白水社の本

路地裏の子供たち

路地裏の子供たち スチュアート・ダイベック/柴田 元幸

ここ数年読んだ中で特に印象に残り、再読したいと思ったので図書館で借りて読んだ2作品(『シカゴ育ち』『僕はマゼランと旅した』)を改めて購入した作家。彼の初期短編集ということでこれはもう最初から購入しました。古き良きというのかシカゴの裏町で育った子供時代のことを瑞々しく描いた2作品が気に入ったのでその意味ではそのものずばりのタイトルではないか、ということで。結果だけどもかなり荒削りな作品があったりちょっと幻想的に過ぎるのではという作品があったりでなるほど初期の作品はこんな感じだったんだな、という印象。正直なところ個人的には先に挙げた2作品には全体的には及ばないなとは思ったもののいくつかの作品では荒削り故に先の2作品よりもインパクトがある作品があったな、という印象。やはり優れた作家だなと改めて思った。面白かった。

移民の政治経済学

移民の政治経済学 ジョージ・ボージャス

移民を受け入れることは良いことか? その問いに対して様々な理論と実例から迫る。 結論は、時と場合によるというもの。 単純に労働力の追加として捉えることはできない。 低技能労働者の大量流入によって、元いた人も低いほうへ引っ張られるということもある。

台湾生まれ 日本語育ち

台湾生まれ 日本語育ち 温又柔

「母語」と「国語」の複雑な関係性、著者は始めは嫌悪していた台湾語、中国語、日本語が混ざり合う母親の「ママ語」からそのすべての言語が「母語」であると「発見」する、為政者の都合により変化する言語、その中で生きるとはそういう事なのだろう。 「そもそも中国語と台湾語と日本語とひとつづつ数える必要はないのかもしれない。三つの母語がある、というよりもひとつの母語の中に三つの言語が響きあっている、としたほうが自分の言語的現実をぴたりと言い表せるのではないか。考えてみればわたしは、中国語や台湾語を外国語として、というよりは、自分のニホンゴの一部のように感じている。わたしはもう、母たちの声を「和訳」しない。むしろ、記憶に向かって耳を凝らし、日本語として発せられたのではない音をたぐりよせる。」P.244 白水社Uブックスによる増補版。

辺境中国:新疆、チベット、雲南、東北部を行く

辺境中国:新疆、チベット、雲南、東北部を行く デイヴィッド・アイマー

駐在の英国人ジャーナリストが中国の辺境を回り、少数民族の暮らしぶりを書いた旅行記。単身歩いて、人に会って話を聞いていく、旅の感じが際立つ取材で、合間に政治や社会情勢の豊富な考察が入っています。南はインドやミャンマー、北は朝鮮とロシアまで、中国の外側をひと巡りしています。

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ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡

ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡 ジョビー・ウォリック

イスラム国のようなものが何故力を持ったのかに興味があったのとピュリッツァー受賞作であったことから手にとってみた。上下ものだからけっこう大変かなと思ったがさらっと読めてしまう。ヨルダンの刑務所で一人のチンピラがテロリスト「ザルカウィ」になっていく過程と、残虐なだけのテロリストが立ち上げた組織が宗教的なイデオロギーを得てシリアでイスラム国に変異していく流れを追ったもの。ワシントンポストの記者らしくブッシュ政権の失敗とオバマ政権の下でテロリストを追った人々の姿がスリリングに描かれている。ヨルダンの若い王と情報機関を持ち上げ過ぎのきらいはあるものの何故あのような狂信的な集団が力を持ったのか、また力を失って行きつつあるのか、がよく分かる。非常に興味深く読めた。

倒壊する巨塔(上)

倒壊する巨塔(上) ローレンス・ライト/平賀秀明

これも内容が重たいはずなのでなかなか手が出なかったのだが…とある本でこの作品に言及されていて読んでみようかということで。言わずとしれた2001年9月11日のアメリカ同時テロ事件についてニューヨーカーのスタッフライターである著者が五年を費やし膨大なインタビューをもとになぜこの事件が起こったのか、に迫った作品。途中何度か掲載したとはいえライターに5年間も著作に専念させる、という辺りが一流誌の一流誌たる所以なんだろうな…。先入観ではいわゆる9.11の準備段階からテロの詳細、という感じだろうかと思っていたのだが良い意味で裏切られたのはほぼ半分を費やしていわゆる「イスラム原理主義」がどのような背景で生まれ組織化されていったのかということを掘り下げていること。イスラム原理主義の大きな流れからビンラディン、ザワヒリの二人がアルカイダをどのように立ち上げていったのか、についても人間中心の描かれ方をしておりいわゆる狂信者ではなく普通に家庭を持っていて富裕層でもあった二人の姿が描かれている。一方、標的となったアメリカ側はテロ対策捜査官のオニールという個性的な人物を中心にテロといかに戦いなぜ9.11を防げなかったのか、ということがこちらも人間中心に描かれている。あのツインタワーの惨劇は本当に作品の最後に出てくるだけでそこに向かって大きな流れが収斂されていくところが見事。イスラム原理主義とは何か?ということを学ぶのにも役立った。数年前にニューヨークに行った際、グランド・ゼロに行ってみたのだがこれを読んでからだとまた見方が違ったかもしれない。今更ですがピューリッツァー受賞も文句なしの優れた作品でした。

マーラーの思い出新装版

マーラーの思い出新装版 アルマ・マーラー/酒田健一

マーラーの愛妻?恐妻?女神アルマが書いたマーラーの姿がすべて真実かどうかは分からないらしい。でも音楽に向かい合うマーラーの思想や苦悩、どんなにアルマを愛していたか⁈が綴られている。少しずつ読みながらマーラーの音楽を聴いている。

バー「サンボア」の百年

バー「サンボア」の百年 新谷尚人

飲食店、それも洋酒を飲ませるバーで創業百年はほんとに凄まじいことだと思って手に取ってみた。作者は「北新地」「銀座」「浅草」でサンボアを経営する、暖簾分けシステムで現在14店のこのグループの中の第三世代に属する経営者。大筋では第二世代の経営者一族が殆どを経営しているこのグループの歴史は当然ながらどこかにきちんと記録されているわけではなく、口伝に近いいろんなエピソードを丹念に聞き取って神戸の片隅で生まれて戦争も乗り越え今日まで続く酒場の歴史をまとめてある。実は自分はそんなにサンボアには思い入れも無くたいして訪問したこともないが今度一度立ち寄ってみようかと強く思わされた。バーというのは特殊な世界で別に凄い酒瓶を揃えていたり凄い技術で酒を混ぜたりできるところが必ずしも良いわけだはなく、自分にとって居心地が良いか悪いか、が大事だと思っているのだが、その意味では一番重要なことはそこの空気感である、ということを改めて認識させられた気がする。

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死体展覧会

死体展覧会 ハサン・ブラーシム

悲惨、残酷、非情、暴力。これがイラクの現状か。現実に基づいて産まれた暴力性を感じる。これっぽっちの希望もない。悪夢のような小説、そしてそれがイラクの現実。 「自由広場の狂人」がお気に入り。

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