしたボードゲームとそのゲームのチャンピオンたる語り部ウド。 彼のバカンスの始まりと共に物語は動き出す。バカンスのためドイツ人である彼が選んだのは、かつて両親と訪れたことのあるスペインの土地、ホテル。 本来、開放的に日々の垢、澱を落とすはずだったその土地で彼は、またゲームのボードを開き目の前に戦争を展開する。 陽光あふれるバカンスの地において生っ白いウドの肌は異質を徴し、そして、ウドの対戦、また対話相手として登場する不穏な男〈火傷〉彼の肌もまた、その引きつりとかさぶたによって異質を際立たせている。 これは一体、何が起こりつつあるのだ?語り部ウドの心情同様にぼうばくとした不安を抱えながらも行き着く場所が予め分かっているかのような確信もまた握りつつ、読み進む。 読み終えて、しばらくこの物語の霧に未だ包まれたかのようでいる。妙な、ただただ妙な…今はまだそうとしか言えない。

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もうひとつのプロ野球

もうひとつのプロ野球 石原豊一

この本に出てくる選手達を現実を愚かな人と思いながら、少し憧れももって見てしまう。 読んでいてやり切れない気持ちになるとこもあるけど、面白かった。

アブサンの文化史: 禁断の酒の二百年

アブサンの文化史: 禁断の酒の二百年 バーナビー・コンラッド三世

酒好きでパスティスの類も好きなので手にとって見ましたがこれはかなりの力作。素晴らしい。 禁酒法じゃないけど特定の酒でお上から禁止になったのはアブサンくらいかなと。 この実に美味いリキュールは作家や芸術家を引きつけてこの作品でも、ボードレール、ランボー、ヴェルレーヌ、ワイルド、マネ、ドガ、ゴーギャン、ピカソ、ロートレックなどなどのアブサンにまつわるエピソードが綴られている。それぞれが楽しくて凄いエピソードばかり。しかも彼らの作品とかが挿絵的に散りばめられて素晴らしい。酒で身を持ち崩した話が多くてダメダメだけどそれもひっくるめて面白過ぎ。2ページくらい挿絵で文章が変に消えてるところがあって、それが今の版で修正されてたら買いたい。読むとアブサン的なものが飲みたくなるので危険だけども…。

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山の上ホテル物語

山の上ホテル物語 常盤新平

オリジナリティの大切さ、粋な計らいの大切さ、このホテルには、実に、清々しい世界がありました。

ヴァギナ・モノローグ

ヴァギナ・モノローグ イヴ・エンスラー

あらゆる職業や人種、年代の女性200人にヴァギナについて尋ねたインタビューをもとにした、一人芝居の書籍化した本。 ちょっと短い感じはしたけれど、とてもおもしろかった。

悲しみを聴く石

悲しみを聴く石 アティーク・ラヒーミー

アフガンからフランスへ亡命した作家アティーク・ラヒーミの作品。 仏ゴングール賞受賞作。 密室で繰り広げられるある夫婦の愛憎劇。 舞台はアフガン。 戦争から植物状態で戻ってきた夫に妻が誰にも打ち明けなかった秘密を語るのだが…。 軽く手に取ってみたものの内容は重く、文体は静かで最後まで緊張感が続く。 ラストは驚愕。 またこの作家の本を読んでみたい。

審判

審判 フランツ・カフカ

現代の不条理や不安を表している、とかよく言われますけれど、どうなんでしょうか?もちろんそういう側面もありますけれど、また、私は誤読を含めて読者が物語を楽しみ、判断する自由があると考えていますので、私見ですが、不条理や不安はもちろんですけれど、不条理ギャグ、みたいな部分が気になりました。私が読んだどの作品(「城」「変身」「審判」)も自身の信じているもの、社会常識や社会通念がある日突然信じられなくなる不安(それも個人対組織という形をとっての)、だからこその自分の立場や自分を信じ難くさせる不条理をあらわしてはいます。 しかし、この訳者の読みやすさもあるのでしょうけれど、そこはかとなくユーモアの香りを感じます。また私個人だけが分かっていないという立場をとらせているのに、ある意味その不条理な状況を素直に(抵抗はすれども、現実的に受け入れがたいことまで、結構そのまま)受け入れてしまうそのさまが、どこか滑稽に思えてきます。 すると、何処まで行っても細かな理由をつけてただ単に拒絶されている、という状況に変わりはなく、繰り返される滑稽さがまた増します。もちろんきっと様々な解釈が可能だと思いますが、後は受けて、読み手の側の問題なのではないか?と私は考えます。 しかし、中でも「審判」と「城」は面白かったです。私の好みとしては「城」に軍配が上がりますが、審判の方が完成されているともいえます。 不条理ギャグがお好きな方に、オススメ致します。 2008年 3月

ポーランドのボクサー

ポーランドのボクサー エドゥアルド・ハルフォン

カバーとタイトルに興味を惹かれ手に取ってみたら南米はグアテマラの作家だとか。南米っぽい作品なのかなと思って読み進めてみたらユダヤ人でしかも主要な登場人物は作者自身のような。タイトル作は作家自身の祖父がいかにしてアウシュビッツを生き延びたかという話。調べてみるとこういう作品をオートフィクションというらしい。私小説とでも言うか作者と作者の周辺の人達がほんとに体験したエピソードからフィクションを作ってしまう手法なんだそうだ。周囲の人達にしたらたまったものではないのでは、と思うのだが…。しかし作品そのものはかなり素晴らしい出来。南米というよりユダヤ臭の強いものが殆どなのだが宗教や民族のことを分かっていなくても楽しく読める。あとがきを読んで知ったのだが元々は3つの短編集に収められていた作品を日本向けに一冊にまとめたものらしい。それにしてはお互いのストーリーに破綻がなく上手くまとまっているのは編集の冴えということもあろうが同じエピソードから物語を様々に作っていく人なんだろうな。ジプシーの血を引くセルビア人ピアニストとの邂逅を廻る物語が一番印象に残った。他の作品も読んでみたい。面白かった。

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